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異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話  作者: 一優梨


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1/10

出会い

お母さんに呼ばれて玄関の方へ行くと、そこには知らない女の人とその女の人に隠れるように男の子が立っていた。


「昨日近所にひっ越してきた有馬さんよ。息子さんの朔くんは真白と同い年で明日から同じ学校に通うことになるそうなの。真白も挨拶して」


朔と呼ばれた男の子が母親の影からひょっこり顔を覗かせる。

身体に合わないダボっとした服を着たその子は、肩につくくらいのサラサラの黒髪、重めの前髪から見える瞳はぱっちりとしていてとても可愛いらしい。

僕が成長が速い方ということもあり、ちょうど頭一つ分くらいの身長の差がある。

猫のように警戒している朔と目が合った。

僕は怖がらせないようにちょっと屈んで目線を合わせて、安心させるためににこりと微笑んでみた。


「月島真白です。よろしくね」


「・・・ぼ、くは有馬朔です。よろしく」


朔は視線を彷徨わせながら、たどたどしくも自己紹介を返してくれた。

その様子になんだかほっこりする。

同い年だから失礼だけど、年下を相手にしているような感覚になった。

朔と朔のお母さんは近所の家に挨拶に回っているらしく、少し話しをしたらすぐに次のお家へと行ってしまった。

(とっても可愛い子だったな。お友達になれるといいなぁ)


「ねえお母さん、僕さ明日朔くんと一緒に学校に行くの?」


パソコンを開き、すでに仕事を再開していたお母さんの元に行って聞いてみる。

もしかしたら近所だし、学校までの行き方とか知らないかもしれない。

そしたら僕が一緒に行って教えてあげようと思った。

しかし、お母さんはその必要はないと液晶画面から眼を逸らさないまま首を横に振った。


「しばらくは車で通学するそうよ」


そう言いながらも休めることなくキーボードの上の指を忙しなく動かす。


「・・・そっか」


僕は期待してたのとは違った返答にがっかりして、お母さんの仕事の邪魔をしないように静かに自室へと戻った。


それでも、新しい友達に浮かれていた僕はその日の夜、なかなか寝付くことが出来ずに次の日を迎えた。


ざわざわと教室内が騒がしくなるなか、扉が開き1人の男の子が教室に入ってきた。

僕は、朔だ!と心の中でつぶやく。

朔が黒板の中央までくると騒がしかった教室は一気に静まり返った。

皆んなが朔に注目している中で、先生が黒板に大きく『ありまさく』と書くチョークの音だけが、やけに耳についた。


「新しくお友達になる有馬朔くんです。みんな、仲良くしてね」


先生が言うとみんなが元気よく返事をする。

朔もお辞儀をすると、先生に自分の席に着くように促されていた。

朔は僕の隣の席だ。

こっちこっちと手招きして朔を隣に座らせる。


「わからないことがあったらなんでも聞いてね」


「うん、ありがとう」


朔は視線を机に移したまま答えた。

朔のもじもじした様子に、新しい環境に慣れることができるように手助けしたいなって思った。

守りたくなる子ってこういう子のことを言うのかも。


朔の持っていた教科書は僕たちが使っている物とちょっと違うものもあるようで、その時は机をくっつけて「2人で見よ」っと教科書を真ん中に広げる。移動教室では毎回朔が迷子にならないように一緒に行動した。

可愛くて小さな朔と一緒にいると何故か自分が兄にでもなったかのような感じがして誇らしかった。

朔も遠慮がちだが僕を頼ってくれていると思う。

まだ、緊張しているのか、話しかけても「うん」とか、「そう」とか簡潔な返事が返って来るだけだ。

朔から話しかけてくれることは殆どない。

でも、これからゆっくり仲良くなって行けたらいい。たくさん朔と会話できるようになれたら嬉しいな。そう考えていた。



しかし、数ヶ月経った今も朔との関係は藍も変わらず。

ただ、朔は僕以外の子たちとは徐々に受け解けていった。


「朔くん、次の学活、視聴覚室らしいよ。一緒に行こう?」

「・・・えっと、僕は、他の子と行く約束してるから」


言い終わる前に朔は荷物を持ち、そそくさと僕から離れて教室のドアの前にいる友達のところに走っていった。

その友達とは僕が一度も見たことがない笑顔で談笑している。


「何か気に触るようなことしちゃったかなぁ」


思い当たる節があるとするならば、毎日のように声をかけ続けたことだ。

流石にしつこすぎで鬱陶しかったか。

仲良くなりたいって言うのが前に出過ぎていて、その圧がプレッシャーになっていたのかも。

直接言われたわけではないけれど、朔から感じとってしまう僕が苦手だと言うオーラ。

もし、そうだとしたら、これからもずっと声をかけ続けるのは迷惑かな。

明日からは適切な距離を保っていこう。

本当は仲良くなれたら嬉しかったけれど、気が合わない人とは無理に友達にならなくてもいいとテレビの偉い人も言っていたし。


それから、僕はいつも通り仲良くしている友達と登下校したり、遊んだりお昼を食べたり、変わらない日々を過ごした。

朔は大勢のクラスメイトの関心を引いており、休み時間には毎回机の周りに人だかりができている。

頭が良く運動神経も抜群という何をやらせても完璧な朔は当然、クラスの人気者になっていった。


自然と関わる回数が減り、お互いがお互いの気の合う友達と遊ぶようになってからしばらくして変化が起きた。


それは僕が休み時間に友達と絵を描いていた時のこと。


「へぇ、楽しそうだね。何描いてるの?」


声を掛けてきた子の方を向いて硬直する。

そこには、なんと、あの朔が立っていた。

僕が話しかけなくなって清々していると思っていたのに、話しかけても「うん」としか返さなかったくせに。

頭の中に「なんで?」の文字が何個も浮かび上がる。

明らかに戸惑って固まっている僕を気にせず、朔は僕と一緒に絵を描いていた子を無理やり押しやった。

そして、向かい合うように僕の机の前でしゃがんだ。

僕のお絵描き帳を手に取ってまじまじと見つめる朔。


「真白ってこういうの好きなんだ~」


その声色は明らかに馬鹿にして、笑いを含んでいるものだった。

僕が描いていたのは可愛いクマのぬいぐるみで、初めてお母さんから誕生日プレゼントにもらった大切なものだった。


「可愛いもの好きって女の子みたいだね」

「っ!別にいいだろ、返せよ、お絵描き帳!」


僕は腹が立って机から身を乗り出して朔の手にあるお絵描き帳を奪い返そうと必死に手を伸ばす。

けれども、朔はそんな僕の行動を面白がるように、ニマニマと笑いながら距離を取る。

勝手にお絵描き帳をペラペラとめくり始めた。


「下手くそ」


軽蔑を滲ませた声。

突き放すような響きに息が詰まった。 

僕を揶揄って満足したのか、お絵描き帳を適当に放り投げ、去っていった朔。

その後ろ姿を唖然としたまま見つめた。

ーーー誰だ、今の。

さっきの人物はは何ヶ月か前に僕に対しておどおどしていた可愛い子猫みたいな朔と本当に同一人物なのか。

中身が悪魔に入れ替わったんじゃないか。

態度も声色も表情も全部朔なのに朔じゃない。

確かに僕だけにそっけなかったけど!

でも前はあんなにあからさまに嫌いって態度はされていなかったはず。

僕の大事なもののイラストを笑われて、視界が涙で滲んでいく。

きっと最初に会った頃の朔は僕の幻想でしかなかった。




・・・本当は意地悪な奴だったんだ。





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