第10話 接客業の基本
昨晩は結局外食した。宿の時も思ったが、この世界では料理に香辛料を普通に使っていた。まだまだ荒いように感じるけど、値段が凄く高いって訳じゃない。この王国だけかも知れないけど、よくある胡椒でボロ儲けとか出来なさそうだ。
ってかあれ不思議だったんだよな。いくら日持ちする香辛料だって、大量にあれば悪くなるだろうし、早く捌きたいから値崩れ起こすだろう?いくらなんでもやり過ぎだろ。商売舐めるなよ異世界ファンタジーが!
なんてイヴを使って異世界雑貨を売ろうとしている俺が言ってみる。まぁウチにある家電品はDPを動力にしてるから無理だ。伝統工芸品とか、電気を使わない玩具とか、手巻きで充電するライトとかどうだろうと思っている。イヴと相談して色々やろう。テンプレリバーシは果たして流行るのか否か。個人的には麻雀やダーツを流行らせたい。
なんか脱線した。
で、翌朝の朝食前にサリアが来た。早いなぁと思いながら朝食前なのを伝えると、なんとサリアが作れると言う!親が店で忙しい時は自分で調理してたそうだ。料理だけじゃなく家事全般できるスーパー小学生だ!小学校とかないけど。
そして…美味かった!
「俺はこれ程サリアを雇うと決めて良かったと思った事はない!サリアは良いお嫁さんになるぞ!」
「まだ会って一日たったばっかりだよおじちゃん。まだ働いてないし」
ごもっとも。
朝食を終えたらサリアと教会に向かい、孤児院を管理しているシスターに会った。
「こんにちは、トールと申します。この度、サリアを住み込みで雇わせて頂きたくお願いに参上いたしました」
「これはご丁寧に。私はシスターメアリと申します。しかし、良いのでしょうか?サリアは孤児院でも下の子達をよく見てくれるお姉さんではありますが、まだ子供ですよ?」
「いえいえ、サリアはウチに必要です。何よりやる気に満ちている人材は宝ですよ。それにお恥ずかしい話ですが、ウチのメンバーは家事がダメで…今朝もサリアに助けられました」
「あらあら、そうでしたか」
「ええ、本当に助かりました。彼女はウチに無くてはならないと確信しましたよ。あとコレは孤児院への寄付です。少ないですがお受け取りください」
「これはありがとうござます。トール様に神のご加護がありますように」
「では、私はこれで」
「シスター!たまに来るからね!」
「はい、楽しみに待ってますよ」
教会を後にすると後ろからシスターの悲鳴が聞こえた。
「おじちゃん…いくら入れたの?」
ほぉ、悲鳴で何があったか確認しに行くのではなく、俺のせいだと悟ったか。なかなかこの歳で出来る事じゃないぞ。
「サリア鋭いな。なに金貨10枚ほどだよ」
「……多すぎだよ。孤児院二年は安泰だよ」
「サリアみたいな子がこの先いたらと思うとね。企業としては有望株に先行投資って感じかな?」
「よく分からないけど、おじちゃんにも得があるんだね?」
「そうだ。だから気にするな。サリアの給料もちゃんと払うぞ。ついでに家事の分も払うからお願いしたい」
「分かった。あたし頑張るね!」
うん、笑顔が可愛いな。……だが俺はロリコンではない。可愛い子供を愛いでたいと思う気持ちはロリコンではない!決して違う!欲情はしない!子供可愛いよな?
「帰ったら、イリムと接客について勉強だな。因みに計算はできるか?」
「少しならできるけど、いっぱいの数字は難しい」
さっき金貨10枚で孤児院が二年はもつと言ってるから結構できると思うんだけどな?謙遜は時には相手に不快感を与える事があるぞ?
まぁ今はいいか。店に着いてイリムを呼ぶ。今までは店の清掃をしていたようだ。清掃でいいじゃないのかと思うだろうが、実際に掃除する事にも意味がある。棚の傷、商品の状態、歯抜け、盗難防止など見なきゃ気付けない事もある。勿論忙しい時は魔法で済ませてしまって構わない。汚いより綺麗がいいから。だが余裕があるなら自らの手で掃除して欲しいと言ってある。そうする事で気付く事が当たり前になるからだ。
「イリムお疲れ様」
お疲れ様。目下や部下を激励する言葉はご苦労様だと言う。お疲れ様は疲れてる人を労わる言葉とされる。と昔教わった。なんか目下とか部下に言う言葉って時点で新人の頃にはご苦労様なんて言葉は縁がない。多少部下が出来た今でも俺は使う気になれない。上から見下し礼をするより、同じか下から支えるようにお疲れ様と声を掛けたいのが俺の持論だ。
大概の人は気にしないと思うけどなんとなくね。
「それじゃ、接客について勉強しようか?イリム、サリアいいかい?」
「「はい」」
「では、最初は挨拶かな。挨拶は全てのお客様に対して行う事。コレは当たり前。ただ声のトーンに注意して欲しい。ただ大きい声でいいなら怒鳴ってるような声でもいい事になっちゃうだろ?声の大きさはお客様との距離で調節するんだ。お腹から声を出す様にすれば高めの声でも遠くまで通る声になるんだよ。いらっしゃいませー言ってごらん?」
「「いらっしゃいませー」」
「うん、初めてにしてはいいけどまだ出るよね?お腹に手を当てつ深呼吸してみて。お腹は膨らむかな?」
「いえ、へこみます」
「あたしも」
「吸った時にお腹を膨らます様に深呼吸できるかな?」
「…できました!」
イリムが出来たみたいだ。
「それが腹式呼吸だよ。それでもう一回言ってみよ!」
「「いらっしゃいませー」」
「ほら、さっきより出た」
「ほんとだー」
サリアは不思議そうだ。
「まぁ俺も何でかはよく分かってないんだけど、なるんだからって納得してるよ。あと、口から吐き出す様に声を出すのではなく、お腹から頭に突き抜ける様に声を出してごらん」
「「いらっしゃいませー」」
「さっきより綺麗になったね。じゃー接客用語を順番にやろうか?」
「「はい!」」
「復唱してね。いらっしゃいませー」
「「いらっしゃいませー」」
「かしこまりましたー」
「「かしこまりましたー」」
「申し訳ございません」
「「申し訳ございません」」
「恐れ入ります」
「「恐れ入ります」」
「少々お待ちください」
「「少々お待ちください」」
「お待たせいたしましたー」
「「お待たせいたしましたー」」
「ありがとうござましたー」
「「ありがとうござましたー」」
「今のは接客7大用語って言われるのを俺が言いやすいようにアレンジしてるものだよ。良く使う言葉だから覚えてね」
「「はい!」」
「次はお辞儀だよ。お辞儀は三段階あるんだ。会釈、敬礼、最敬礼って分かるかな?」
この世界に角度とかあるか分からないから見本で説明する。
「会釈がこの位。お客様とすれ違ったり、なにか承った時に使うよ」
腰から少しだけ前に倒す。
「敬礼がこの位、いらっしゃいませやありがとうござますの時はコレだよ」
腰から丁寧に曲げて、2mほど先を見る形になる。
「最敬礼がコレ。謝罪時に使うよ。お辞儀コツは腰から曲げる事。頭だけ下げてもカッコ悪いからね。壁に背中とカカトをつけてみて」
言われた通り、サリアとイリムが壁に背中とカカトをつける。
「そこからお尻を突き出すように、腰からお辞儀してみて。腰から頭は金属の棒が入ったイメージで曲げちゃダメだよ」
「難しいです…」
「トール様…膝の裏が少し痛いのですが…」
「そうそれ!その反応が正しいお辞儀の証だよ」
「そっそうなのですか?意外と辛いですよコレ」
「まぁココまで格式張ったお辞儀を営業中に出来るかって言ったら厳しいんだけど、知らないのと知ってるのでヤッパリ違うんだよ。特に謝罪時する時ね」
「そんなにお客様に謝らなくてはならない時があるのですか?」
「あたし間違わないよう?」
「はっはぁ。間違わなくても謝らなきゃいけない事は結構あるんだよ。次はレジ操作を覚えようか」




