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異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話  作者: 一優梨


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魔力検査

僕は今日いつもより早く目が覚めてソワソワしていた。

自分の部屋にいるのも落ち着かず、部屋を出て、みんなが朝集まるモーニングルームに行ってみた。


「いよいよ魔力測定ね。神殿に行って専用の魔道具で魔力を測るのよ。国王様のためにもいい結果が出るといいわね」


にこやかにレミーユから話しかけられた。

同じ国王に忠誠を誓うものと思われているからちょっとは心を開いてもらえたみたいだ。

けど、僕のそれは嘘で、本当は自分本位な目的に過ぎないんです。

本当に、なんか、ごめんなさい。

レミーユの笑顔が眩しくて罪悪感はあるけれど、フルゥもいないこの空間で友好的に接してもらえるのは嬉しいし、安心する。


「あの、僕、神殿の場所もどういうところかもわからないのですが」


「まあ、真白さんは異世界人ですものね。私、聖女として神殿とは深い繋がりがありますし、良ければ一緒に行きましょうか」


「いいんですか」


「ええ、もちろんよ」


昨日の鋭い目つきとは違う柔らかな微笑みだ。


「それなら俺もついていっていいかな。真白くんの能力にあった役職について考えたいしね」


オルフェンが爽やかにジャケットを羽織りながら、背を屈ませて、確認するように僕の顔を覗き見てきた。


「はい、お願いします」


続いて僕を含む三人はとある一人に視線を注ぐ。

アレンだ。


「俺は興味ねぇから、ここで待ってる」


片足を組んでソファに座り、本から目を離さずに淡々と告げるアレンに僕は少し肩を落とす。

でも、落ち込んでいる暇はない。

アレンがどんな態度をとろうと、目の前にいる二人とは距離を縮めたい。

だから、自然な笑顔を作って頷いた。


しかし、最終的に彼はレミーユとオルフェンに無理やり引き摺り出される、という形で渋々ついてきた。


ーーーなんで、急に雑に扱われてるんだ


今まで二人から黙認されていると思っていた勇者の振る舞い。


しかし、二人に引きずられる勇者を見て僕が固まっていると、オルフェンが教えてくれた。


「メンバーの力量を確かめておくに越したことはない。それをめんどくさいで済ませる勇者など、私は認めない」


目がマジで怒っていた。


オルフェンさんは僕が来る前も勇者パーティーとしてアレンとあの屋敷で暮らしてきたらしい。

我慢してきた分、堪忍袋の尾が切れたのだろう。


それはレミーユさんも同じようだ。

静かに頷き、微笑んだまま言葉を添える。


「貴方、そろそろ勇者としての自覚を持ってくださる?」


レミーユの表情は穏やかなのに、その言葉の端々には鋭い棘が潜んでいた。


この二人は怒らせない方がいいってことちゃんと心のメモに刻んでおこう。

緊張で、僕はゴクリと唾を飲み込んだ。

アレンも二人をこれ以上刺激しないように大人しく引きずられていた。


馬車を降り、慣れたように歩くレミーユの後をついていく。


神殿の入り口まで進むと、白と金で統一された衣をまとった一人の壮年の男が待っていた。

その背筋の伸びた佇まいと、静かな眼差しだけで只者ではないと分かる。

両手を胸の前で合わせ、深く頭を下げた。


「勇者一行の皆様、そして聖女レミーユ殿。ようこそお越しくださいました。神官長のセリオスと申します。」


「お久しぶりです、セリオス様。お変わりなくて何よりですわ」

レミーユは微笑みながら軽く会釈した。

その口調は敬意を保ちながらも、どこか懐かしさを含んでいる。


「聖女殿が神殿を離れてから、もうニ年になりますか。あの頃はまだ、よく夜更けまで祈りの文を練習しておられた」

神官長は柔らかく笑う。


「まあ、そんな昔のことを。あの頃は右も左も分からずに、セリオス様にご迷惑ばかりおかけしていましたね」

「迷惑など、とんでもない。あなたの祈りは、今もこの神殿を支える力の一つですよ」


神官長セリウスはレミーユと身内のような温かいやりとりをした後、僕のほうへと穏やかに顔を向ける。


「さて、あなたが異界から召喚されたという真白殿ですね。女神アウリアの加護を受けし者。心して、この儀に臨まれよ。我らもその光を見届けましょう」


「は、はい……よろしくお願いします」



セリウスに案内され、神殿の中に入る。

女神の像や天使といった彫刻が至る所にあり、壁一面に使われている大きなステンドガラスの横を通っていく。

レミーユは見慣れているからか、ほぼ素通りだけど、僕とオルフェンさんはその芸術的な細工に興味津々だった。

オルフェンさんの横に首根っこ掴まれたまま項垂れているアレンがいるのは置いといて。


やがて、僕は広間の中央にある祭壇の前に立った。

 天井は高く、天窓から差し込む光が淡い靄を照らしている。

 その中央に、透き通るような水晶玉が据えられていた。


レミーユたちや神官長は祭壇の下で僕の魔力測定の様子を見守っている。

ここで魔力量が良ければ魔法使いとして、でなければ一から訓練して戦士として役職を得る。

どちらにしても、僕はまだ勇者パーティーの戦力には及ばない。

せめて、足を引っ張らない程度には強くならなければいけなかった。


異世界人ってチート持ちなのが鉄則だよな。

……少なくとも、向こうの世界で読んだラノベの中では。


でもここは、物語じゃなくて現実だ。

村で魔法を練習したときも、凡人なりに何度も失敗してやっと形になった。

回復魔法に至っては、フルゥに「苦手だね」といわれたくらいだ。

どう考えても、僕にチートと呼べる力はない。


むしろ、最初から期待しないほうが傷つかない。

それでも、ほんの少しの、凡人並みの魔力があればいいと思う。


もし魔力量もなく、戦士にも向かないと言われたら。

僕はとうとうただの異世界の迷子で終わってしまう。

それだけは絶対に嫌だ。


「月島真白様、お待ちしておりました」

 一人の神官が深く頭を下げ、静かに言った。

 その手には、サッカーボールほどの大きさの透明な水晶が抱えられている。


神官は静かに胸の前で手を組み、短い祈りを捧げた。


「女神アウリアよ、異界より来た魂を見守りたまえ。清き光、その宿りを示したまえ」


儀式の始まりを告げる合図だろう。


「この水晶に手を翳していただくと、魔力量の測定ができます。どうぞ、手を」


 神官の声が終わると、僕は深呼吸をして手を伸ばした。


手をかざすだけで魔力量がわかるなんて便利だなぁ、なんて呑気に考えていると、掌が水晶にかざされた瞬間。


 光が弾けた。


 一瞬にして眩い白光が水晶の内部を満たす。

 その光はやがて外へと溢れ出して大きな光の柱となる。

光の柱はどんどん太く、上へと登って行き、天井をも突き抜けた。

 神殿全体が軋むように震え、壁の紋章が淡く脈打つ。

 外で祈っていた神官たちのざわめきが、遠くから聞こえた。


「っ……!」



思わず手を引くけば、光の柱ははパッと消えるが水晶の輝きはすぐには収まらない。

 光が空気を揺らし、水晶にかざしていた掌がびりびりと痺れた。


「この魔力量は……」

 

静寂の中でセリウスの低い声が響く。


「観測の範囲を超えている。過去の誰とも比べられない」


 セリウスの隣でレミーユが目を見開いた。


「これほどの魔力、制御できなければ危険だわ」


 次に行われた技術測定では、

 僕は光の球を浮かせ、炎を揺らし、風を操る。

 フルゥに教えてもらった基礎魔法なら、体が覚えている。


「基礎は申し分ない。ただ、応用はまだこれからだな」

オルフェンさんが、興味深げに観察する。

測定が終わり、僕以外の勇者一行の三人の顔にそれぞれ思案の色が浮かんだ。


「魔力量、制御の基礎、未知の属性……」

オルフェンが膝を軽く叩きながらつぶやく。

「間違いなく、魔法職として扱うのが最も合理的だ」


レミーユも頷く。


「ええ。桁違いな魔力量を活かせるよう、訓練を重点的に行うべきよ」


アレンは少し戸惑った様子で口を開く。

「じゃあ、魔法使いとしてこのパーティに加わるってことか」


僕は少し緊張しながらも頷いた。

自分の力が認められたこと、そしてその力に応える責任があることを、直感で理解していた。


基礎魔法はできているけれど、応用魔法ができた方がもっと魔力を制御しやすくなるし、戦いにも有利になるそうだ。


「僕、応用魔法を習得したいです。専用の魔導書とか、借りられないでしょうか」


そう言うと、オルフェンさんは少しだけ目を細め、考えるように腕を組んだ。


「意欲があるのはいいことだし、帰りに立ち寄ってみようか。魔導書だけでは理解しづらい箇所もあるだろうから、専属の魔術師に指導を頼めるよう取り計らっておく」


「本当ですか!ありがとうございます!」


 思わず声が弾む。

やっと自分にできることが見えてきた気がして、心の中で小さく拳を握った。

けれど、そんな僕の勢いをアレンのぼやきが軽く切り裂いた。


「俺は早く帰りたいんだけどな」


投げやりな口調に、浮かんでいた気持ちがしゅんと沈む。


「こっから近いんだから、少し寄っていきましょう。アレンも調べたいもの、あったでしょう? ついでに借りていけばいいじゃない」


その柔らかさに、アレンは露骨にため息をつきつつも、諦めたように肩をすくめた。


「……はいはい、わかったよ」


 そんなやりとりを見ながら、オルフェンさんがふっと口元を緩めた。


儀式が終わり、僕たちは神殿の大理石の廊下を歩いて出口へ向かう。

 扉の前で、セリオス神官長が再び僕に視線を向けた。


「月島真白殿」


呼び止められ、僕は振り返る。


「これから困難な道が待っているでしょう。しかし、光は常に闇の中に宿るものです。

 どうか、その心を曇らせずに歩まれよ」


静かに差し出された手に、僕もそっと手を重ねる。


「はい。ありがとうございます」


その表情は厳しくも温かく、まるで父のようだった。





僕たちは神殿を出て限られたものしか行けない王宮図書館に向かった。

王宮図書館というだけあってすごい数の本が並んでいる。

貴族の中で流行っているらしい物語の本や魔獣の特徴について書かれた本や、薬の調合についての本があった。


魔術の本はここら辺だろう。

僕は手当たり次第に本の背表紙に手をかけて引き抜く。


『魔術書II』と書かれた本だ。

一応応用編とは限らないから隣の魔術書Iと三もとっておいた。

分厚い本を三冊も持つと思った以上にずしりと腕にくる。


お目当ての本が見つかり満足していると、どこからか、「ゴゴゴゴォォォ……」と、重量のあるものがゆっくりと地面を引っ掻くような、凄まじい音が聞こえてきた。

なんだろうと思い、音の鳴る方へ行ってみれば、そこには驚くアレンとその視線の先にひとりでに動く本棚があった。

棚の奥には隠し部屋のよう空間が広がっていて、その中にもたくさんの本があるのが見えた。


「なんだろう、この部屋」


暗いし、少し埃っぽい。

でも、置かれた家具や本を見ると、外にあるものよりも格段に古いものが置かれているようで、タイムスリップしたみたいな感覚になる。


「あ、おい。どうみても怪しい部屋に入って行こうとするな!」


さらに奥へと進もうとしたところで焦った様子のアレンに呼び止められた。


「でもみて、『王国の歴史』だって。この国のこと詳しく知らないからちょっと興味あるんだよね」


歴史の教科書みたいなものだろうか。

どんなふうに建国されたのかとか、王族について読むのって結構面白いんだよね。

僕は向こうの世界でも、いろんな国の歴史や王族について読むのが好きだった。


「ダメだ、引き返すぞ」


アレンに連れられ無理矢理部屋から出る。



隠し部屋の外に出ると隠し部屋へと続く本棚がまたひとりでに移動して音を立てて閉まった。


その音を聞きつけてか、レミーユが近づいてきて尋ねられる。


「どうかしたの?大きな音がしたけれど」


「なんもねーよ」


アレンが白々しく答える。

レミーユは納得できなかったのか「本当になんもないの?」と再度僕に確認を求めてきた。


わからないけど、これはアレンに従った方が良さそうだと直感的に思った。


「うん、アレンの言った通りなんもなかったよ」


「そう。それじゃあ本を借りて帰りましょう。」


レミーユは微笑むと、オルフェンさんとも合流し司書さんのところへ貸出の手続きに向かった。




屋敷に戻ってから、僕は部屋に入り、三冊の分厚い魔導書を机に積み上げた。

それから無造作にページをめくってみる。

この世界の言語で書かれた本だから、専門用語の多い魔導書は国語辞典を片手に意味を調べながらでないと、僕には難しそうだ。


実はアレンに引っ張られる前、『王国の歴史』という本がどうしても気になって、咄嗟に掴んで持って帰ってきていた。

だから本当は三冊ではなく、四冊だ。


魔術書は閉じて端に置き、その一冊『王国の歴史』を机の上に置く。

これを知られたら怒られるだろうな。

でも、この本は奥の部屋にあったっていうことは、貸し出し用ではないはず。

こっそり読んで、返す時もこっそり返せば大丈夫……たぶん。

灯りの下でページをめくると、古びた紙の匂いがふわりと立ちのぼった。


 けれど、この本が、あとで自分の運命を変えることになるなんて

 そのときの僕は、まだ知らなかった。











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