第42話 すぐに暴力に訴えるのは良くないと思う
「奴隷商の方がどのようなご用件でしょうか?」
俺は丁寧に聞き返す。
丁寧に聞き返すが、正直奴隷商は好きになれない。イリムの話もある。利益を追うのに笑顔を無視するのは俺の方針と真逆に位置する。
奴隷商自体必要悪の面も知っている。この世界は決して富裕層ばかりがいる訳じゃない。貧困な民は食い扶持を減らす為、または資金を得る為に子供や自分を売る事もあるそうだ。重犯罪者は犯罪奴隷とし扱われ、他の人が嫌がる仕事や鉱山採掘など強制重労働に課せられるそうだ。
っても、好きにはなれない。俺の倫理観もあるのかも知れないが、人材は人財。教えてやれば売るより雇った方が絶対お互いの為だと思うんだよ。人件費の問題もあるから全ての人をって訳にはいかないけど………う〜ん。
それに奴隷商って商品である奴隷を手荒く扱うらしい。大切にし過ぎると奴隷が売られる事を嫌がってお客様に意地悪するかららしい。俺はそんな事したくないし、出来ない。無理無理。
「半年ほど前でしょうか。当商会の者が盗賊に襲われ、商品である奴隷が奪われてしまったのです。此方にその奴隷達がいるとお伺いしたのですが」
……………イリム達だな。
「いたからどうだと言うのですか?」
少し強めに言う。
「盗賊に奪われた物は奪還した方の物、返せとはいいませんが、買わせて頂きたい。貴重な奴隷達ですので」
「断る」
「言い値を払います」
「しつこい!断る!それに既に奴隷解放した!貴方に売る奴隷などいない!」
「なんと!アラクネやダークエルフはそれぞれ白金貨10枚は必要でしょう?」
「ウチをなんだと思っているんだ?」
国公認のダンジョン店舗だぞ。っても白金貨合わせて20枚は全然稼げてなかったけれどもね。レオさん様様だ。
違法奴隷だろ?とは言わない。どうせ、『奴隷の言う事を鵜呑みにされたのですか?』とか返してくるんだろ?
「……………」
「他になんか言うことはないのか?」
「夜道に気をつけていただければ」
「暴力に訴えるならこちらもそれ相応の対応をさせてもらう。シルヴァ!」
ったく!この世界の商人は都合が悪くなると暴力に訴えるのか?ヤクザかお前ら!戦力でダンジョンに勝てる訳ないだが!
転移陣が輝きシルヴァが登場する。
毎回呼びつけてごめんなシルヴァ。
「くっ…」
苦虫を噛んだみたいな顔をする奴隷商。名前なんだっけ?
「で、何か言う事は?」
なんて返してくるかな?
「一旦この場は引かせて頂きます」
「イヤイヤ、帰す訳ないでしょ?」
シルヴァを奴隷商の背後に立たせる。
「死ぬか牢屋か好きな方選べよ」
「な!」
「国公認のダンジョンを脅したんだ。当然だろ?レオパルド国王様より権限は頂いてる」
その後、奴隷商は投獄され奴隷商の店には国から監察が入った。出てきたのは数十人の違法奴隷達。
レオさんにより、違法奴隷達は解放され犯罪奴隷達は国の管理下に置かれ、借金奴隷(自分で奴隷に身を売った、または家族などに売られた奴隷)は他の奴隷商に引き取られる事になった。
そんな訳だから当然……
「トール、すまんが頼みがある」
「分かってます。行くあてのない解放奴隷達の受け入れですね」
「話が早くて助かる」
俺のせいだし予想くらいできますよレオさん。
しかし、らしくないかな。目には目を歯には歯をの考え方で暴力には暴力で対抗してる訳だが……ダメだな。
この世界でグリズリーにビビってた俺は何処に行った?
店長になって、王国の後ろ盾を得て、更にはシルヴァって力を得て傲慢になってるかもな。俺自身はちっとも強くないのに。人1人殺してるのに何も感じてないし………
そうだ……1人殺してるんだよな……前の世界じゃ考えられない行動だ。どうしちまったんだ俺は…
立場が人を作る。ダメな人でもそれなりの立場にしてやると自然と責任感を持つものだ。逆に立場が人をダメにする場合もある。権力に溺れるパターンだな。
戒めなくてはいけない。傲慢になってはいけない。実るほど頭を垂れる稲穂かな。謙虚に、誠実に、素直になろう。
叱ってくれる人がいるならまだ楽だ。トップがブレたらその瞬間に崩壊する。自問自答しよう。ブレずに生きて行こう。
俺は決意を新たにする。
さて、レオさんに任された違法奴隷の解放奴隷……長いな。解放奴隷達は違法に捕まった上に王都で売られる事になっていた珍しい種族が多かった。
エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、ヴァルキュリア、ワルキューレ、デュラハンなど。あと獣人達。
ヴァルキュリアとワルキューレって種族なのか?見た目人にしか見えないけど?ってか同じじゃないの?おい!名付けした勇者!違いを教えろ!
受け入れは総勢35名。
明日は皆んなの部署を作らねば。大丈夫、考えはある。




