第49話 音が鳴った気がしたんだ
本日で初売りセール最終日が終了した。今日までの売り上げは金貨60枚になる。普段の1.75倍。上々の成果だ。
「みんなお疲れ様!今日は成功を、祝して打ち上げだ!が、明日も営業日だから程々にな」
「疲れました〜」
「飲むぞー!」
「明日も仕事か……」
「アンズ、お客様が喜んでたのだからいいじゃない」
「そうね。今を楽しんで明日も頑張るわ」
「私達も思ったより忙しかったです」
「そうだね。迷子がこんなに出るとは思わなかったよ」
ミッシェル達、警備部も混雑解消の為の誘導やら迷子捜索で忙しかったようだ。迷子センター必要かな?
支度を済ませ、全員が食堂に集まる。
「じゃー揃ったな。初売りセールは大成功だ!今日までお疲れ様!乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
皆んながグラスを掲げたその時!
「オン!」
シルヴァが会場を踏み抜き大地が揺れた!
「シ、シルヴァ?どうした?」
「オン!」
シルヴァが顎でグラスを指す。
「オン!」
「マスター、グラスに毒物が混入されているようです」
「毒⁉︎」
ウチのセキュリティレベルは高いと自負している。外部から入るにはそれぞれの階層のバックヤード設置された転移陣から一階食堂に転移しなくては入れない。
考えたくはないが内部犯………
その時、背後から俺に斬りかかる影があった。
キン!
咄嗟にヒビキがナイフを投げ、影の人物の獲物を弾く。
「なんのつもりっすかジン!」
影の人物は元暗部組のジンだった。そこから席に着いていた元暗部組が動き出す。
「お前らどうした⁉︎」
「なんでこんな事を⁉︎」
「うるさい!俺たちだってこんな事したくないんだ!」
「黙って寝ててくれ!」
「オン!」
シルヴァが再度、床を揺らす。
「ヒュノプス……」
リリスが呟き、周囲が霧がかかると元暗部組は寝てしまった。
睡眠の魔法のようだ。暗部組以外に効いていないのは不思議だが、対象を選べるのだろう。今のうちに暗部組を縛っておく。
「リュアス、アテナ縛ってくれ」
「ん。」
「分かったよ」
とうとう喋らなくなったリュアスは蔦で縛って貰う。相変わらず食事だけはみんなでとる方針なので、一応いる。
暗部組、ウォッカを起こして事情を聞こう。いや、本当にコードネームで潜入してたとかだったら嫌だな。
「う、うん…」
「気づいたかウォッカ?」
「店長…すみません、そして、ありがとうございます」
「何があった?」
「詳しくは言えないんです。すみません。背中見てもらえますか…」
言われた通りにウォッカの背中を見る。背中には赤く輝く魔法陣が刻まれていた。
「……奴隷紋だな」
「輝いてると言うと強制命令がでているな」
ヘレンとリリスが言う。
「すまない。ゴメスのやり方に気が付かなかった」
「いや、俺も考えが足りなかった」
この世界は首輪が奴隷の証だと思い込んでしまっていた。蔑む対象の魔族をなんの縛りもなく行使するはずがなかったのだ……
「強制命令って逆らうとどうなるんだ?」
「まず、全身に痛みが走り、それでも逆らうなら最悪死に至る。首輪より酷い痛みがあるそうだ……」
「ライが辛そうだな…ポーションとってくる」
リリスは売り場へ向かった。
「今は縛ってるから命令を実行出来なくても痛みはあまりないだろうけど……このままじゃ……ご主人様」
アテナが珍しく悲しそうな顔している。
「奴隷商で解放できないのか?」
「主人の承認がないと難しいな」
「主人はゴメスか?」
「そうだと思う」
ブチッ
音が聞こえた気がした………
「シルヴァ、シャドウウルフにゴメスの居場所を探らせてくれ。命令が届いたなら王都にいるはずだ。事の成り行きを観察する為にな」
「ト、トール様……」
「無駄っすよイリムさん。先輩キレてるっす」
あぁ俺はキレてる。
「トール様、殺害してしまうと奴隷紋は強制的に奴隷を殺してしまいます。生かして連れてきて下さい」
「分かった。九割殺しにしておく」
「オン!」
「見つかったかシルヴァ。案内してくれ」
そう言い、俺はバードン作のガントレットをはめる。空間固定が付与され、銃が使えるよう指ぬきになっている。
「先輩!1人で行くっすか⁉︎」
「俺が殴りたいんだ」
今回は俺の失態だ。奴隷紋に気付かず、ロスディアにも注告されていたのにもかかわらず放置した責任がある。
シルヴァに跨り、俺はゴメスの元に向かった。




