第33話 俺は冒険したい訳じゃない①
「先輩、酷いっす!」
「すまん、すまん。だけど、告知したら断ってただろう?」
「それは……否定しないっす……」
「さ、行くぞ」
「へ?二人っすか?」
「俺が従業員を危険に晒す訳ないだろ」
「イリムさんとか並みの冒険者が束になっても敵わねぇっすよ⁉︎」
「それはそれ、これはこれ。勇者(笑)なんだからガタガタ言わねえで行くぞ!」
「ちょ、勇者(笑)ってなんすか⁉︎(笑)って!先輩!ちょ、引っ張らないで⁉︎」
ヒビキを引きずり、地下三階に設置した転移魔法陣でオススメの森に向かう。
「森だな」
「森っすよ」
深い森は、木々で太陽の光も届かず不気味な雰囲気につつまれている。
少し歩くと巨大な芋虫がいた。
「ジャイアントキャタピーっすね」
まんまかよ。この世界の魔物がなぜ英語の名前か意味が分からない。翻訳の都合上なのか?
ヒビキが一閃、ジャイアントキャタピーを斬りふせる。
なんだかんだ言っても勇者だ。ヒビキは強いのだ。
「俺は自慢じゃないが弱いから、その調子で頼んだぞ」
「ほんと自慢じゃないっすね」
「あははー頑張れ。食えそうな獣系は捕まえて転移魔法陣に入れるぞ」
「了解っす」
魔物を魔法陣に入れる為にそこそこ森の奥から始めている。さぁ来いや!
が………
次に現れたのは二つの頭を持つ赤黒い犬のような魔物だった。
「ヒビキ……あれって……」
「……オルトロスっすね……」
「マジ?」
「あ、でも先輩、この世界のオルトロスは単一じゃなく種族名っすからそこまでじゃないっすよ。昔の勇者が大半の魔物の名前を決めたらしいっす」
あぁーそれで英語名なのね。アラクネもだから種族名なのか。
って、オルトロスが脅威なのに変わりはない!
オルトロスがヒビキに襲いかかる!ヒビキは剣でオルトロスの爪を弾き、蹴りを入れて吹き飛ばす!
「なんか前より身体が軽いっす!これなら何とかなりそうっすよ!」
俺のギフト、ヒビキにも効果があったようだ。発動条件マジ不明。鑑定ギフトさんに調べて欲しい。
ヒビキがオルトロスを押し始めたが………
「ヒビキ!後ろだ!」
「はい?あぐぅ‼︎」
ヒビキの後ろから炎が迫って来る!
間一髪交わしたヒビキだが……
「ケルベロスだな……」
炎が向かってきた先には三ツ頭の犬がいた。ケルベロス……地獄の番犬として有名な奴だ。オルトロスとは兄弟だったはずだが……この世界じゃ関係ないはずだよな?
「ケルベロスはオルトロスの進化後っす!」
え〜魔物進化するのー⁉︎
「先輩!お助けっす!」
いやいや、店内最弱の俺に何を言ってらっしゃるのだこの勇者(笑)め。
俺は腰につけてきた銃を構えてケルベロスに発砲する!
俺の銃は電気を纏い、あり得ない速度で飛び、ケルベロスを消しとばした!
「はいー‼︎何すかそれ⁉︎」
「レールガン」
電磁砲も魔法を使えば簡単に再現出来る。魔力自体は弱いが、工夫次第で武器は出来る。
「科学は卑怯っすよ!」
「人相手じゃないからいいじゃねぇか、それよりオルトロスなんとかしろよ」
「そうだったっす!」
ヒビキがオルトロスを炎を纏った剣で仕留めて戻ってくる。
「終わったっす!」
「おぉお疲れさん。なぁヒビキ、テュポーンやエキドナはいないよな?」
「テュポーンとエキドナは魔人種にいるっすね。魔物じゃなくて魔族っすし、魔王の国にしかいないはずっすよ」
いるのか……テュポーンとかゼウスクラスのはずだよな……名付けた勇者が見た目で付けたか強さで付けたか次第だが、会いたくはない。
「オルトロスとケルベロスはBとAランクの魔獣っす!素材拾って帰るっすよ!ケルベロスはほとんど吹き飛んじゃったっすけど……あ!魔獣は獣系魔物の上位版で多少知恵がある奴らっす!」
帝国に刷り込まれた知識が正しいか分からないが、貴重な素材には違いないんだろう。レールガンはやり過ぎたかな?でも俺はこれしか攻撃手段ないしな……
オルトロスとケルベロスの残骸をアイテムポーチに収納する。
「ウォーーーン」
背後から遠吠えが聞こえる。
振り向くと白銀の巨大な狼がいた。
「フェ、フェンリル‼︎」
おい!名付けした勇者!ギリシャ神話か北欧神話かどっちかにしろや!




