第26話 店長の仕事②
四階、家電雑貨部門。
ここは主に魔道具家電や異世界雑貨を販売している。異世界知識が必要なエリアだが、今まで作った商品は4コアに記憶してあるので補充は簡単だ。新商品となると難しいかも知れないが、逆に期待している。俺では考え付かない何かをしてくれるんじゃないかと思ってる。この部門はリザードマンのゲッコーとミド2人きりだが2人だからこその二人三脚で切り盛りして欲しい。
「ゲッコー。魔石と材料もってきたよ」
「ありがとうございます店長」
「こっちに置いてくよ。調子はどうだい?」
「はい、ダミーコアのおかげで補充は問題ないですし、アイテムバックで配送も出来そうです。しかし……変わらない売り場では飽きられないかと不安はあります」
「あぁーそうとっちゃった」
「何か間違っていたでしょうか?」
「いや、ゲッコーとミドで新しい商品も作って欲しかったんだよ」
「えっ⁉︎私達にここで扱うような物の知識はありませんよ⁉︎」
「確かにここは俺の世界の物で溢れてるけど、逆にゲッコー達が今まで生活で必需品だったのにない物とかない?」
「それは確かにありますが…」
「こんなのあったら良かったのにとか、コレが欲しかったんだよって物とかは?」
「……あります」
「それでいいんだよ。最初は分配するDPから作ってもらう事になるけど、売れ行きの推移しだいでは定番化していいし、そしたら定番でDP補給するし。逆に売れない商品は定番から外して売り場を確保するんだ。そうやって面白い売り場、強い商品を揃えて欲しい」
「なるほど、分かりました。頑張ってみます」
「アイディアがなかなか出ないなら相談にものるしね。そうだ!フードコートで使ってる調理器具なんかも俺の世界の物だからいいかもね」
「調理器具もいいんですか?」
「ここは雑貨コーナーでもあるんだ。何だっていいよ。食器でもいい。他の部門にない物なら何だっていいよ。売れ行きがかなりいいなら人員補充して専用階層作っていいし。気楽に考えて」
「なんだかワクワクしてきますね」
「そう、仕事を楽しんで欲しいんだ。自分の考えた商品が売れる売れない。なんで売れないのか、次は売れるのか、不安になる事もあるだろうけど、そうやって考えた商品だからこそ、成功した時に一際嬉しくなるよね。ここはそれがダイレクトに出来るんだよ」
「はい!やらせて頂きます!」
「うん、頑張って」
PDCサイクルってのがある。
プラン、ドゥ、シーサイクルの略だ。
計画して、実行して検証して、また再仮説する。繰り返し行う事でより良くしていく手法だ。仕事も遊びも同じだと思う。
これが出来ると楽しくなっちゃうんだよ。嘘だと思われる本当の事だ。本気でやるのは辛いけど楽しいのだ。本気でやる事知らない人は損してると思う。いや、途中は本気辛いのだけど、あの報われた瞬間は非常に嬉しいし、次を考えるのも楽しくなる。ハマる瞬間ってやつだな。
人生で寝てる時間の次に長いのは仕事している時間だ。その長い時間に張り合いがないのは損してるとしか言えないよ。
また脱線してしまった。
兎に角、四階は他の階層よりも更に可能性に満ちた部門だ。だから頑張って欲しいと思う。
四階を後にして五階に上がる。
五階、フードコート。
シルキー達の場所だ。もう説明いらい本当にフードコート。3人しかいないのがちょっと申し訳ない。
「アイ、クイ、サイ、様子見にきたよ」
流石にフードコートには魔石はない。調理器具を作ったりするのにダミーコアは必要だし、忘れてるかも知れないが元々スマホなので、コア同士で連絡が可能だからフードコートにも渡してある訳だ。
「店長なのー」
「店長だねー」
「店長ですー」
「なのー」がアイ、「だねー」がクイ、「ですー」がサイだ。
「で、どうなの?順調?」
「何作るか決まってないのー」
「だから買い出しもまだなのー」
「ちょっとピンチですー」
おいおい。此処が一番ヤバいようだ。まぁ伝えてなかった俺が悪い。
「あぁごめんな。じゃあさぁ、ファストフードを作ってくれないか?」
「「「ファストフード?」」」
「俺の世界の食べ物で、素早く出来上がるのが売りなんだ。3人しか作り手がいないから、回転早い方がいいだろう?そうだな、ハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン、焼きそばとかかな?」
「どうやって作るのー?」
「ダミーコアに確認すれば、レシピや食材を教えてくれるよ。他にもファストフードで調べれば出てくると思うから、何をファストフードで何を主体に出すかは任せるよ。あ、ソースないから焼きそばは難しいかな?」
「分かったのー」
「焼きそばってのも面白そうだねー」
「ソースの作り方も調べるですー」
「フードコートは11時前は閉めて準備時間にしてもいいから、その時間に仕込みするのもいいかもね。あ、社員食堂分は別途に給金払うからね」
「お料理してお給料が貰えるなんて天国なのー」
「がんばるのだよー」
「ですですー」
「うん、期待してるよ」
五階を後にして屋上にあがる。
屋上、イベント広場
ここは月一のイベントの為にステージを用意してある。が、イベントの内容は接客部門に任せてるので使うか分からない。他には滑り台、ブランコ、ジャングルジムなど公園みたいな遊具を揃えてみた。パンダやブタのあいつもある。因みに鉄貨一枚で動くようにしてある。
「「「いらっしゃいませー」」」
屋上では接客班が挨拶の練習をしていた。
「イリム、サリア調子はどう?」
フードコートにいないと思ったら接客班にサリアがいた。料理においてはシルキーの方が上らしく、接客班で練習を手伝っていたらしい。
「はい、皆さん素直で飲み込みも早いです」
「おじ…店長、皆凄いんだよ」
サリアには仕事中は店長と呼ぶように言ってある。公私混同は良くないからね。今みたいにたまに間違えそうになるけど。
素直はいい事だ。人が成長するのに素直なのは必須だと思う。偉くなったり、歳をとるとどうしても出来なくなってくるが、素直な事は大切なのだ。俺もいつも自分にいい聞かせているのだが、なかなか難しい。ふっとした瞬間にできない事がある。
実るほどこうべを垂れる稲穂かな。
使い方間違ってるかも知れないが大切だと思う。初心を忘れずに、忘れても振り返れるように。奢ってはいけない。
「うん、いい事だね」
「はい。それでイベントの話なんですが」
「何か案があった?」
「うんとね、私の孤児院の子供たちに頼んで劇をやりたいの」
「おぉーいいじゃないか。楽しそうだ」
「うん!」
「それで、孤児院にも寄付の形で給金をお願いしたいのですが」
「もちろんだ。仕事には対価が支払われるべきだ」
「はい、ありがとうございます?あと劇だけでは物足りないので、当日は出店などもお願いしたいのです」
「屋台か?当てはある?」
「私があるの。ただ、お店の中に違うお店があっていいのかなって」
「構わないよサリア。そういうのは持ちつ持たれつだ。先方が了承するならウチは全然構わないさ」
「ありがとう店長!」
「ありがとうございますトール様」
「うん、皆んなが考えてくれた事は出来る限りは許可するよ。ただ、毎月同じじゃつまらないから他にも考えてくれると助かるな。孤児院の子供たちも毎月違う劇となると難しいでしょ?それに子供たちもここみたら遊びたくなっちゃいそうだしね」
「そうですね…皆で話してもっと案を募ります」
「私ももっと考えるよ!」
「期待してるよ」
屋上を後にして地下二階に向かう。
地下二階、畑
今畑は各種薬草の他にも色々な野菜を育てている。フードコートやウチの食材にする為だ。育てた野菜は吸収してもDP効率が良くない為、基本しない方針で進めている。
因みにDP効率が良いのは魔物肉だ。1gで1DPは稼げるから驚異的だ。解体肉じゃなくそのままだともっと高い。なのでDPはあまり気にしていない。大型ダンジョンを作る連中は足りないのかも知れないが、ウチはコレで十分過ぎる。
「リュアス調子はどう?」
今地下二階はフィールドダンジョン化している。地下なのに太陽があるのだ。ハジもない。ハジもないが、ますっすぐ走って行くと何故か反対に戻ってくる。ダンジョンは不思議だ。因みに階段は空中に空いた穴に入っていってる。
「…太陽……素敵………」
ちょ!無口が進行してる!接続詞ないよ!
因みに雨や曇り、雪もできるDP消費するが操作可能だ。地下用にもダミーコア作ろうかな?
リュアスが話せそうにないので、ミノタウルスのアンガスに話を聞く。
「アンガス、リュアスどうしちゃったの?」
「あぁ店長。リュアスさんはダンジョンの土が良すぎて放心してるんだ」
「へ?そんなに土がいいの?」
「いいってもんじゃない。凄すぎだ。作物の成長も品質も良い方に異常だ」
ほぅそれは良い誤算だ。
「なぁアンガス、畜産もやりたいって言ったら出来るか?」
「現状、畑は手間かからないしマリーはそっちが得意だから問題ない」
「魔物でも?」
「ま、魔物⁉︎」
「ダンジョン機能で魔物を使役出来そうなんだよ。後でイヴに確認するけど」
「大人しいなら問題ない。種類によるが魔物肉や卵は高級品もある」
「なるほど…今度教えてくれ」
「分かった」
地下二階を後にする。
店長の仕事。それはスタッフの状態の把握。他にもトラブル処理や、今後の計画などあるが、一番はやっぱり従業員の状態を見守る事だろう。
誰が、どれくらい出来るか、何が出来て、何が出来ないか、何に不満があるか、何が不安なのか、何を期待してて何が楽しいか。
従業員1人1人が満足して業務を遂行出来ているか見るのが店長の一番の仕事だと思う。
しかし、人数増えすぎたかな?1人じゃキツイ。接客班が満足に出来るようになったら各階のリーダーに任せて、イリムとサリアは副店長ポジションで頑張って貰おう。
あ、ミッシェルの所まだだった。
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「ヘックしゅ。……風邪ですかね。1人は寂しです」




