第35話 シルヴァを紹介しよう
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いつもご愛読ありがとうございます。
翌日、レオさんにシルヴァを報告する為に王宮に向かう。
あれ?何気に俺から王宮に行くのって初めてじゃないか?国王様に毎回来てもらってた俺って何様だよ。
シルヴァを連れて王宮に向かっていると当然だが周囲の注目を集めた。
ある者は逃げ出し、
ある者は気絶し、
ある者は固まり、
ある者は崇めている。
冒険者ギルド前を通ると呼び止められた。
「ト、トールさん。そ、それフェンリルですか……」
いつもの受付嬢さんだ。
「ワン!」
「ひっ」
「こんにちは、受付嬢さん。はい、フェンリルのシルヴァです。この度、主従契約する事になりました。とは言え、神獣と呼ばれて犬系獣人から崇められるような存在なので、それ呼ばわりはやめた方が良いかと思います」
「は、はい。気を付けます。……それで、提案なのですが……ギルドから発行してる従魔証を付けて頂けませんか。あれば騎士達に止められる事もないと思います」
「なるほど。しかし、私は冒険者ではありませんが良いのですか?」
「今更だろうよ」
ギルドからギルドマスターが出て来た。
「今更ですか?」
「今更だろ?馬鹿共とは言え、冒険者の集団をほとんど無傷で捉える手練れを有する上に、勇者やフェンリルまで……小国なら落とせるんじゃないか?」
まぁまぁ帝国に対する戦力としても考えていた訳だから、間違っちゃいないんだが……
「私に戦う気はありませんよ。しかし、従魔証はありがたいのでシルヴァの他にもう一つ下さい」
「他にも従魔がいるのか⁉︎」
「ヒュドラがいますね。他のは食肉用なので討伐されてもいいのですが、シルヴァとヒュドラは食肉用魔物を統括する立場なので失いたくないのですよ」
「食肉用………それなり数がいると言うことか?」
「ワイルドボアとコカトリス、バジリスクが合わせて200体ほどでしょうか?その内ワイルドカウも捕まえたいですね。あと美味しい魔物いたら教えて下さい。繁殖させます」
「EとDとCランクが200体………」
ギルドマスターが青い顔して空を見上げてる。
「ギルドマスター?」
「はっ‼︎すまん!意識が飛んでいた!………それでスタンピードとかは無いんだろうか……」
スタンピードとは集団暴走の事だが、この場合はダンジョンの魔物が、ダンジョンから大量に溢れ出て暴走する事をさす。
「ウチは問題ないですね。アレってダンジョン内の魔物が増えすぎて食糧難になるか、人が来なくてDP枯渇寸前になりそうな時の手段みたいですよ。ウチはDP枯渇する事はありませんし、シルヴァとヒュドラ以外は従魔にしてませんから、増えすぎてもシルヴァとヒュドラとダンジョンのご飯になるだけですね」
正確にはヒュドラはまだテイムしていないが、コカトリス、バジリスクの管理者として雇いたい。
「な、なるほど…」
「ご理解頂けましたでしょうか?そろそろ、国王様に報告に向かいますね」
「あ、あぁ引き止めて悪かった。コレが従魔証だ。あと一つは後ほどスクランブルに届ける」
渡されたのは中央にギルドのマークが刻まれている赤い宝石だ。なかなか綺麗な色だ。紐が付いているが首には巻けそうにない。右前足につけよう。
「シルヴァ、ちょっと鬱陶しいかも知れないけど我慢してくれ」
「オン!」
うん、凄く賢いよな。……いや、そんな事いったら失礼か。俺より遥かに賢いはずだ。
「それではギルドマスター、失礼します」
ギルドマスターと別れ王宮を目指す。
王宮前で門兵さんに止められてしまった。
「と、止まれ! お、王宮になんのようだ!」
頑張ってるけどシルヴァを見て声が震えている。
「お勤め、お疲れ様です。スクランブルの店主をしておりますトールと申します。この度は先日、国王様との約束のご報告にあがりました。こちらのフェンリルは従魔のシルヴァと申します。約束の内容に関わる為に連れてまいりました」
アポなし訪問だから聞いてなかったのかな?国王様に面会するのにアポなしはちょっと非常識だったか。反省しよう。
「わ、分かった。今確認するから待ってくれ」
そう行って中に走っていく門兵さん。
数分後……宰相さんが血相変えて飛んで来た。
なんでも、今帝国の使者が来てるらしい。
タイミング悪かったかな?とか思ったが、帝国に圧力をかけるのに丁度いいとの事だった。そのまま謁見の間に通される。
謁見の間では、白銀の甲冑に身を包んだ女騎士と黒い鎧の男の騎士がレオさんと面会していた。
「トール殿、ようこそお出で下さった」
国王様に殿付で呼ばれるって……俺って偉かったっけ?
男女の騎士達は、「あれがダンジョンマスター……」とか「勇者様の……」とかボヤいてる。
謁見の間なんだから私語は心の中だけにしなさい。
「突然の訪問失礼いたします国王様。この度は以前の約束のご報告に上がりました」
「よいよい。トール殿とは良い関係を築いていたいのだ。いつでも訪ねてくると良い」
ちゃんと王様しているレオさんを見ると吹き出しそうになる。立場って大変ですよね。
「はい、ありがとうございます。で、こちらが従魔になったフェンリルのシルヴァです。私達の守りの要となってくれるでしょう」
「「フェンリル‼︎」」
男女の騎士が慌てている。さらに追い討ちをかけてやろう。
「勇者ヒビキも私の元で精進しております。私達に害が及ぶなら力を貸してくれるでしょう」
「トール殿は最早一国に匹敵する戦力を有しておるな」
「いえいえ、あくまで自衛の手段でございます。私どもから仕掛けることは決していたしませんよ」
「それは……欲がないな……」
「欲とは何でしょうか?人の道を外れて得た利益など、泡も当然ですよ。私が欲するのは確かな信頼と実績、それに笑顔でございます。幾ら金と権力があろうと心からの笑顔は買えませんよ。売る事は出来ますがね」
ス○イル0円。懐かしい。笑顔は伝染するのだ。あれは話題性とかも狙ってるけど、結構いい戦略だと思うよ。
「ふむ、確かにそうだな。民あっての国、国あっての王だな」
「えぇ、お客様あっての店、店あっての従業員、従業員あっての店主でございます」
「やはり、王をやってみぬか?」
「ご冗談を」
俺はてっぺんにいるより現場で笑顔見てたいんだよ。
「仕方ない。帝国の使者殿。如何だろうか?この街にあるダンジョンを相手にするには一国が滅ぶ覚悟が必要と考えるがいかに?」
「「…………」」
男女の騎士は黙っている。
「もちろんダンジョンは我が王都にあり、我が国と友好な関係を結んでいる。ダンジョンを責めようものならば、我が国も黙ってはいない。逆もしかりだ」
「勿論」
「「……………」」
「帰って皇帝にお伝え願えるか?この度の宣戦布告は聞かなかった事にするから今一度考え直されよと」
宣戦布告してたのか⁉︎ギリギリだったな……
「畏まりました。今回はそれがいいようです。街に配置した部下からの連絡も途絶えたようですし……」
黒い鎧の男の騎士が答える。王国の兵隊さん達が頑張ったのかな?
「私は残る!」
「な!ヘレン!我儘を言うな!」
「人質にされた事にでもしてくれ!勇者様を止めれなかった私には勇者様を見守る義務があるのだ!おい!ダンジョンマスター!私を勇者…グハ!」
女騎士はシルヴァに踏みつけられている。
「オン!」
「私への言動は気をつけた方が良いですよ?仮にも主人が悪く言われて気分が良い従魔はいませんから。シルヴァ、離してあげて」
「オン!」
ゆっくり、前足を女騎士から退けるシルヴァ。手加減していたのだろう。鎧が変形してるが意識はあるようだ。
「今のはヘレンが悪いな。すまない。トール殿と言ったか」
「はい」
「我々もこの場で敵対する事はしたくないので水に流してくれまいか?」
「私は構いませんよ。シルヴァ、いいかい?」
「オン!」
「構いまないようです」
多分。
「私は納得がいかない!」
「ヘレン!いい加減にしろ!フェンリルを敵に回す気か!」
「しかし……」
「ヘレンさんと言いましたか?私は元の世界でもヒビキの面倒を見ていたのですが、此方ではどう言ったご関係で?」
「元の世界……異世界人なのか……」
男の騎士が質問する。
「それは今は置いといて下さい。ヘレンさん?」
「私は……勇者様が好きだ……」
おぉ〜ヒビキに春が来たか!
「出来る事ならお側にお仕えしたいと思う」
「では、帝国を抜けてウチで働きますか⁉︎」
「いいのか⁉︎」
おいおい、帝国を抜けてって言ったのはスルーですか?
「おい!ヘレン!帝国の敵になるかも知れないんだぞ⁉︎」
「勇者様のお側に入れるなら構わない!それに帝国がフェンリルに喧嘩売るとは考えづらい!」
「確かにそうだが……」
「あ、ウチの従業員はヒビキを除けば全て魔族ですので、ご理解下さいね」
「魔族………」
「嫌なら構わないですよ。この話しは……「待ってくれ!」はい?」
「大丈夫だ、大丈夫……慣れるのに時間が掛かるかも知れないが、なんとかする」
「わかりました。ではヘレンさんはウチで雇いましょう」
「ありがたい。よろしくお願いする」
「勝手にしろ……」
その後、男の騎士は一人で帰っていった。
シルヴァのお披露目も終わったし、明日からはデパ地下作成だな。
従業員どうしよ?




