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ターミネーターの目にも涙

横河美波


豆電球だけがついた薄暗い部屋…剥き出しの丸太の壁が見えた。


どこかにあるログハウス。


UFOの視覚(カメラ?)を覗いているシルバの視線を覗く私。


視線の位置からして床に転がっているようだ。


「ドグラ…本当にドグラなのか?」


野太い青年の声がする。


あ…宇宙人なのに日本語喋ってる…


どんなのか見てみたいのに姿を隠しているのか視界には映らない。


「ドグラでございます、彰様」


UFOの声。


「曇天」


すぐに宇宙人の声が応える。


「明海…ドグラ…生きていたのか」


2人だけの合言葉だったのか、宇宙人は部屋の奥から姿を表した。


ん…何か私の知ってる宇宙人じゃない。


普通の人の姿。


遠目に見えるのに巨漢で筋肉質だと判る体つき。なのにヨタヨタとまるでおじいちゃんみたいな歩き方をしている。


UFOは浮かび上がると、青年の目前まで進んだ。


短髪で角張った感じの顔付き。酷く疲れているのか難しい顔をしながらも、UFOを見て涙ぐんでいる。


涙ぐむ目の奥…赤い光が見えていた。


宇宙人…じゃない?


人間に見えるけど、映画でみたターミネーターみたいな感じ。


「本日の午前中、処刑人を前に最後のエネルギーを使い、貴方様を逃がしました。エネルギーが尽きるのと処刑人の槍が私を貫くのは同時でした。」


処刑人?


槍?


日中あの辺は物騒だったみたい…ニュースになってないかな。


「しかし先程、私は治され、エネルギーまで補充されました。この彰様の世界で、です」


「何だ?SF界隈の帰還者か?」


「いえ…違うようです。その帰還者は使い魔と暮らしているようで、私を修理したのは宙に浮くクラゲでした。それ以外にもハムスター、スズメ、猫、エリマキトカゲ、モモンガ…といった小動物と2人の女性がいました。そのどちらかが帰還者でしょう」


うわ…ばれてるし…この人も宇宙人じゃなく帰還者ってことか…


じゃあこのUFOもこの人の使い魔みたいなものかな?


UFOじゃないじゃん。


ても呼び方判らないから現状維持で。


…ってか、今更だけど、うちの子修理だけじゃなくエネルギーまで満タンに出来るの?


「その時は礼を述べて退出、彰様を探そうとしたのですが…私の事を怪しんだのかスズメと文鳥が追いかけてきました。」


「お前のスピードに着いてきたのか…?」


「はい、私と同等か少し遅い位です。彰様に呼びかけながら私は飛び続け、そして…彼等の手の物が先回りしていたのでしょう。空気の塊をぶつけられ…私は落下しました。その時に丁度彰様に転送していただけた…というわけです」


「お前の声、私の機能不全のセンサーでも確かに聞こえたよ…」


青年の手がUFOに近づく。腕が上下してるということは、撫でているのかもしれない。


「独り寂しく、この隠れ家で朽ちるのかと思っていたよ…恐らく私のエネルギーは後数日で尽きてしまう…お前に看取ってもらえそうで本当に嬉しいよ…」


見てたらなんか泣けてきた。


青年の悲壮感と、死に別れたはずのUFO…感動の再会だけど…映画じゃない、現実の別れが近づいている。


これが私と子供達だったらと思うと…


「大丈夫です、彰様」


UFOはそういうと、USBみたいなケーブルを体から伸ばすと青年の首の後ろに突き刺した。


「私と折半しましょう。何もしなければ数年は生きられるはずです」


「…すまない…ドグラ…本当にありがとう…」


遂に青年はUFOを抱きしめた。視界が天井を映し出す。


「…む?」


またUFOの視界が動く。


さっきまでの死にそうな顔から、少し元気な感じの表情になった青年の赤い光と…私の目があった。


「モモンガ?」


怪訝な青年の声。


あっ、なんかよく判らないけどバレた。


『ママ、なんかよく判らないけど見つかった』


『逃げ…』


「ありがとう…どなたかは知らないが、ドグラを助けてくれて、本当に感謝している」


青年がまっすぐ私達を涙を浮かべた目で見つめると、震える声でお礼を言ってきた。


うわ、駄目だよそんな目で見てきたら…


私、号泣。


そうだよね、死んだと思った大事な人が戻ってきたら嬉しいよね。


「あなたのような帰還者を私は知らない。と、いうことは普通の人として慎ましく生きているということなのでしょう。こんなことで恩を返せるとは思えないが、あなたの事は知らなかったことにする。約束をする。」


義理と人情………あんた、最高だよ…


『シルバ、ごめんだけどこの人に私の言葉を届けて』


『はーい、まま。怖いけど頑張る。』


UFOからの視線がずれて、多分UFOの上からシルバが顔を出したのだろう、青年の額の高さに視界が移った。


「めんこいな…」


青年が呟く。


こほん。


「話は聞いていました。そちらのドグラさんに失礼な真似をして申し訳ありませんでした。」


直したとはいえ追っかけ回したあげく、空気の壁をぶち当てたのだ。向こうからのお礼を素直に受け入れてはいけない。


「いや、ドグラは最低限の挨拶しかしていなかった。事情を説明すべきだった、こちらの不徳の致す所です。」


むむ、これは謝罪に謝罪を重ねる面倒なやつだ。


「あ、はい。じゃあ、それはそれで終わりということで。えーと…あきら…さん?」


「安田彰だ」


「じゃあ、安田さん。あなたロボットなんですか?」


「ロボット…というか簡単に言うとサイバー化した人間でライトサイドの帰還者です。」


サイバー。


簡単に言われてもよく判らん。帰還者ということしか判らん。


「とりあえず、その、エネルギー?不足なんですか?」


「…ええ、そうですが…」


「よく判らないんですが、満タンにしたら長生きできます?さっき数年は~とか言ってましたが」


そこで安田さんは初めて私から(シルバから)目を逸らした。


何かを計算しているのか、少しの沈黙の後


「…そうだな、満タンの状態で普通に暮らせば…百以上は…」


なるほど。


「なんかうちの子が機械を修理もできて、その流れでエネルギー?も満タンにできるみたいなんです。良い機会なのでやっちゃいますか?」


さっき足がヨタヨタしてたのも治したいし。


「え、良いのですか?」


「ドグラさんと安田さんの絆、私感動しました。そのお礼です」


私はキックにお願いしてスルガを送って貰った。


ふわふわ浮かぶスルガを見て


「めんこいな…」


ごっつい顔をして安田さんは可愛い物好きなのかもしれない。


彼にはソファに横になってもらい、頭から爪先まで、スルガがふにふに。


その間、安田さんは自分の居た世界について教えてくれた。



要約すると…


世界観としてはドラえもんのいたような世界を暗くしたような感じ。


敵は隕石に着いてきたと思しき外来生物のエイリアン…ではなく、その世界の数百年前に放棄されて地中の旧食糧プラントが隕石の衝撃で暴走、その合成タンパク質で作られた地球産のエイリアンだったという流れ。


彼は無尽蔵に生産されるエイリアンを倒しながら、仲間の死を乗り越えて旧食糧プラントのマザーコンピューターを破壊して、世界を救った…とのこと。


私が参加させられた勇者役対魔王役の対立が流行る前の話らしい。


なお、UFOなドグラさんは安田さんのサポートユニットで、相方にマグラさんっていたけど、そちらはマザーコンピューターとの戦いで安田さんの身代わりになったらしい。


話を聞しいてると、安田さんが話し上手だからか1本の映画を見てるようなさ満足感があった。一緒に聞いてる子供達の反応も上々で、カレンなんかポップコーンを作っていた。


「コレが俺のメアドだ。何かあったら言ってくれ。必ず協力する」


メアドか…アドレス長いし…なんか面倒だな…と思いつつ。


「あと…まぁ、出来れば…で良いのだが…」


長い沈黙。


右を見て…左を見て…上を見て…ようやく安田さんは口を開いた。


「仲間も助けて欲しい、礼は必ずする」


安田さんの話では、SFの世界からの帰還者の知り合いが5人いるそうだ。


その誰もがエネルギーの供給を受けられず、ぎりぎりの日常生活を送っていて寝たきりの人もいるらしい。


大変だねぇ…私はファンタジーの世界で良かった。


とりあえず、彼等もスルガの力で治して(エネルギーを供給して)欲しいとのこと。


本当なら無償でも良いけど…今はお金が欲しい。


「お礼頂けるなら良いですよ」


「!!」


私の返事に土下座して床に頭をこすりつける安田さん。


うわ、これが土下座か…なんて思いつつ安田さんに頭を上げるよう促した。


来週の今日、この時間、この場所で彼等を治す約束と報酬の約束(提示額は1人当たり私の年収!!)をした。


すっかり上機嫌な安田さんに別れをつげ、シルバとスルガを下げたのだった。


え?なんか金運爆上がりなんですけど。これ仕事に出来るんじゃない?

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