第7話ギルドカード
受付に戻り、大和が魔法適性を書いてもらった紙を提出すると、受付のお姉さんは「Cランク…だと…」とつぶやいて固まったが、すぐに営業スマイルに戻った。
(こんな子供がCランク?イシュラが試験管をやると、E以外は絶対につかないはずなのに…まさかこの子将来有望?)
イシュラが判断したなら不正は絶対にない。だから目の前の少年がイシュラに認められたのは間違いなかった。
(しかも魔法適性が4つ…剣士で登録するのは間違いじゃないかしら?これ、大魔術師でも4つ持ちなんてそうそういないのに)
「あのー、笑顔で固まってるんですか?」
「――ああーすいません!では登録をするためにギルドの一員であることを証明する証、ギルドカードをつくりますので、血を少しいただけますか?」
「血?なんでですか?」
「血は人の全身に魔力を通す働きがあるため、個人を正確に登録するには血を使用した登録が一番なんですよ?」
「…わかりました。どのくらいですか?」
「指先を少しナイフで切るくらいです」
そう言うと受付のお姉さんはナイフを取り出し、刃先を火で炙った。
「では少し痛いですよー」
そう言うと、大和の親指の腹を少し血が出るくらいに切った。
「っ痛った!」
「はい暴れないでくださいねー」
そう言うと、何か半透明な板の上に血を垂らした。すると、その血が板に吸い込まれていってしまった。
「では少しお待ちを」
そう言うと受付のお姉さんは奥に行ってしまった。予想していたよりも長い時間待っていると、受付のお姉さんが帰って来た。
「これがあなたのギルドカードになります」
そう言って差し出してきたのは半透明なカード。その中には黒色で文字が書かれており、「所属ギルド ブレイブ ランクC 名モチヅキ姓ヤマト」と書かれていた。あと右隅の方に青と緑と灰色と黒丸もついていた。イメージ的には魔法特性かなと思った。しかし、よく見ると
(あれ?この書き方だと俺の苗字がヤマトで、名前がモチヅキじゃ?)
そう思って俺は、自分の名前を日本風に名乗っていたのを思い出した。
(あー姓名が逆ってやつね。これは気づかなかった。まあいいや知らんかったし。)
別に問題ないだろうと考え、このまま登録することにした。今までの通りにに名乗る方が楽だし。
「ちなみに、そのカードは自分の魔力に溶け込ませられるので、消えろと念じたら消えますよ」
「え?」
軽く消えろ?と命じたらカードが消えた。うわあああ戻ってこいと思ったら手元に戻ってきた。なにこれすごい便利。
「なくしたり、壊れたり盗まれるということは基本的にないので安心してください。
また、ギルドカード自体に魔法を付与してありますので簡易の地図や、依頼の登録、討伐記録などもできます。また、お互いのカードを登録しあえば文字を制限はありますが送れます。」
なにこれ、通話できない携帯位便利。
「カードの説明もしましたので、最終確認をします。本当にギルドに登録しますか?」
「…?はい登録しますよ?」
「ギルドに登録すると緊急依頼の際は強制的に駆り出されます。また、依頼の危険性かかわらず怪我や死亡に対する保険もありません。それでもよろしいですね?」
「はい、お願いします。」
俺は迷わなかった。今のところほかに生きていく方法も知らないし、危険なことを避けてもしょうがないと考えていた。……正直、決意は軽すぎるとは思うけども、重みが深まるような人生送ってきてないし。
「では登録します。それではこれより、モチヅキ・ヤマトさんをギルド【ブレイブ】の一員として認めます!」
「ありがとうございます!」
俺は人生で初めての達成感を得たかもしれない。しかし、ギルドに登録したて終わりじゃない。これからがスタートなのだ。だから俺は依頼を受けよう。そう決めたのだが…
「依頼って今から受けられますか?」
「…受けられますが、もう日も暮れているので明日にしていかかでしょうか?」
外を見ると黄昏時だった。太陽が赤く大きい。この太陽は地球のものととよく似ていた。
俺はとりあえず、宿に戻ることにした。
宿に戻り、自分の部屋に入ると荷物と書置きがあった。
「ヤマトさんへ、私は商談が入ったため、テンカの街を出ます。その連絡をしにギルドへ行ったのですが、気を失っているという事だったので、宿を7日分取って置き、7日分の服と生活費を置いていきます。ご飯は宿で3食出ますので心配しないでください。それでは、ギルドでの活躍をお祈りしています ショニ」
「――ショニさん!!」
俺はもうショニさんに足を向けて寝れないなと思った。俺は早速ショニさんの置いていってくれた荷物から着替えを取り出して着替えた。手作りの服特有のごわごわ感はあるが、特に問題はない。俺は宿の食堂に行って、食事ををすることにした。
「兄ちゃん!なにを食うんだい!」
食堂の店員の兄ちゃんが威勢のいい声で注文を取りに来た。だが俺はメニューの料理が分からず、苦戦していた。
「…ナストカゲの暗黒蒸しとかオオガエルウオのテリーバーンとかってなんだ?」
「おお、ナストカゲの暗黒蒸しはうまいぜ!暗黒蒸しなんて高級料理はここら辺でもうちだけだぜ!」
「…じゃあそれでお願いします」
暗黒蒸し…想像がつかない。というか自分にとって料理とは、病院で出てきたトレイの上に乗ってる小分けされた柔らかい病院食のイメージしかなかった。
そもそも、地球には暗黒蒸しなんて料理がないことを知らなかった。
運ばれてきた料理は、紫のナスのような体型をしたトカゲが、黒い煙をまとって出てきた。
「さあ!たんと食べな!」
「…どうやって食べるんですか?」
「このナイフで肉を切って、フォークでぱくっと」
カチャカチャと音を立てながら、なんとか切れた。それを恐る恐る口に運ぶ。すると「…おいしい!」
パリパリとした皮を噛むと、油というよりは水に近い旨みの汁が溢れ出た。今まで食べたどんな肉よりもジューシーで、噛めば噛むほど旨みが出る。こんなにあまりの旨みに胃が驚いているように思えた。…単に病院食に油が少なく、本当にいが驚いているだけなのだが。
「そうだろ!ナストカゲは油がとてもサラサラしててまるで水みたいだろ、しかも暗黒蒸しだからその油が失われていないのに味が染み込んでいる。まさに芸術品だ!」
兄ちゃんはとても嬉しそうに料理について語ってくれた。その後、兄ちゃんに料理のことをいろいろ聞きながら楽しい食事をして、満腹になった俺は部屋に戻ることにした。
部屋に戻った俺は、ソファーを組み合わせて作った簡易ベッドが片付けられているのに気づいた。しぶしぶまた組み直すと、俺は横になった。
(明日は依頼を受けてみよう。それと時間があったらフィンネに魔法の事を聞いてみよう。)
他にもいろいろ考てはいたが、あまりの睡魔と疲れで考えがまとまらないのでねることにした。今日はいろいろありすぎたからな。
こうして俺の異世界生活1日目が終わる。
ついに1日目が終わりました!