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異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話  作者: 一優梨


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高校生

時の流れは早いもので、僕は春から高校生だ。

電車で15分そこから歩いて30分といった家からまあまあ遠い場所にある高校に通うことになる。

中学の時とは違って知ってる顔ぶれでなくなるのは少し寂しいけれど、新しい人間関係が築けるようになると思えば期待に胸が膨らんだ。それに、あの朔ともおさらばだ。やっと誰からも嫌味を言われることのない、自由で朗らかな学生生活を送ることができる!


と思っていたのも束の間、入学式中に行われる新入生一人一人の名前呼びで、僕がよく知る名前が呼ばれた。

いや、まっだ判断するのは早い。

同姓同名の別人という可能性に賭けてみるが、見覚えのある後ろ姿に聞き覚えのある声。


ーーー嘘だよなぁ?


期待に膨らんでいた胸がしわしわと萎んでいく。入学式が終わって僕たち新入生はぞろぞろと各クラスに戻された。

「あ、朔くんだ!」


女子の誰かの小声が教室に広がると女子全員の目線が朔に吸い寄せられる。

同じクラスになれたと弾んだ声がそこらじゅうから聞こえ教室全体がざわざわし始めた。


ーーーうわあ、あいつと同じクラスだ


僕はこれからも変わらない学生生活を送るかもしれない憂鬱に、あからさまに落胆して席についた。

にしても、朔は中学の頃よりも騒がれている。

まるで、テレビとかで観る売れっ子アイドルのような騒がれ方だ。


「あいつってそんなに人気者だったんだな」


思わずそう呟くと、僕の声が聞こえたのか前の席の男子がぐるりと振り返って目が合う。


「当たり前だろ。中学で陸上日本1位!新聞でも将来が期待されるアスリートって取り上げられてさ、おまけにあの整った顔面だろ、ここら辺ではみんなが知ってる。女子が喜ぶのも無理はない!」


「ふーん」


ーーー僕は1番近づきたくないけどな


心に思ったことが出ないように適当な相槌を打った。


「なんだ、そんなに興味がなさそうだな。まあ、正直羨ましいもんなぁ。俺も来世ではあんなイケメンに生まれてぇ」

「そうか?俺はあの笑顔胡散臭いと思うけど」


そう言って腕を組むのは左の席に座る男子だ。


「有馬は女子の間では王子様みたいなもんだ。お前に勝ち目はないぞ」

「そうと決まったわけじゃないだろ!俺はまだ戦える!モテモテになって彼女の1人や2人作るんだ!」


左の子の意気込む姿にさっきまでの憂鬱な気分が薄まり自然と笑みが溢れる。


「いや、まずは一人作れよ」

「そうそう。二人とか夢見すぎだって」


僕と前の席の子で同時にツッコミを入れると、彼は大げさに机を叩いて抗議した。


「は?お前ら、夢を語る自由くらい奪うなよ!高校デビューってやつを見せてやんよ!」

「おお、口だけは立派だな」

「立派なのは口だけってやつだな」


また二人で笑うと、男子は「くそっ」と頭をかきながらもどこか楽しそうだ。


ーーーなんだ、こういうやり取り、悪くないな。


中学の時は僕が仲良くなれそうな人がいても、朔が邪魔してまともに友達が作れなかったから、こうやってクラスメイトと話す機会があるのは新鮮だ。


「俺は佐藤佑月、よろしくな」

前の席の子がニカッと歯を見せて笑う。

その人懐っこそうな笑みに好感が持てた。


「俺は鈴木辰巳だ。中学では《《すずやん》》って呼ばれてたから気軽に《《すずやん》》って呼んで!お前は?」


そう言って2人が僕の方をみる。


「僕は、月島真白。よろしくね」


「「よろしく」」


鈴やんと佐藤の声が重なる。

入学初日に仲良くなれそうな人が2人もできたことに内心喜びに震えた。



「なあ月島、お前はどうなんだよ」

「え?」

「彼女とか欲しいだろ?高校入ったんだし」


鈴やんから突然の矛先に面食らって、思わず言葉を詰まらせる。


「……別に、今はいいかな」

「は?嘘つけって!この年で興味ないとかありえねえだろ」

「そうそう、隠してんだろ。どうせこっそり誰か狙ってんじゃないの~?」


二人がからかうようにニヤニヤ寄ってきて、僕は慌てて首を横に振った。


「ち、違うって!ほんとにそういうのはまだ……」

「おーい、顔赤くなってるぞ~」

「やっぱ図星じゃん!」


からかわれながらも、どこか居心地が悪くないのは不思議だった。

少なくとも、朔とやり合う時よりは。


朔は1番右で前から2番目の席に、僕は真ん中からちょっと後ろの席だった。


「はいはい、じゃあ出席番号1番から自己紹介お願いします」

担任のおじいちゃん先生が指示を出すと順番に簡単な自己紹介が始まる。


「次、出席番号2番、有馬朔さん」

「はい、港中学から来ました。有馬朔です。よろしくお願いします」

朔が喋り始めると周りから黄色い歓声が上がり、女子がいろめき立つ。

言っていることはみんなほとんど変わらないのに。

なんだこの神格化した有馬朔は。

中学ではもっと人間として扱われてたぞ!

「次、出席番号16番、えーと、月島真白さん」

「あ、はい」

考え事をしていたらあっという間に自分の番が来て慌てて立ち上がる。

「月島真白です、港中から来ました。これからよろしくお願いします」

一礼してから椅子に座ると、すかさず佐藤がすぐに振り向いて話しかけてきた。

「お前、港中ってことはあの有馬朔と同じ中学だったってこと!?」

「・・・そうだけど、」

キラキラした目で見られて狼狽える。


「いいなぁ!同じ中学とか、めっちゃ近くで有馬のこと見てこれたってことじゃん!」

「……いや、別にそんな大したもんじゃないけど」

否定したつもりなのに、男子の目はますます輝きを増していく。

「うわ、すげぇな!俺、友達に自慢できるわ!有馬と同じ中学のやつ知ってるって!」


なんで僕が自慢の材料になるんだよ。

心の中でため息をつくけれど、教室のあちこちからも同じような視線が向けられている気がした。

僕はなんとか引き攣った笑顔を作ってその場を乗り越えた。


まあでも嫌なら関わらなければいいだけだし、向こうももしかしたら中学校の時みたいな絡み方はしてこないかもしれないし。


そう思っていたけれど、その小さな希望は朔がこちらに歩み寄ってきて、教室中に聞こえる声で僕の名前を呼んだ瞬間、音を立てて崩れ去った。


「なんだ、お前もいたのか」


朔がわざわざ僕の机に来てめんどくさそうに言う。

女子の目線まで引き連れてくるものだから居心地が悪い。


「そっちこそ、なんでいるんだよ」


思わず眉をひそめて朔を見上げた。

朔は僕より頭がいいのだからもっと偏差値の高い高校を選んでいると思っていた。

それなのに、この高校にいるなんて。


朔がわざとらしいため息を吐く。


途端に、教室の空気が一瞬で変わった気がした。さっきまで朔に向けられていた黄色い歓声が、今度は僕に向けられた好奇心と探るような視線に変わる。


(……最悪だ。注目浴びたくなんてないのに)


朔はわざとらしく肩をすくめて、いつも僕にする不機嫌そうな顔を浮かべた。


「別に、お前が中学ではあんなに馬鹿だったのに、なんで俺と同じ学校に入れたのかって気になってな」


その声音にざわり、と周りが笑った。


「なんだよそれ」

思わず立ち上がって朔を睨みつけるが、朔は怯んだ様子もなく、ただ鼻で笑った。


「なにそれ、自分の頭の良さを自慢したいわけ?」

「は?違ぇよ。ただ、奇跡って本当にあるんだなって思っただけ」


また周りで笑いが起こる。

僕はさらに顔をしかめた。


「奇跡で入ったんじゃない。ちゃんと勉強したからだ」

「へぇ?それにしちゃあ危なっかしかったけどな」

「……あんたに言われたくない」


ムキになって返すと、朔はニヤッと口の端を上げて僕を見下ろす。

わざと僕の机に手をつき、距離を詰めてくる。


「ま、でも退屈はしなさそうだな。お前がいるなら」


その言葉にまた女子たちがざわついた。

僕は視線を泳がせ、居心地の悪さを必死に誤魔化す。


「勝手に楽しんでろ」

「おー怖ぇ。真白ちゃんのその顔、久々に見たわ」


朔の声は挑発的なのに、どこか楽しんでいるようだった。

まったく、いちいち突っかかってくるところが変わらない。

僕は馬鹿にされた苛立ちを落ち着かせるために大きなため息をつく。

朔が自分の席に戻っていくのを見計らってか、佐藤が渋い顔をしながら振り返ってきた。


「へえ、あの有馬にそんな顔させるとか……お前、何やらかしたんだ?」


冗談混じりで疑いを含む目で見つめられ、視線を逸らせばすでに複数の女子に囲まれている朔が視界に入る。


「そんなの僕の方が聞きたいくらいだよ。朔からは勝手に嫌われてるんだ」


自分で言っててなぜか悲しくなってきた。


「てことは、月島は特に嫌われることはしてないのに、あの有馬朔に嫌われているってこと?怪しいなぁ」


佐藤が顎に手を当てて何やら考えるポーズをする。

そんなに疑われても出てくるものは何もないです。


「いやいや、月島にそんな度胸あるわけないだろ。せいぜい、教科書忘れるくらいが関の山だ」


鈴やんが呆れたように会話に入ってくる。


「いや、今日初対面にはずなんだけど、僕の評価低くない?」


とは言いつつも高校だと中学とは違って知らない顔ぶれが多い分、噂や大会の実績ばかりが先行して、朔はやたらと持ち上げられている。でも、鈴やんはそうではないみたいで安心した。


「別にそこまで言ってないけどさ、もし酷いことしたと思ってるなら早めに謝った方が良いって忠告してやってるんだよ。姉ちゃんから聞いたんだけどさ、この学校には2年にも3年にも有馬朔の信者がいる。盲目なまでに有馬を慕っている人もいるって。だから、有馬を敵に回すってことはそういう人たちも敵に回すってことだ」


「忠告ありがとう。けど僕は本当に謝ることなんて一つもやってない。だから大丈夫だよ」


「・・・本当か?」


佐藤が不安げな表情でいう。


「まあ、本人にしかわからないこともあるだろうから、少なくとも部外者の俺らが首を突っ込むべきでもないんだよなぁ」


そういうと、鈴やんは自分の席につく。


佐藤はまだ納得していないようだったがこれ以上話しかけられることはなかった。









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