幸せな朝食 【月夜譚No.421】
掲載日:2026/09/27
パンの上でチーズが蕩ける。同時に香ばしい匂いが鼻腔を擽って、ぐぅと腹が空腹を訴えた。
少女は小窓からトースターの中をそわそわと覗いて、チーズに少し焦げ目がついたところで扉を開けた。ふわっと熱風が肌を撫で、美味しそうな香りが濃さを増す。
火傷に気をつけつつトーストを皿に移し、テーブルに急ぐ。席に着くと同時に両手でトーストを掴んで、口一杯に頬張った。
サクサクの焼き目に、とろりとしたチーズ。腕を伸ばすと淡い黄色も伸びて、思わず笑みが頬を緩めた。
咀嚼しながら窓の外に目を遣ると、庭に置いた鉢植えの朝顔が朝陽に照らされている。まだ花をつけているそれを見て、少女は夏休み前の学校の様子を思い出した。
今日から新学期が始まる。難しくなる授業を思うと少し憂鬱だが、友達とまた毎日顔を合わせられるのは嬉しいことだ。
これを食べ終わったら、着替えをしなくては。そう考えながら口に広がる幸せの味は、心をも温かくするようだった。




