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異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話  作者: 一優梨


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高校生2

入学式から数日。オリエンテーションから通常の授業へと切り替わり、課題に追われながらも新しい生活に身をおくことに慣れてきた頃、新しいクラスは、まだざわざわと落ち着かない空気に包まれていた。

段々とクラスにグループができ始め、誰と一緒に昼を食べようか、放課後どこに寄ろうか、そんな話題であちこちが盛り上がっている。

そんな昼休み、俺は日直の仕事で授業終わりの黒板を綺麗に消していたら、後ろから名前を呼ばれた。

その聞き覚えのある声に嫌な予感がする。


「これ、今日宿題回収するんだろ。俺の分よろしく~」

「は?それ朝に集めたやつなんだけど」


「なに、文句あんの?」


肩に手を置かれ、まるで逃げるなよとでもいうように睨まれて思わずため息が出そうになる。

後ろには変わらず有馬を慕う女子たちが群がっていた。


「キャハハ!朔くんこわぁーい。月島がかわいそうだよ?」

「いいんだよこいつにはこれで」


なんだよそれ!

僕は講義の意味を込めて軽く有馬を睨み上げた。


「まあでも確かに、地味で真面目なくせつまんないしぃ~、男としての魅力とか皆無だよねぇ」


となりの女の子が意図して作っているような甲高い声で喋る。

しかも僕の頭のてっぺんからつま先まで品定めするような目線に居心地悪く感じた。

僕はさっさとプリント受け取り、肩に置かれた手をやんわり払い除け、黒板消しを動かす手を再開させる。


「おっと手には触れてくれるなよ」

「きもっ」


有馬がわざと気持ち悪がるように僕が触れた手を服で拭いて見せると、周りの女子も同調する。


無視だ無視!こんなのと関わっても価値がない。

それより、このおじいちゃん先生、筆圧濃いからチョーク文字消すの結構疲れるんだよな。


「月島なんかほっといてさ、朔くんは私たちと一緒にお昼食べよ?」


ーーーまだなんか続いてるよ。


1人の女の子が有馬の腕に手を絡め、肩に頭をこつんと乗っけて甘えるようにくっついた。


ーーーうわ、すごいな、有馬ハーレム。さっさとどっかいってくれ。


僕は冷や汗を流しながら鈴やんたちのいる席に目を向けた。

助けてくれ!て意味を込めて見てみるが、2人は僕の視線に気づいても呑気に席に座りながら手を振ってくるだけだ。

全然伝わってない!あんなに離れてたら会話は聞こえないかもしれないけど、この僕の必死な表情でなんとか伝わってくれ!


「真白ちゃん?」


有馬が不思議そうに首を傾げるが、僕の視線の先にいる2人を見て眉間の皺がよる。

この顔をするときの有馬はさらにめんどくさくなるときの有馬だ。

でも、幸いなことに有馬を女子たちが囲ってくれているおかげで有馬は動きが取れない。

その隙をついてそそくさと鈴やんたちのところに戻ることができた。


「また絡まれてたのか、災難だったな」


そう言いながら唐揚げを口に突っ込む鈴やんは身長が低いのもあってひまわりの種を口いっぱいに含むハムスターみたいだ。


「俺たちも有馬にすっごい睨まれた気が」


佐藤が自分を守るように腕を前にクロスさせて体を庇うポーズをとる。


鈴やんと佐藤と僕の3人は気が合うようでこの短期間でかなり打ち解けた。


「僕の苦労をわかってくれるのは君たち2人だけだよおおお。彼女いない歴イコール年齢同盟として一緒に強く生きような!」

僕は鈴やんの手をとって輝かしい笑顔を向ける。

「悪いが俺は即刻彼女を作るって決めてるんだ。そんな同盟に加入してたまるか!」

ぷんぷんと怒り出す鈴木やんだが、ハムスターのままだからか怖さのかけらもない。

まださっきの有馬たちの方が恐ろしかった。


「いきなりの裏切りだ!」

僕はわざとらしく顔を覆って泣き真似をする。


すると、横でジュースを飲んでいた佐藤がブフォッと吹き出した。


「ははっ、お前ら漫才コンビかよ。月島がボケ倒して、鈴やんがすぐ裏切るっていう最悪のタッグじゃねえか」


「最悪とはなんだ!俺は彼女を作ってお前らより一歩先を行く男になる!」

「はいはい、言うのはタダだからな」

佐藤は肩をすくめつつも不貞腐れた鈴やんの頭をよしよし撫でる。


「ちょっと佐藤、君も同盟入らない?」


僕が藁にもすがる思いで振ると、彼は即答した。


「遠慮するわ。俺は彼女作る側に回るから」

「佐藤は俺の味方だってさ、残念だったな月島」

「うわああああ、みんな敵だぁああ!」


3人の笑い声が教室に響き、妙に心地よい空気が広がった。


ふと誰かの視線が後頭部に刺さった気がして振り向いた。

そこには他の男子グループとお昼を食べ始めた有馬がいて目が合うと睨まれた気がした。

さっきの女子たちは一緒にいないのでハーレムで過ごすのはやめたんだなと思った。

でも、なんで睨まれたのか全くわからない。



答えの出ないことをぐるぐる考えてもしょうがないな。

有馬のあの態度は今に始まったことでもないし。





お昼を食べ終えたら次は体育の授業だ。

空になったお弁当箱を片付け、体操着に着替えようと机の横のフックに手を伸ばすが、掴むものがなくスカッと空中に手が彷徨う。

あれ、ちゃんと持ってきたはずの体操着が見当たらない。



「朝見た時は絶対あったのに」

試しに鞄の中も見てみるものの教科書とノート以外なにも入っていなかった。


「なんだ、体操着忘れたのか?」

佐藤も一緒になって僕の鞄を覗いてくる。


「そうみたい。体育の授業の先生って確か、怖いって有名の野球部の顧問なんだよなぁ」


頭の後ろに手を組んでどうしようかと考える。

今日は有馬に目をつけられるは女子から威圧されるわ体操着忘れるわで厄日だ。


「そうだ!2人で一つの体操着を着る、日本の伝統芸能、二人羽織なんてどうだろう」

「そんなの2人で怪我して終わりだろ」


だめだ、鈴やんは一旦置いておこう。


欠席するか、誰かに体操着を借りるか、だな。

でも誰に?

まだ入学したばかりで他クラスに知り合いなんていないし、このクラスに体操着2枚持ってるやつなんているかどうか。


「おい、1ヶ月も経ってないのにもう忘れ物したのか、不真面目だな」


そう言って声をかけてきたのはもちろん有馬だ。

隣の佐藤は有馬を慕っているから、眼がキラキラと輝き出している。


ーーー有馬め、もっと別の言い方があるだろ


しかし、内容は事実だから、悔しいけれど、反論できない。


「俺、予備も含めて2枚持ってるけど、どうしてもっていうなら貸してやるよ」


有馬が得意そうにそう言うけど、良いおもちゃを見つけたとでも言いたげなその表情がなんか裏がありそうで。

正直、借りたいとは思えなかった。


「イヤ。ダイジョウブダヨ。今日は欠席するから」

「大丈夫なわけないだろ、ほら、いいから借りろ」


半ば強引に押し付けられた体操着が床に落ちる。

有馬はそのまま更衣室に行ってしまい戻ってこなかった。


鈴やんが小さな声で、「カ◯タじゃん」とつぶやいたのが聞こえてしまったけれど、とりあえず今は何も聞かなかった事にしておこう。


有馬が僕に体操着を貸してくれるなんてどう言う風の吹き回しだ。疑問に思いながらも床に落ちた体操服を拾い上げ、素直にありがとうと言えばよかったと今更ながらに思った。


「なあ月島。有馬ってさ、お前のこと嫌いじゃないんじゃね?」

「は?」


佐藤が唐突にそんなことを言うので思わず声が裏返った。


「いやいやいや、どこをどう見たらそうなるんだよ」


「だってさ。普通、嫌いなやつに体操服を貸すか?」

佐藤はジュースのストローをいじりながら、のんびりした口調で続ける。


「さあ?あいつの気まぐれとか、ただの自己満足じゃないの」


佐藤はにやりと笑い、肩をすくめた。

「まあ俺にはそう見えるってだけだ。お前がそう思わないならそれでいいけどな」




180センチ以上あるという有馬の体操着を163センチの僕が着る。

上着の丈は腰やお尻が余裕で隠れてワンピースみたいだ。

ズボンを履けば手を離した途端にすとんと地面に落ちる始末で、ゴムを極限までキツく調節させてもらった。

僕の男としてのプライドがズタボロだ。

ぶかぶかの体操着を鈴やんや佐藤に突っ込まれながらも背の順に列に並んで準備体操を始める。


「いーち、にー……」


声を揃えて前屈すると、まったく話したこともない前のやつが声をかけてきた。

その目は心なしか僕の着ている体操着の胸元、有馬と書かれたネームに注がれている気がした。


「そのぶかぶかの体操着、朔のか。なんでお前が着てるんだよ」


「貸してもらったからだけど」

「言いがかりも大概にしろよ。朔が嫌ってるお前に貸すわけないだろ。どうせ貸してくださいって泣きついたんだろ」


ここ最近で理解したが、佐藤が言っていた通りこの学校には有馬と仲良くなりたくて必死な男たちがいるようだ。

だからって有馬に気に入られたい一心で僕に突っかかってくるのは人として良くないと思うが。


「別に、着るもんないから借りただけ」


僕は喧嘩越しの相手に淡々と返した。


「似合わねえから脱げよ!サイズ合わな過ぎで笑える」

「体操着に似合うも似合わないもないだろ」


声色は冷静なまま。でも、相手を睨むような目だけは外さなかった。 


「あ?偉そうに口答えするんじゃねーよばか。自分の立場分かってんの?ここは高校生の来る場所で小学生が来るところじゃねえんだよ」


少し空気が詰まったその瞬間、いつのまにか近くに来ていた朔がニヤリと口を挟んでくる。


「まあまあ落ち着け。確かに真白は小さくて小学生みたいだけどさ」


それは止めるどころか、からかいを正当化するような言葉だった。


「……っ」

僕は唇を噛んだ。朔のその笑いがあるだけで、周りも「冗談だからいいだろ」って空気になる。

でも当の僕にとっては冗談でもなんでもない。


「おい、やめとけよ。真白だって困ってんだろ」

近くにいた鈴やんが割って入ってくれたおかげで、なんとかそれ以上は広がらずに済んだ。

けれど、クスクスと笑い合う声と、朔のあの顔が、ずっと胸の奥に残った。




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