第2話 ファンタジーな奴隷達
俺は眉間にしわを寄せて考える。
此処が異世界だとして俺はなんでいるんだ?全然記憶がない……取り敢えず今日は出勤出来なさそうだ。皆んな大丈夫かな?
「私の耳…お気に召しませんでしたか…」
イリムと名乗ったケモミミさんが悲しげに問いかけてきた。
「いえ、すみません。考え事をしてました」
俺は表情を戻して慌てて否定する。
「考え事?」
さて、どうしよう…異世界から来ましたって言っても信じて貰える自信はないぞ。痛い奴みたいに見られるかな?
「何かお悩みですか?」
「はい…先ほど森で目を覚ましたのはお伝えしましたよね?でも、その前の事が全然思い出せなくて…」
うん、記憶喪失で行こう!
「それは大変です!私に回復魔法が使えればよかったのですが…あいにく…そうだ!此方に来てください!」
イリムが俺の手を引き馬車を出ようとするが……
ガッ!
イリムの首輪から繋がってる鎖がそれを阻んだ。
「そうでした……コレがあったんでした…」
イリムが悲しそうに言った。
「イリムさんは何故繋がれているのですか?」
俺は尋ねる。
「……ご存知ないようですね。本当に記憶がないみたいです」
記憶がないってか知らないんだけど
「私は奴隷なんです…」
イリムは呟く。奴隷がいるのか…
「この馬車は奴隷商人の物だったのですが、先ほどの盗賊に主人だった奴隷商人を殺されてしまいました」
「では、イリムさんはどうなるのですか?」
「奴隷は物です。盗賊によって強奪された物は盗賊から奪還した人に所有権があります。ですので今私はトール様のものになります」
マジすか!こんな可愛らしい娘が俺のものになるのか⁉︎論理的にはアレだけどちょっと嬉しいぞ!それにこの世界の事を教えてくれる人は必要だし。でも一応聞くけど
「私としてもイリムさんが一緒にいて頂けるのは嬉しいですし、記憶がない以上大変有り難いのですが、イリムさんはそれでいいのですか?」
「はい、契約は兎も角解放は奴隷商人の店でしか出来ませんし解放にはその奴隷の価値の倍賃金を払う必要がありますので…トール様が所有を拒否すれば奴隷商に所有権が移るだけです。それにトール様は良い方だと思います」
「何故?」
「奴隷の私にも敬語で話されますし、普通こんな薄着の女をみたら襲ってしまうと思います。でもトール様は顔背け謝罪までしたじゃないですか?私の耳に興味を持たれた事から獣人差別する方でもなさそうですし…」
「ん〜初対面ですからそこまで失礼な事もしませんよ。今後私のものとなるなら遠慮はしません。そう言う事も強要するかもですよ?」
「奴隷の私に聞く事自体が優しい証拠ですよ。奴隷なんですから有無言わず強要すればいいんですから」
「なんかそれは嫌なんですよ」
「やっぱり優しい方だと思います」
「はぁ、まぁそれはいいですが、その鎖はどうしたら外せますか?」
「首輪に手を当てて下さい」
言われるがままに首輪に手を当てる。すると首輪がぼんやり輝いて鎖が消えた…
「主従登録が完了しました。これで私イリムはトール様のものです。これからよろしくお願いしますご主人様」
……目に生気が感じられない。色々諦めてる人の目だ。
「イリム…これからは身内って事で呼び名と言葉遣いは崩させてもらう。イリムも俺の事はご主人様じゃなくてトールでいいから。俺は奴隷とか持った事ないし、扱い方も分からない。だからイリムを奴隷として扱うつもりもない」
イリムが驚いた顔をして此方を見ている。
「何があっても見捨てたりしない。イリムが俺から離れたかったら言え、理由があるなら解放すると約束しよう、ただ、お金あればだけど…」
そこまで言うとイリムが口を開く
「お気遣い有り難うございます。ですが、私は解放を望みません。大切にして下さると約束して頂けるなら、トール様にお仕えしたいと思います」
「分かった。約束する」
「有り難うございます。では此方に来て下さい」
イリムに連れられ馬車を出ると、もう一台連結して馬車があった。グリズリーに追われて必死だったからって俺周り見えてなさ過ぎだろ…ってか、何人か血を流し倒れている…強盗のせいだろう。グリズリーも何故死体を放置して強盗を追ったんだろう?腹減ってた訳じゃなくて遊びだったのだろうか?遊びで殺されたらたまったもんじゃないな。
もう一台の馬車に入ると二人の女性がいた。一人は見た目ダークエルフだ。ファンタジー定番だな。ダークがいるなら普通のもいるだろう。
もう一人は……上半身は顔立綺麗な女性、下半身と言うか膝から下は蜘蛛だ。アラクネだな。ギリシャ神話の魔物、元は確か人間だったような……記憶が曖昧だ。取り敢えず神話で語られるより綺麗な女性だ。蜘蛛はタランチュラみたいに毛が生えててそこまで気持ち悪くはない。デカくて怖いけど。
二人共イリムと同じく薄い服を着ている。目のやり場に困る…
「トール様、此方の二人も奴隷です。今後トール様のものになります」
わーお。一気に三人になるんですか?取り敢えず挨拶しとくか
「トールと申します。突然なんであれですが、嫌なら拒否していただいて構いません。ただ私は記憶が無くて一緒に来て頂けると嬉しいです」
「拒否しても最悪の結果にしかならないからな。多分あんたと一緒に行くのが最善だろう。見た目で分かると思うが私はダークエルフだ。名前はリリスと言う」
「僕も同意見だよ。アラクネのアテナだ。よろしく頼むよ」
強気なダークエルフになんとボクっ娘アラクネだと!蜘蛛入れたら身長2m以上えるんだけど⁉︎…蜘蛛除くと150あるかないかくらいかな?ならば良し!
「改めてよろしく」
今後について四人で話す事になった。




