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アンノウン4

 ボロボロのトタン屋根から降り注ぐ朝日が、肌を焼いた。

 足元を見下ろし、僕はただ立ち尽くす。

 視線の先で、今日も変わらず一輪の花が咲いていた。めしべもおしべもない白い花。地面に寝そべるように在るそれは、ただぼんやりと日の光を受けて、僕を見上げている。

 誰もいない工場廃墟の中央で、僕はゆっくりと息を吐き出した。

「……これで、全部だよ」

 そっと膝を折り、両手に抱えた『脚』を手向ける。ローファーを履いたままの脚。きっと、僕と同じ高校の人だったんだと思う。

 ずるりと花から影が伸びた。影は脚を置いた地面を覆い尽くし、少しずつ、少しずつ、それを食べていく。地面に、影に飲み込まれるようにして、脚はやがて跡形もなくその場から消え去った。

『ねぇ』

 びくりと肩が震える。花の方から発された音は、言葉の形を伴って僕の脳に入り込む。抗う術もなく、僕はじっと身を委ねた。

『名前、分かった?』

「……う、ううん……、まだ……」

『そう』

 体が凍り付くような錯覚。喉元に黒々としたものが積溜まって、酷く苦しかった。これが怒りなのか嘆きなのかすら、僕にはもう判別がつかない。

『足りないの。彼女を保つには、足りないの』

 花はなお、僕に話しかける。もういいだろうと拒否することも叶わず、僕はただ彼女を見つめていた。

『だから、今度は、君の記憶も食べたいな』

「――え」

『次までに決めておいてね』

 

『君にとって』


『彼女と同じくらい』


『価値のある記憶(ヒト)

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