Ⅱ
2人分の靴音が廊下に響く。
銀灰色の扉の奥は
内装は白い壁と床は扉の外と同じだった。
しかし、決定的に違うことがあった。
「窓が‥」
前を歩く女性は、俺が言わんとしていることが分かったのか無言で頷いた。
そう、ここには窓が全くなかった。
そのせいか、息苦しく感じる。
延々と続く白い廊下に頭がおかしくなりそうだ。
女性の話も危うく聞き逃してしまいそうなくらい、ここは正常ではいられなかった。
「では、今日からよろしくお願いします」
女性はそれだけ言うと廊下の奥に消えた。
宿直室はこれまた無機質という言葉が似合う場所だ。
白いベッドとアルミ製の事務机、ロッカーがある部屋にキッチンとシャワールームが隣接しているだけ。この部屋にも窓はない。
ひとまず荷物を下ろし、ベッドに寝ころんだ。
「はぁ‥」
無機質な外装。
無機質な部屋。
無機質な、人。
「‥‥俺、やっていけんのか?」
当然、答えは返ってこない。
初日から不安なことばかりだ。
とりあえず、見回りの時間までのんびり構えようか。
私は寝ころんだまま目を閉じた。
ーーーー
ーーー
ー‥‥
「はっ!」
寝過ごした!?
慌てて時計を見ると見回りの時間から10分過ぎている。
初日から寝坊とは、シャレにならない。
口から垂れていた涎を拭い部屋を飛び出す。
「ぉわっ!?」
ドアを開けた瞬間、何かとぶつかった。
見ると少年が床に倒れている。
「あ、ごめんな!怪我ないか?」
少年を助け起こし、その容姿が普通とは違うことに気づいた。
10歳くらいだろうか。肌は陶磁器のように白い。肩まで伸びたストレートの髪は緑。大きく見開かれた目は紫色に光っていた。
茶髪に薄緑色の目を持つヨハネス国の人間ではないのは確かだ。
此処の子供なのか、患者服を身に付けていた。
「‥‥」
少年は無言で立ち上がり廊下を走っていってしまう。
「外国人‥か?」
そう自分を納得させ、俺は慌てて仕事を始めた。
ーー
ー
仕事内容が簡単なのは助かるが
この無機質極まりない空間はどうにかしたい。
それにしても、あの子はどうしただろうか。
明日は寝坊しないよう、今日はここまでにする。
実際の時代では有り得ない技術が出ますが、突っ込むなんて無粋な真似はご遠慮くださいな