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怪談  作者: ぱとん
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無人駅

 地方の鉄道会社で働いている運転手のAさんは、最近不思議な体験をしていた。


 田舎の鉄道の無人駅。そこでは2両編成の電車の前の車両だけ扉が開き、運転手が乗客の乗降を監視している。


 少し前から奇妙な客が乗るようになった。黒い帽子を目深にかぶり、黒いコートを着た黒ずくめの男性。無人駅から乗車しているのは確認しているのだが、電車から降りるのを1度もみたことがない。


 特に気にしてはいなかったのだが、会社の忘年会で何気なく改札担当の同僚に聞いてみたところ、そんな男は見たことがないという。ならば別の駅で降りたのかと、他の同僚に聞いても皆口をそろえて見ていないと言うのだ。


 とうとう気になりだしたAさんは黒い男がどこで降りるのかを確認することにした。その日は運よく男は1両目に乗ったようで、Aさんは電車が駅に停まるたびに男の姿を確認した。


 1つ、2つと駅に停まるが男が動く気配はない。しかし、何度も男を確認しているとなぜか違和感を感じ始めた。


 男の顔がわからない。


 確かに帽子を目深にかぶりコートの襟を立て、うつむいているとはいえ、少しは顔が見えてもいいはずだ。しかし、どれだけ注意深く見ても男の顔は見えてこない。


 不気味に感じたAさんだが、ここまで来ては後には引きたくない。


 終点前の最後の無人駅に到着したとき、これまで通り運転席から確認すると、男の姿がない。


 ホームを確認すると視界の端に黒いコートをとらえた気がした。ついに降りたのかと思い、そちらのほうを振り向くが誰もいない。


 おかしいと思ったAさんは周囲を見回してみたがすでに誰の姿もなかった。


 不思議に思いつつもホームでの作業を終え、運転席に戻ったAさんが見たものは、目の前の線路に落ちている黒い帽子とコートだった。


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