表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

平穏な高校生活

バレンタイン

作者:

一応7作目です。書いた順番的にはかなり最初の方ですが。

「はぁー……はぁー……」


 手に息を吹きかける。あまり意味がないと分かっていても、つい吹きかけてしまう。


「はぁー……はぁー……はぁ」

(さくら)……お願いだから隣で溜息とかつかないでよ」

「うぅー」


 今日は2月14日。

 私も恋する乙女なわけでイベントに参加する側だ。


「緊張するなら、私が渡してこようか」

「そ、それはだめ!」


 自分で渡してこそ意味があるはず……と、私個人はそう思う訳で。


「なら頑張れ」

「う、うん!ありがとう、彩女(あやめ)ちゃん!」


 昇降口で別れ、自分のクラスに向かう。


「いつ……渡そうかな」


 なるべく早く渡して、早く落ち着きたい。


「よし!教室に入ったらすぐ渡そう!」


 廊下で1人歩きながら、そう意気込む。

 ただ、いきなり大声を上げたせいで注目の的になってしまった。




「あ、おはよう」

「おはよう」


 友達の挨拶を返しながら教室を見渡す。


「いない……?」


 いくら見ても教室内には見当たらない。


「いきなり失敗……」


 落ち込みかけ、自分を奮い立たせる。


「まだ朝だしね!これからこれから!」

「何を張り切ってるのか知らないけど、そこをどいてくれると俺は嬉しい」

「えっ?って、えぇぇえ!?手島(てしま)君!?」


 振り返った先にいたのは、目的の人物。まさか、向こうから話しかけてくるとは思いもしなかった。


「で、どいてくれないか?」

「あ、うん。ごめんね」


 手島君は私の横を通り抜け自分の席にすわる。

 渡すなら今なのでは?そう、心の私が問いかける。


「よ、よし!」


 手島君の座る席に向かい歩き出す。


「あ、あの」

「ん?あぁ、すまん用事なら後でにっしてくれ。宿題やらなきゃいけないんだ」


 手島君はその言葉通り、鞄から昨日渡されていた宿題を取り出した。


「そ、そうなんだ……」


 結局、この時間に渡す事は叶わなかった。




「あ、あの」

「すまん!移動教室だから」


「ちょっといい?」

「先生にお呼びがかかってて」


「今大丈夫?」

「悪い。友達に──」




 結果として渡せなかった。それも、見事な程に。

 まるで、避けられているかのように。


「はぁ……」

「だから、隣で溜息を吐くなって」

「だってー……」


 自分の鞄を見つめ、さらに落ち込みかける。


「まぁ……いいことあるさ」

「慰めになってないよ!」


 そして私はとうとう校門をくぐる。


「はぁ……このチョコどうしよう」

「食べちゃえば?」

「なんか、もったいない」

「なら私がもら──」

『おーい!!』


 チョコを取られる直前、校庭の方が声が聞えた。


「今、声が聞えた?」

「部活の連中じゃない?それより、そのチョコちょーだい」

「だから、嫌だって」


 このチョコを渡すことは諦め、鞄にしまう。


「じゃ、帰りま──」

『おーい!まってくれー!』

「んー?」


 今度は声が確実に聞こえたので、後ろを振り返る。


「はぁ……はぁ……」


 走ってきたのは手島君だった。


「やっと追いついた」

「どうしたの?」


 何故、私を追いかけてきたのか意味が分からなかった。


「いやさ、なんか俺に用あったんだろ」

「そのために?」


 正直、驚いた。まさか、追いかけて来るとは。


「で、なんの用だったんだ?」

「えーっと……」

「はら、早く渡しなさいよ」

「う、うん」


 私はさっきしまったチョコを取りだす。


「あの……これ」

「チョコ?」

「うん。今日、バレンタインだから」

「あぁ、そっか」


 手島君は顔を赤くしていた。


「あんがとな」

「うん!」



「良かったじゃない」

「なんか……緊張してた私がバカみたい」

「そんなもんでしょ」

「そんなものなのかな」

「きっとね」


 2人で帰路を歩く。


「あ」

「どうした?」

「雪」

「ん?あー、本当だ」


 2人揃って、空を見上げる。


「今日、寒かったしね」

「だね」


 そして、また歩き出す。


「ねぇ」

「なに?」

「告白も出来るかな」


 チョコを渡せたのだからきっと……。


「桜の気合次第じゃない?」

「だよね」


 後ろを振り向く。そこには、雪のせいで出来た靴跡が。


「来年は、その靴跡が桜とあいつならいいね」

「そう、だね」

「やる気ねーな」

「ち、ちがうもん!」

「はいはい」

「だーかーらー」


 でも本当に……来年は……──。

季節感?知りません(笑)

長編を上げるため、途中で書きやめちゃった短編を全て上げにかかっています(笑)

多少の変更をしながら、キャラに名前を付けて。

感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >「来年は、その靴跡が桜とあいつならいいね」 彩女さんの人となりを表している様ないいセリフですね。 手島くんの口調や行動で彼が好人物だと伝わるのは良いです。 [一言] 冒頭の桜さん、あれ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ