まだまだマーダー
時間が巻き戻ったのを見ると、恐らくはチートスキルが発動したようだった。
俺の部屋は惨劇のさの字も見せず、真夜中の静けさを湛えている。
しかし未来が変わらなければ、その静けさは朝になると破られるはずだ。
さっき俺が殺したはずの宮廷官僚ホロニアによって。
どうやったのか、奴は俺が築き上げた領地運営、粉飾決算、収賄、奴隷売買等々を嗅ぎつけやがった。
不正がどうの、法律がどうこう、処罰が云々、ついてはこっちの取り分が何割。
思わず部屋にあった真珠貝で頭を殴打してやったという訳さ。
しかしホロニアのやつ、さしでがましい道化の癖にやっかいなものを仕組んでくれていたものだ。
といって手をこまねいている訳にもいかない。
あと四半日もすればまた夜明けが来てしまう。
ありったけの財産をかき集めて……、いや到底時間が足りない。
このまま逃げ出す?父の代から貯めに貯めた財産を置いて?断じて否だ。
考えろ、どうすればいい。
このまま朝になったらまたホロニアの奴の口を封じなければならない。
待てよ。
ホロニアが俺と同じようにさっきの記憶を留めているのなら。
時間が巻き戻ったのを見ると、恐らくはチートスキルが発動したようだった。
俺の部屋は惨劇のさの字も見せず、真夜中の静けさを湛えている。
実に危ういところだった。
ホロニアは部屋に兵士を呼び集めているところだった。
俺の部屋の向かいがホロニアの部屋だったことは僥倖と言う他ないな。
慌てふためいて飛びこんできた俺を見た奴の顔と言ったら。
おっと、悦に浸ってばかりはいられない。
時間が巻き戻ったのを見ると、恐らくはチートスキルが発動したようだった。
俺の部屋は惨劇のさの字も見せず、真夜中の静けさを湛えている。
一つ疑問に思ったことがある。
過去に戻るというこれは無限に行えるものなのだろうか。
無から有を生み出すことができない以上、限りのあることなのではないか。
とりあえず三つと勘定した。
時間が巻き戻ったのを見ると、恐らくはチートスキルが発動したようだった。
俺の部屋は惨劇のさの字も見せず、真夜中の静けさを湛えている。
こう云う風に三つ四つと勘定して行くうちに、赤い血をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い血が頭を流れて行った。それでも終わりがまだ来ない。
しまいには俺とホロニアの間には奇妙な共同意識が生まれつつあった。
「もう諦めろ、この莫迦!」「お前こそ諦めろ莫迦野郎!」
時間が巻き戻ったのを見ると、恐らくはチートスキルが発動したようだった。
俺の部屋は惨劇のさの字も見せず、真夜中の静けさを湛えている。
足を引きずりつつホロニアの部屋へ戻り、真珠貝を振り上げると、ホロニアは窓の外へ浮かぶ月を見て嘆息を漏らした。
ぼたぼたと血が落ち、ホロニアは自身の重みでぐらりと倒れた。
自分は手を前へ出して熱い血の滴したたる、白い禿頭を抱きとめた。
扉を開ける音がしたのち響き渡る従者の悲鳴に、思わず遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。
「刻限はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。




