第1話 音
皆さんご存知のように、新築したばかりの家では柱が軋む音が時々鳴ります。
さて今回は、ある会社員の男性が友人達を呼んで開いた新築祝いの場が舞台。
酒を飲んで盛り上がっている席で鳴る音は…。
***
30代前半の会社員が自宅を新築した。
夜、彼は仲良い3人の飲み仲間を呼んで新築祝いをしていた。
ワックスが効いたピカピカのフローリングには、空になった缶ビールがあっちこっちに転がっている。
「その若さで新築するとは凄いねぇ!」
「バアカ! オッサンみたいな事、言うんじゃねーよ!」
「よぉ現金一括払い? オイラも金持ちになりてぇ~」
「バァァァァカ! ローンに決まってんだろ!」
「なぁ……さっきから気になっているんだけど、僕」
パキン!
「ほら、この音」
「新築だからね、柱が乾いて軋むんだって大工が言ってた」
パキン!
「それにしても耳に響くなぁ。 あ、俺イイ事思いついた」
「何を?」
「ポテチを耳に刺して耳栓!」
「ぶははは! オイラ食いたくねぇ、ソレ!」
パキン!
「あの……僕……この音、苦手だな」
「新築したばかりだから暫く鳴るんだってば」
「ところでよぉ、幾らした?建設費」
「ああ、大体……1千200万くらいだよ」
「げぇ! 俺、無理」
「オイラも無理ぃ!」
パキン!
「これでも、めっちゃ安いんだぜ。建築会社が専門で取引してる所から材料をまとめ買いしてるから」
「へぇ、何処よ。その会社」
「駅前の目立つ……」
「あ!オイラ知ってるソレ。緑色の壁の建築会社だろ?」
「そう! そこは全部の柱が半額でさ。だからその分、他の所を充実出来たんだ」
パキン!
「あ、悪い! 僕、用事思い出した……今すぐ帰るよ!」
「アア?!何だよ!朝まで呑むって言ったろ?」
「まだビール残ってるぞ!」
「オイラ達ともっと呑もうぜぇ~い!」
「本当に悪い! お先に」
パキン!
「何だアイツ……。酒、楽しみにしてたくせに」
「まあイイや。呑も!」
「あ、メール」
「彼女?」
「チゲーよ、アイツからだよ! 『一人で先に逃げてゴメン』だって」
「ギャハハ! 何アイツ~!」
「テレビつけろってさ。ニュース見ろだって」
『……調べに寄りますと、この建設会社は』
「おお調度やってる……おい、この家を建てた所じゃん」
「え?」
『殺人や自殺などがあった物件を取り壊した際に出た材木を、不当に再利用したとして……』
パキン!