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-002- ボクの部屋に来た勇者♀の幼馴染の話

 ボクの部屋のソファに、部屋に入ってくるなりレユハと名乗った美少女が腰掛けている。

 ただ、アニメのユレハも、夢の中のレユハも、耳先が長いのが特徴的なのだが、今ボクの目の前にいる美少女は、ごく普通の耳をしている。

 でも、確かにボクに向かって『レシェス様?もうっ!!私ですよぉ?幼馴染のレユハですぅ!!』と言い切ってきたのだ。


 夢の中で、レユハは勇者♀こと【レシェス】の幼馴染という事もあり、魔王♂よりも距離が近い存在だ。ただ、レユハは自分の立場を弁えており、例え【レシェス】が幼馴染だとしても、言葉遣い等には気をつけているようにボクには見えた。

 目の前にいる、レユハも耳の形状こそ違えど、夢の中でいつも見ているままの雰囲気が出ている。


 「それでですねぇ?もう大変なんですからぁ!!レシェス様ぁ?早く……目を覚まして下さいませんかぁ……?」


 今、こうしてボクは起きているにも関わらず、『目を覚まして下さいませんか』とは、一体全体どういう意味なのだろうか。

 そんなことよりも、今すぐレユハをベッドに押し倒して、行為に及んでみたいという衝動が、どういうわけか徐々に強くなってきている。


 「じゃあ、レユハ?ボクが目を覚ます代わりに……ベッドで、さ?それくらい、お安い御用だよな?ボクにでも……予定ってものくらいあるだからさ?」


 さっきベッドの上で、ユレハの画像をオカズに続きをしようと、臨戦態勢に入ったのだが、レユハの来訪のせいで、ボクの気分がぶち壊しになった。だから、レユハには身体でその代償を支払って貰おうかと、ボクは後先考えず邪な提案を口にした。

 それに、未だ童貞のボクが卒業するとしたら、推しのユレハに瓜二つなレユハであれば、その相手としては申し分ない。


 「うーんっ……?幼馴染のレシェス様のお願いだとしてもですよぉ……?絶対に無理ですっ!!」

 「なら、交渉決裂だね?この後、ボクはバイトに行かなきゃいけないから。5〜6時間くらいしたら戻るから、それまで部屋で待ってるといいよ。」


 バイトに行く前にする、ボクの大事なルーティンをぶち壊された上、推しのジェネリックに『絶対に無理です』とまで言われたのだ、同情などしない。

 職業【フリーター】のボクだ、もし今日バイトを休んでしまうと、それだけ来月の生活の豊かさに直撃する。

 やはり、それ相応の対価をレユハから貰わなければ、割に合わないのは事実なのだ。そういった意味も込めて、ボクはバイトに行く事をレユハに告げた。


 夢の中でのレユハは、ドジキャラ全開ではあるものの、【レシェス】たちのパーティの司令塔的な役割を担っている。だからこそ、ボクの言わんとしている事を、レユハであれば察せると考えたのだ。


 「バイト?!レシェス様がでぁ!?バイト行かれるんですかぁ?!しかも……これからぁ!?」

 「ああ。ボクはフリーターだからな?複数バイト掛け持ちして、生計を立てているんだ。凄いだろう?」


 さっきから、ボクのことを『レシェス様』とレユハは呼んでくるが、すぐにでも眼科へ行った方がいいと思う。夢の中の【レシェス】は、とても可愛い声をした美少女で、声低めでフツメンのボクとは似ても似つかない。


 「えっと……レシェス様ぁ?バイト行かれたら困るんですっ!!6時間なんて、待てないんですよぉ!!はぁ……っ。もうっ……!!仕方ないですねぇ……。」

 「ん?」

 「レシェス様っ!!おっ……お願いをですよぉ……?幼馴染の私が……一つだけ特別に聞いてあげますっ……!!でも、一つだけですからねっ……?」


 『絶対に無理です』と一度は言ったレユハだったが、6時間後のボクのバイト終わりまで、悠長に待っていられない事態みたいだ。

 そのおかげで、レユハが特別に一つだけお願いを聞いてくれることになったのは、凄くラッキーなことなのだが、それはボクが【レシェス】ならばだ。

 どこにもボクが【レシェス】であるという確証などないのだ。


 確かに、夢の中ではボクは【レシェス】の一人称視点で見てはいる。でも、ただ見ているだけで、実際にボクの思考を夢の中の【レシェス】に対し反映させ、喋ったり動いたりすることは出来ないのだ。

 例えて言うならば、体感型のVR(バーチャルリアリティ)映像作品を、見ている感覚に近い。


 「じゃあ……さ?レユハ、ボクと付き合ってよ。」

 「つ……付き合うんですかぁ?!わっ……私とレシェス様がぁ!?」

 「いきなりベッドに押し倒されるより、良くないかな?」


 一つだけしか聞いてくれないお願いであれば、今ここでレユハで童貞卒業するのも名案かもしれないが、それでは二度目に繋がることはまずない。

 どうせならば目先のことだけではなく、少し先のボクの未来に繋げたいと考えた。

 となれば、レユハをボクの恋人にしてしまえれば、もしも2人の相性が良ければ、二度三度では済まないかもしれないのだ。


 「まっ、まぁ……そうなんですけどねぇ?でもですよぉ……?イディスだって……この世界に居るかもしれないじゃないですかぁ?」


 こんなところで、レユハの口から【イディス】の名前が飛び出してくるとは、夢にも思わなかった。

 だって……【イディス】といえば、ボクの夢に出てくる登場人物の一人で、唯一レユハとは相性が悪いからだ。

 まぁ、それもレユハが一方的に毛嫌いしているだけだが。


 「もし、イディスがこの世界に居るとしたらさ……?もう……さ?とっくに、レシェスに会いに来てるんじゃないか?」

 「あぁ……確かにっ!!ただ、私だって……レシェス様のお部屋、お邪魔したの今日が初めてですしぃ……?」


 なんとなく【イディス】の正体について、ボクたちの会話だけで、誰なのか何となく察せられるとは思うが、魔王♂のことだ。

 ただ、【イディス】というのが、魔王♂の真名なのか愛称なのかは知らない。

 そんな【イディス】も、魔王♂になる以前は有翼の長命な種族だったようだ。

 【レシェス】が生まれた頃には、【イディス】は魔王♂として、世界に君臨していた……という、夢の中の異世界での設定だ。


 「常にグイグイ来てるイディスが、来ないと思うのか?」

 「いっ……いやぁ……。レシェス様のお部屋……探せないだけかも知れませんよぉ?私は、すぐ見つけましたけどねっ!!」


 ドジキャラのレユハですら、ボクの部屋を見つけられるくらいだ。魔王♂である【イディス】であれば、そんなことくらい容易いだろう。

 それに、起きている間は、殆ど【レシェス】の側にいて、グイグイ来ているのが【イディス】だ。

 そんな【イディス】が、堪えられるのだろうかと考えると、この世界には居ない可能性が高いと言える。


 そもそも、ボクのことを【レシェス】と思い込んでいるレユハが、深く考えすぎなだけだろう。

 ただ、そう仮定すると……今度はレユハ自体、この世界に居ることがおかしくなる。

 実は……ボクの夢の異世界については、原作がありました……とかだったら、ある程度は説明がつきそうだ。

 頭のネジが吹き飛んだレユハの格好をしたコスプレイヤーさんが、何故だかフツメンなボクの部屋に来て、本人に成り切って演技しているだけだと。


 「イディスは居ないんじゃないかな?だからさ……?い、今から……レユハは、この世界ではボクの恋人になるんだ!!」

 「私と……レシェス様が付き合うってことで、本当に……良いんですよねっ?」


 やはり、推しに瓜二つのレユハを前にして、付き合わないという選択肢など、ボクには考える余地などなかった。ボクの目の前にいるレユハを自称する女性が、仮にもコスプレイヤーであってもだ。


 ──ピンッ……ポーンッ……


 そんな時だった。

 再び、ボクの部屋のインターホンが鳴ったのだ。

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