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4.繁華街で

 また別の日は夕日が綺麗に見える丘に来ていた。


 その丘に尻をつき、膝を折って座る。

 凄くいい雰囲気だなぁ。

 この丘からは街が見渡せる。


 そこに夕日が来るとなんとも綺麗な景色だった。

 凄いいい景色だ。

 こんなの里でも見たことがない。

 王都って凄いなぁ。


 この前の子供ちゃんはソフトクリーム美味しく食べてくれたかなぁ。

 あの後僕も食べようとして並んだら売り切れになっちゃったんだよね。


 凄く残念だった。

 でも、あれはまた来た時に買えばいいから大丈夫。


 それより、魚人族の人って案外非力なのかなぁ? 僕のことを思いっきり殴ったと思ったけど、拳を痛めるなんて。


 どうしたんだろう?

 具合でも悪かったのかな?

 まぁ、手は出てないから目立っては居ないよね。


 目立ちたくはないけど、困っている人がいたら助ける。それはこの世界に来て父さんと母さんにこっぴどく言われた言葉だから守らないといけないんだ。


 だから、僕がやられちゃえばね。

 あの人弱いなぁって思われてあんまり目立たないでしょ?


 夕日が僕の顔を照らす。

 すごく綺麗な緑色だなぁ。


 ※これは夕日が髪に当たって緑に見えているだけです。皆さんの見る夕日と、色は一緒です。


 カップルもチラホラいるみたいだ。

 いいなぁ。恋人かぁ。

 僕には夢のまた夢だなぁ。


 目立たないように生活してるのに恋人が出来るわけないもんね。前世でもできたことないし。今世は長生きしたいなぁ。


「おうおう! イチャコラしてんなよこらぁ!」


「どけどけゴラァ!」


 なんか王都の治安悪くない?

 どうなってるんだよ。

 この街の自警団は。

 あるはずだよねぇ。


 僕の里なんてこんなことしたら木に吊るされてお尻百たたきの刑なのに。あれやられると骨も折れるし治るまで半年くらいかかるらしいからねぇ。


 ※これは里での出来事であり普通ではありません。決して真似しないでください!


 カップルはみんな逃げてしまった。

 みんなそれぞれでいい時間を過ごしていたのにまったく。

 こんどは狼と虎の獣人だ。


 二人で何しに来たんだが知らないけど、一通りのカップルが居なくなると去っていった。一体何しに来たんだか。


 僕もせっかくのいい雰囲気が台無しになったし、なにか美味しいものでも食べようかな。


 繁華街に行くとこの街には沢山の種類の食べ物がある。

 ルーメン、焼きメン、つけメンなどの麺類。

 それにウッシー丼、玉子丼、海鮮丼などの丼物。


 どれにしようか迷ってしまう。

 今日の気分はメンだ!

 ルーメンにしよう!


 ルーメンという呼び名だが、前世のラーメンのようなもの。これが醤油ルーメンも美味しいんだけど、豚骨がまた美味しいんだ。


「いらっしゃーい! カウンターにどうぞ!」


「とんこつ一つ」


「あいよ! とんこついっちょー!」


 お金を出してカウンターに置く。

 すると、ラーメンと引き換えにお金を持っていくっていうシステム。


 券売機のような物はこの世界にはまだ無い。というかできないと思う。紙を作る技術が前世より乏しいから。


 こういう時に前世の知識が使えれば知識チートできたんだけど、それやっても目立つから良くないね。


 考えている間にルーメンがきた。

 手を合わせてから食べる。

 周りの人は不思議そうだ。


 里でも僕だけだからあんまりやりたくなかったけど、食材への感謝、そして作ってくれた人への感謝は忘れては行けないと思う。


 だから、少し変に思われてもいいんだ。いただきますと胸の中で唱えてから食べる。


「うん。美味しい」


 口に広がる香りが鼻から抜けていく。豚骨の出汁がよく出てる。美味いなぁ。

 メンはちょっと太いのが残念なところ。僕は縮れた細麺が好きなんだけどね。


 そこまで言ったら贅沢だよね。

 あっという間に食べ終わっちゃった。

 また手を合わせて店を出る。


「あぁ。美味しかった」


 街並みは暗くなり、飲み屋さんもやっている時間になった。この世界では十五歳からお酒が飲める。


 これだけ色んな種族が居たらそうなるだろう。

 僕は飲まないけどね。

 というか、飲んだことがないからどうなるか分からない。


 父さんにはホドホドになと言われた。

 酒は人を狂わせるからあまり好きではない。


「良いじゃねぇかよぉ! 俺達と飲もうぜぇ!」


「嫌です! 離して!」


 獣人二人と……おれは人族の女性二人かな?

 あれは抵抗しても勝ち目がないね。

 助けに──。


「──良さないか! 嫌がってるじゃないか!」


 割って入ったのは角の生えたイケメンだった。

 あの人は魔人族かな?

 若いね。僕と同じくらいかも。


「おめぇみたいなのが一番ムカつくんだよ!」


 鈍い音がしたかと思ったらイケメンは殴られて倒れた。追撃でそのイケメンを蹴ろうとしている。


 足を抑えに入った。


「なんだてめぇ!」


「おめぇは丘にいた気味のわりぃ奴!」


 なんだ。覚えてたんだ。僕も覚えているよ。あなた達のせいでせっかくのいい気分が台無しになった。


 そう思ったら思わず手に力が入ってしまった。


 何かが折れたような音が響き渡る。


「がぁぁぁ! 足がぁぁぁ!」


「おい! どうしたぁ!?」


「折れたぁぁぁ!」


 狼の人が足を抱えて悶えている。

 虎の人が肩を貸すと起き上がった。


「あっ、大丈夫ですか?」


「ひぃぃぃぃ!」

「なんなんだアイツはァァァ!」


 二人とも逃げ去っていった。

 なんか良かった。でも、骨折っちゃって悪かったなぁ。思わず力が入っちゃった。


「殴られたとこ大丈夫?」


「はははっ! 情けないところを見られちゃったな。君、噂の黒襟さんでしょ? 強いんだね。羨ましい」


「イヤイヤイヤ! 誰かの勘違いじゃない? 噂の人は違う人だと思うよ!? 僕目立ってないし。うん。じゃあまた」


◇◆◇


 殴られた頬を擦りながら黒襟さんが去っていく後ろ姿を眺めていた。


「助けてくれて、有難うございました!」


 二人の女性が頭を下げてきた。


「オレは何も……」


「あの、端末認証交換しません?」


「良いですけど……」


 また認証を交換してしまった。

 何でか女性の端末情報ばかり増える。

 男の友達ができないんだよなぁ。


 あの黒襟さん。友達になってくれないかな?

 同じ受験生みたいだし。


 イケメンに寄り付かれたら、目立ってしまう危機!

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