第21話 王国の異変
「お待たせいたしました国王様。本日は当店へどのようなご用件でしょうか」
国王様として来店したみたいだから一応礼は通す。念のため住居のほうのリビングで話を聞く。
「うむ、本日は貴殿の店にではなく、ダンジョンマスターとしての貴殿に力を貸して頂きたく参上した」
「………それは私を敵に回す覚悟がお有りになるととっても?」
俺に力なんてないけどな。ヤバそうなら逃げるまでだ!サリアの事だけ申し訳ないけど、店舗名義だけは変えて逃げよう。
「まてまて、早まるな。そんな積りは一切ない」
「では、どのようなおつもりですか」
「……先日、帝国の勇者が我が国に入ったのだ」
「勇者と戦えと?自慢じゃないですが私は弱いですよ?」
マジ期待とかしないで欲しい。
「大丈夫、期待などしていない。要件は別にある。その勇者が我が国の魔族の村を何村も襲って被害が甚大にでているのだ」
「それは……なんといいますか……」
きっと同郷の奴であろう勇者が仕出かした事に胸が締め付けられる。なんとも申し訳ない。
「国で被害があった村に支援をしたり、被害者遺族を匿ったりしているのだが……数が多過ぎるのだ」
「私に何をしろと?」
「働ける者達を雇って欲しい」
「何を言っておられるか分かっていらっしゃいますね?」
「分かっている。無理にとは言えない。出ていかれたら元も子もないからな」
「分かりました。受け入れますよ。何人ですか?」
「いいのか⁉︎」
「人員不足を痛感していたところですので渡り船ですよ。それに…勇者が仕出かした事ですから…なんと言うか同じ異世界人として申し訳なくて…」
「トールが気にする事じゃないだろ…」
「レオさんだって本当は勇者をやってしまいたいんでしょ?でも、帝国が絡んでいて手が出せない。違いますか?」
「その通りだ。俺は彼奴を許せない」
「まぁまぁ。多分勇者は帝国の傀儡ですよ。こっちの常識がないのをいい事に都合がいい事ばかり詰め込まれてるはずです。そんなに恨まないでやって下さい」
「だが!」
「で、受け入れの条件なんですが、まずイリム達奴隷を解放したいので、解放金なしでお願いします。あと、スクランブルがダンジョンである事を公開して下さい。ダンジョンを踏破しろとかじゃないですからね!国に友好的な珍しいダンジョン商店として民に紹介してください」
「いいのか⁉︎」
「はい、勇者を釣ろうと思います」
「………死ぬなよ」
「死にませんよ。折角の不老ですからレオさんの曾孫まで見てやりますよ」
「不老だったのかよ⁉︎」
「ダンジョンマスターですよ?当たり前でしょう。ぶっちゃけたら本来不眠不休でも大丈夫らしいですよ?それより奴隷の件頼みましたよ。あ、で、人数は?」
「20名くらいだと思う。獣人、シルキー、ラミアにドワーフ、デュラハン、ミノタウルスだな」
「分かりました。では受け入れ後に訓練と役割分担しますので一週間ほど店を休みにします。ダンジョンだったと公表するのはその後お願いします」
「分かった。奴隷解放は明日、受け入れてもらう奴らを連れて来たあとにする」
「畏まりました。それでお願いします」
「……ありがとうトール」
「お互い様ですよ」
レオさんは帰っていった。
お互い様だ。俺だって勇者にイラついた。レオさんはもっとイラついただろう。困ってる人を助けたいと思った。レオさんは本当に親身になって助けたいと思ってる。俺を敵にする覚悟で頼みに来た。
違うって言ってたけど、俺がそれほど国に執着がないのは知ってるから、ちょっと嫌な事があればいなくなる可能性を考えてないはずがない。宰相さんに仕事を丸投げする人でも国王様だからな。
心打たれたと言っていい。
こんな時に何だけど、コレは商売でも大事だ。お客様の立場にたってなんて耳にタコが出来るくらい聞く言葉だが、実際出来る人はどれくらいいるだろうか?
お客様は人である。私達販売員も人である。親身になって接してくれたら嬉しくなる。褒めてくれたら嬉しくなる。嬉しくなると優しくしたくなる。
逆もある。冷たくされれば嫌になる。貶されたらやっぱり嫌になる。嫌になったら会いたくなくなる。
当たり前だ。今回はレオさんの民を思う気持ちに心打たれた。
感動とは想像を超えた時にくる。
覚えておくといい。お客様を感動させる事はお客様の想像を超える事だ。
うん、いい話だったのに凄く脱線した。申し訳ない。仕事でしか例えられないのだ。
さてさて、やる事いっぱいだな。先ずは夕飯の時にでも皆んなに伝えようか。集まってる時の方が楽だよな。
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「って、訳でダンジョンを公表する事になった。あと、イリム達は奴隷解放する事にした」
「いいのですか?」
「どれが?」
「全部だよ全部!」
「私達の奴隷解放は何故だ?」
「これから来るメンバーを指導したり纏めたりするのはイリム達だからな。上が奴隷なんてカッコつかないとか思う奴がいるかも知れないだろう?」
「なるほど…」
「ダンジョンの秘匿はいいのですか?」
「レオさんに頑張ってもらおう。無理なら容赦しない方向で。な、イヴ」
「はい、現在一階から三階まで任意発動型トラップで死角はありません。銃火器トラップからアテナの糸を使用した切断トラップ。基本的な槍や毒矢まであります。釣られてくるクズが待ち遠しいです」
ルビも本文も不穏じゃねぇか!
だがまぁ実際ウチに害すりなら生かして返す気はない!
「おじちゃん。勇者様って悪い人なの?」
「サリア、勇者は悪い人に騙されて悪い事をしてる可能性が高いんだよ。だから目を覚ましてあげような」
「はい!私がんばる!」
うん、良いお返事だ。
「店長はサリアに甘い…」
リュアスが影薄いんだよ。
「リュアスにも人員付けるからな。畑拡大と肥料まき要員に」
「ありがとう…」
最初より絶対無口キャラかノンビリキャラになってるよな?
「しかし、そうすると奴隷でいるのも今日で最後か……」
「そうですね」
「最後だからやっちゃうご主人様?」
「ん〜そうしようか。いいか三人とも?」
ふはは、さてどう返してくる!下ネタを下ネタで返してやったぞ。
「私は構いませんよ。寧ろ最初から期待しておりましたし」
へ?い、イリムさん?
「僕も今発情期なんだよね」
へ?アラクネって発情期あるの?
「わ、私もかまわない!」
リリスさんまで何を言い出すの⁉︎
「おじちゃん、何するのサリアも出来る?」
「サリアは私と遊ぼうね……」
リュアスがサリアを遠ざける。
ちょっと目が軽蔑してましたけど、サリアに手出しするとかないからね!
ってこっちの状況どうするよ⁉︎
四人で俺の寝室へ来る。
うん、まぁ四人で寝ても大丈夫なベットの大きさはある。アテナでも問題ない……
って違う!
…
………
…………………♡
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「夕べはお楽しみでしたね……」
「あぁリュアスおはよう。それは宿屋の人のセリフだよ」
三人相手とかオッサンにはシンドイんですよ本当に。
でも、まぁ、悪くない。皆んな好きだよ。本当に。




