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怖くない怪談話 短編集  作者: 祭月風鈴
14/27

第14話 捨て猫の生涯

 田んぼの稲が青々と育つ季節に生まれた小さな命の物語。


***


 畦道の端っこに子猫が捨てられていた。

まるでカラスの餌になればよい……と言わんばかりに

草の中にポイッと放置されていた。

子猫が一匹で震えていると

飼い主の意向を破る男が通りかかった。

男は子猫を片手で乱暴に掴むと、ひょいと懐に入れた。

子猫はニャーニャー鳴きながら

男の襟元からやっと顔を出した。

それは子猫の居場所が決まった瞬間だった。


 やがて、その子猫は親猫になった。

何匹も産んでは育て、産んでは育てと繰り返す。

そうして老猫になる頃、男の死と入れ替わるように孫が生まれた。

猫は男の孫に寄り添い、遊び相手になった。

あまりに賢く、あまりに長生きするこの猫に

周囲の人間は『化け猫』と呼んだが

猫は平然と遊び相手を続けた。


 しかしある日、猫は男の孫の前から姿を消した。

人間の目が届かない所でひっそりと死んでいた。

だが猫の魂は天へ昇ろうとはしない。

なぜなら猫は、自分の命を助けた男の恩に報いる事を望んでいた。

 やがて年月が過ぎ、男の孫は人の子の親となった。

日々の忙しさに埋もれ猫を思い出す事がなくなった。

しかしいつか再び、その存在に気づくだろう。

猫の魂はいつも傍らにいて、今もずっと見守り続けている。



<終>


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