Ⅱ
4月27日
またあの少年と出会った。
ーー
ー
「ニア」
「‥‥?‥れび?」
ニアはカーペットが敷かれた部屋で他の子供たちと本を読んでいた。
様々な色の頭が並んでいる。
こうして見るとカラフルだなと思う。
子供部屋なのか、此処はいささかメルヘンな装飾が施されている。
主に天使の切り絵が至る所に貼ってあった。
その中で本を読む子供の姿は、微笑ましく見える。
「何読んでんだ?」
幼児向けの絵本だと思い覗き込んで、絶句した。
広がるのは小さな異国の文字の羅列。
見たことのない複雑な図面。
明らかに子供向けではない。
「読めるのか?」
「うん」
周囲の子供を見ても同じような本を読んでいる。
しかも目つきが尋常じゃない。
食い入るなんて、そんなレベルじゃない。
「何でそんな本読んでんだ?」
「だって」
「よまないとしんぢゃうから」
え‥‥。
ニアの口から出た単語に耳を疑った。
しんぢゃうから。
死んじゃうから?
何を言ってんだ?
「‥誰かにそう言われたのか?」
「せんせえに」
それだけ答えるとニアは本に目を落とした。
それから何を聞いても、ニアは答えてくれなかった。
あの本には、何が書かれているのだろう。
週末、外国語を専攻している知人に聞いてみよう。
そう思い、俺は密かに本のタイトルをメモした。