表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は突然に(仮)  作者: ルミナス
第1章 大和とギルドと異世界
6/25

第5話人生初の真剣勝負

 俺は人生で初めて人と戦うことになった。目の前の試験官を見ると、青色の髪に鋭い目つき、漫画のクールなライバルみたいな顔つきをしていた。今までの病院での生活では喧嘩やテストなんてものは必要なく、ただ目的もなく生きているだけだった。そんな俺は弟が持ってくる漫画や小説の中のファンタジーに憧れた。剣や魔法を使い、ライバルや刺客を倒して世界を救うというものだ。向こうでの人生に不満はなかった。家族は優しく、医者の先生や看護婦さんも俺を気遣ってくれ、数は少ないけど友達も出来た。だけど俺は今、憧れていたファンタジーのような世界にいる。魔法はまだ見ていないが聞いたことも見たこともないような言葉や文字に、喋る剣もあるらしい。それに自分の体で動くこともできるようになった。――だから俺はこの世界で幸せに生きたい。そのためにも目の前の試験管に自分の力を認めさせて、ギルドに登録しなければ。初めて人と闘うのは怖いし、手に持っている剣は人を傷つけるだろう。でも、やる。俺は覚悟を決めた。


 大和は背中から2本の剣を抜くと、腕を伸ばし2本の剣先をイシュラに向けた。そしてそのまま、高速で突進した。

(は?)

イシュラは目を疑ってしまった。初心者にしてはひどい構えを見たと思ったら信じられないスピードで突進してきたのだ。

「うおおおおおおおお!」

大和が吠える。戦い方など知らない彼は、とりあえず突進することに決めたのだった。

イシュラは剣で受け止めるか迷い、素直に避けることにした。あの勢いの攻撃を受け止めるには相手の力量が見えない。だから様子を見ることにしたのだ。だがイシュラが避けようと右に飛んだ時に、大和は左に剣を振りかぶっていた。

「ぐっ…」

イシュラの左腕を軽く切り裂いたが、動きを止められるほどではなかった。

(なんてやつだ…)

イシュラは手加減をしているわけでも油断をしている訳でもなかった。目の前の男の常識外れな動きと動体視力に驚きはしたが、それだけの相手なら過去に何度も戦ってきた、だが

(身体能力も信じられないが、攻撃に殺気がない…一体どういうことだ?)

大和の突進から振りかぶりまでの動作には一切、殺気がなかった。人は攻撃をすると気には大なり小なり殺気がこもる。だが、大和にはそれが一切無かった。

(この構えを見る限り暗殺剣を言うわけでもない、なら殺気を消す魔法?いやそんなのは聞いたこともないし、そもそもやる意味が薄い…いや現に俺に効いているんだ。俺も力を出し惜しみしている場合じゃないな。)


(やった!攻撃を当てられたぞ!)

大和は内心喜びでいっぱいだった。相手が横に飛びそうだったから剣を振ったら当たったのだった。これなら行けると思い、次の攻撃に移ろうとイシュラの方向に体を向けると、イシュラの体が緑色に光っていた。足元には魔法陣のようなものもあり、とても神々しかった。

(これが魔法か?いや肉体強化以外の魔法は使わないはず…まさか)

「大地と水よ!俺に力を!肉体強化魔法「命の芽吹き」!」

――肉体強化魔法 命の芽吹き。土と水の魔法を組み合わせて樹木の力を生み出し、自分にその力を付与して強化する魔法。本来は大掛かりな詠唱が必要な魔法だが、イシュラは効果を抑える代わりに、発動までの時間を限りなく短くしている。

「これからが試験の本番だ」

イシュラが剣を構えると、大和の方向へと走っていった。

「呆けてる場合じゃない、うおおおお!」

大和は先ほどのように剣を突き出すと、イシュラを向かい打つためにまた突進をした。

「同じ戦法が通じるとでも思ったか?」

突然、目の前のイシュラの姿がブレた。

「な、なに?」

人生で初めて人が消えるのを見た。漫画だとこういう場合は後ろに回り込んでいる。なら、と思って後ろを見たがイシュラはいなかった。

「流石に後ろに回り込むほど速度は出ないよ。」

イシュラの声が聞こえた瞬間、大和の意識が無くなった。




(やばい、つい本気で振りかぶったけど生きてるか?)

先程イシュラがブレた原理は、大和の剣の構え方によって生まれる死角に、自分の体を潜り込ませる。その動作が早すぎてブレて見えたのだ。

(…息はあるな。一応試験としては俺に傷をつけた時点でCは確定だな。あとは…)

イシュラは闘技場の入口の方を向いた。そこには忍者のような服装をした黒い女がいた。

「エレナ!こいつを医務室へ運んでやってくれ。」

「いいけど…あなたにしてはやりすぎじゃない?最初ふいを突かれたのが怖かった?」

「そうとも言えるな。最初の俺の攻撃に対して殺気を感じられなかったから、何かあると思ってつい本気を出しちまった」

「はあ?殺気が感じられない?」

「ああ、もしかしたら天性の暗殺者かもなこいつは。」

イシュラはそう言うと闘技場を出て行ってしまった。小柄な少年に向かって思いっきり剣を振りかぶったのだ、たとえ刃がついていないとしても居心地が悪かった。

(この子…おもしろそうね。)

エレナは治療魔法を大和にかけると、医務室へ連れて行ったのだった。


5月18日 目の前の試験官を見ると、青色の髪に鋭い目つき、漫画のクールなライバルみたいな顔つきをしていた。とイシュラの見た目に関しての追記をしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ