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そこで終わるはずだった物語(2)

楽しんでいってください

「俺はさ…主人公になりたいんだ」


「へ?――」


いってしまったぁぁあ

春一(はるいち)は恥ずかしさに身悶えながらも悟られないようにとキリッと佇まいを直す


「主人公…ですか?――」


倉見(くらみ)さんは疑問を浮かべた様子で何かを考えながら 春一を真っ直ぐに見る


「主人公って…あの 小説とか映画の…(おも)(ひと)(おおやけ)って書くあの主人公ですよね」


春一は黙って頷く

春一は今にもここから抜け出したい気持ちで足先はドアの方向に向いているがこの倉見さんの空気感がそれを許さない


「そうですか…主人公ですか…主人公…」


春一にぎりぎり届くくらいの声で倉見さんは呟く 春一は不思議に思いながらも警戒心を忘れないように倉見さんを見定めている


「主人公…ですか…ふっ――」


ずっと呟いていた倉見さんもやがて我慢できずに思わず吹き出してしまう


「ふっ…ハハハ…ハハハっ…はははぁ…はぁはぁ駄目だ…お腹いたい…ハハハ」


終わった…と身を固める春一

遂に胸の内を誰かに打ち明け…その末 笑われてしまった


「なっ…なにがそんなに可笑しいの?」


「へ?…あっ…いえ 勘違いしないでくださいね」


怒りぎみに反応した春一に対して倉見さんは思ったよりもかなりヘラぁと返す それこそ大爆笑が嘘のように

春一は頭の中が混乱で渦巻き「え?」と力が完全に抜けている


「私が笑ったのは朝月(あさつき)くんの言葉が可笑しかったのではなくて…その――」


倉見さんは恥ずかしげに頬を軽く染めうつむいて 言葉に詰まりながら続ける


「ちょうど…いいな…って思いまして…」


「丁度良い…?」


「はい…実は私も…朝月くんと同じような事を…思ってまして…」


は?え?は?どゆこと?同じような事…?つまり主人公になりたいってこと?

と春一は疑問符を浮かべまくる

倉見さんが言葉がスムーズに出ないのもあって春一の中で色んな憶測が飛び交う


「えっと…どうゆうこと?」


「私も!! 小説とか映画に出てくるヒロインにないたいんです!!」


「……は?」


全く憶測と違う展開についていけない春一

それに対して倉見さんは頬をさっきよりも夕日の光も合間って真っ赤に染めている


「これ…言うのかなり恥ずかしいですね」


「えっと…倉見さん?」


「はっ…はい なんでしょう?」


「俺は別に暴露大会にしようと思った訳じゃ無いんだよね…」


もちろん相手の秘密を知ったから自分の秘密も暴露するって考えも理解できる…がしかし急に暴露されるとこっちが反応に困ると春一


「分かってますよ」


「じゃあなんで…?」


「ここから提案があるのですよ」


可愛らしくきめる倉見さんに今度は春一が頬を染めながらも「提案?」と聞き返す


「私と同盟組みませんか?」


「え?…えっと同盟?」


急な展開に驚く春一

同盟といえば手が伸びる主人公の海賊アニメか現実ではふざけてたまぁに曖昧なものをつくるものだがとそれしか頭に無い春一は困惑して頭を抱える


「同盟というよりは協力関係といった方が近いかもしれませんね――」


「あなたは理想の主人公 私は理想のヒロインになるために互いに協力関係として同盟を結ぶ」


「なるほど…」


「どうですか…?悪い話じゃ無いと思いますけど…」


悪い話どころか今の春一にとってはとびきり良い話だ

断る理由なんて無いし 同盟を組んでしまえばさっき春一が言ったことも拡散されずに済む


「確かに悪い話じゃない……分かった同盟を組もう」


「はあ! 良かったです!…断られたどうしようかと…」


満開の笑顔を浮かべながらも不安を滲ませる倉見さんに春一は可愛いな…と思いつつも

冷静に判断する


「その代わり同盟の詳しい内容は後日話し合う…これが条件だ」


「え?…はい 分かりました!」


「よし…それじゃ――」


キーンコーンカーンコーン

何か言おうとした春一の言葉を食いぎみにチャイムが塞き止める 時計を見ると5時25分完全下校の5分前だ


「あっ…もうこんな時間早く出ますよ朝月くん」


「え?うん 今行く」


荷物を手早く纏めて倉見さんと

笑顔で教室を後にする…







ご閲覧ありがとうございました

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