第41話 奴隷商
〜イリム視点〜
トール様と出会う半年前、私の住んでいた村は魔物の大群に襲われていました。村の近くのダンジョンがスタンピードを起こしたのです。
「お母さん!」
「イリム!貴方は逃げなさい!獣王国に行ってお父さんを頼りなさい!」
そう行って母は魔物の群れに向かって行きたした。母は村の戦士でした。生憎、私には才能が引き継がれなかったのか母程の力はなく、村の人に抑えられながら1人魔物に向かって行く母を見ているしかありませんでした。
村の人達と一緒に魔物から逃げる事になったのですが、逃げる事も簡単にはいきませんでした。
数えきれない魔物に襲われて沢山の人達が命を落としました。
私もその時に背中に傷を負ったのです。
その後、気付けば私1人倒れていました。周囲には魔物も人々もいません。逃げる事に必死だったので、どうしてそうなったのかもよく覚えていません。
私は途方に暮れました。1人歩き、とりあえず獣王国を目指す事にしました。
それから数日が過ぎました。
食料は木ノ実や野草を食べ、川の水を飲み飢えを凌ぎました。幸い秋口でしたので、森の恵みは十分ありました。
その日初めて人に会いました。裕福そうな格好をした恰幅の良い男性です。
そう、あの奴隷商です。奴隷商は護衛の冒険者に命じ私を捕らえ奴隷の首輪をつけました。
この国ではそう言った奴隷は違法です。トール様が奴隷解放の話をされた時に、こっそりレオさんにこの事を伝えてあります。ですので私達の奴隷解放にはお金がかかっていません。レオさんあの時自分のお金で解放するつもりだったみたいですよ。
話を戻します。奴隷商に捕まりそれからは苦痛でした。食事は満足に取らせて貰えず、罵倒される日々。ですが、暴力を振るわれる事や慰み者になる事はありませんでした。商品価値が下がるとかで………
街を転々として冬を越す辺りにリリスが捕まりました。
その後程なくしてアテナも捕まりました。
2人とも一人旅をしていて声を掛けられ、不意を突かれて首輪を嵌められたそうです。
珍しいダークエルフとアラクネの奴隷です。売るなら王都で高く売ろうと奴隷商は言いました。
その道中で盗賊に襲われて、トール様と出会った訳です。
〜トール視点〜
本日寝室にはイリムがいます。
イリムの背中には大きな傷があった。何度か一緒にいるのだが……なんか、聞けなくてね。見ていたらイリムが話してくれたのだ。
「辛かったね」
そっとイリムを抱き寄せる。
「今はトール様や、皆んながいます。仕事にもやり甲斐があって満足していますよ」
イリムは微笑みながら答える。
「しかし、違法奴隷なら直ぐに言えば良かったんじゃないか?」
「それではトール様が疑われてしまうかと思ったので……」
なるほど…俺の為だったか…王都に来る前の俺なんか身分証もないし、この世界の知識は皆無。この世界にないスーツを着ていた…今も着てるけど、怪しさ満点だったもんな。
「気を遣わせてしまってごめんな」
「いえ、救って貰ったのは私達ですから」
「イリムはお母さんが言ったように獣王国に行かなくていいのか?お父さんがいるのだろう?」
「顔も見たことのない父ですから、ここを離れてまで行きたいとは思いません。それに母の話しでは、父は獣王国ではそれなりの地位にいて、妾だった母に子が出来た為、正妻から国を追われたらしいのです。そんな国は正直母の言葉でも行きたくないです」
なかなか辛いな……
「じゃーイリム。ずっと俺と一緒にいてくれよ」
「えっ………」
?なんか反応おかしいな。あれ?嫌だった?
「………嫌か?」
「いえいえいえ!滅相もございません!」
「じゃー……」
「………なにか、告白されたような言い回しだったので……」
「そつのつもりなんだが……ダメかな?」
「えっ⁉︎……………う、嬉しいです……………ですが……トール様は不老ですから……」
あ〜そうか、そうだよな……
ダンジョンマスターは不老だ。親しい人がいても病気や怪我以外では先に死ぬ事はない。自分の子供はおろか、孫、その又孫何代も先に死なれるとか……俺は耐えれるだろうか……って俺生殖能力低いんだった。
「……なんとか方法見つけるから、死ぬまでは側にいてくれよ」
とりあえず今はイリム達と離れるとか考えられない、考えたくもない。
「はい、お側におります」
ギュッと抱きしめ、眠りにつく………
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次の日、来客があった。
「店長、お客様が店長をご指名です」
アンズが俺を呼びに来る。
「俺を直に?レオさん以外に?」
「はい、因みにギルドマスターやエドガーさんでもありません。恰幅の良い男性です」
……………なんか嫌な予感がする。
俺は一応来客に対応する為に一階に向かった。
俺を待っていたのは恰幅の良い男性、身なりも良いようだ。
「初めまして、私は奴隷商をしておりますバジルと申します」
奴隷商が何の用だ?




