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2.おかしなヤツ

 何度か来たことがある王都。

 学院の場所は前に父に教えて貰っている。

 今日が試験日だから人が大勢いて、その波に乗って進んでいく。


「このまま進んで! 指示のあったクラスで試験を受けてください!」


 服装は自由だからみんな様々な服でこの試験にのぞんでいる。

 うん。これなら僕は目立たないぞ。

 試験は二日間だ。


 今日は筆記試験。歴史、魔法史、戦術、ダンジョン探索、種族の五教科で各教科七十点以上の三百五十点取れれば合格とのこと。


 ここで学年一位など取ってしまえば、生徒代表挨拶とかになるのだろう。僕は目立ちたくないから合格点ギリギリを狙っていこう。


 五教科の試験が終わり、一旦宿に泊まった。

 二日目は戦闘と魔法の試験だ。


 戦闘はホールでやるらしい。

 ゾロゾロと続く行列に並んでいく。


「受験番号10502のヤツいるかぁ?」


「はい」


 小さい声で返事をして混雑していた中、人をかわして試験をしていたステージへと登壇した。


 この人が試験官か、強そうだなぁ。

 少しでも当てられたらいいよね。


「これはみんなに言っているんだが、オレに一発でも当てられたら合格とする。ただ、当てられなくても、身のこなしを見て合格か決める。いいな?」


「はい」


「じゃあ、始め!」


 少し様子を見る。

 かかってくる気配はない。

 こっちが動くのを待っていてくれているのかもしれないな。


 踏み込んで後ろを取り、軽く背中を殴った。


 ドスッという音とともに倒れた試験官。驚愕の表情でこちらを見ている。


「あのー。合格でいいですか?」


 コクコクと頷いていたからそのまま試験場を後にした。


 次は魔法の試験だね。

 魔法は外の校庭でやるみたい。

 竜魔法は使えば目立つからなぁ。


 次々と魔法を放っていく人達を見て羨ましかった。


 僕も炎とか水とか風とかを操ってみたかったなぁ。竜魔法は強力なのしかないから使いどころが難しいし。


 みんなと違うのもなんだか嫌なんだよねぇ。目立つから。

 試験官の女性に呼ばれた。


「次ー。10502の人ー」


「はい」


「あの的を魔法で壊してみてくれるー? 使えなくても、頑張ってみてぇ?」


 なるほど。使えなくても別に不合格になるわけじゃないんだ。じゃあ魔力使わなくていいか。あの的を壊すだけなら……。


 ちょっと足を開き拳を素早く打ち出す。そして戻す。


 破裂音がして的が壊れた。

 うん。衝撃波で壊せたから、これも合格かな?


「これで大丈夫ですか?」


「えっ? えぇー。大丈夫よー」


 こうして僕の試験は終わりを迎えた。

 試験の合格発表は一週間後だ。

 王都を探索しようかな。


 なんだか、この格好だとゆっくりと観光が楽しめそうだ。


◇◆◇


 その頃、筆記試験の答案を魔道具に通していた試験官。


 歴史、七十点

 魔法史、七十点

 戦術、七十点

 ダンジョン探索、七十点

 種族、七十点


「こんな奴いるのか? 合格点ピッタリなんて前代未聞だぞ?」


 その回答者の欄を見る。

『リオン・ドラゴニル』


「ハッハーッ! 竜人族か」


 竜人族はみんな姓が一緒なのだ。

 だから、すぐにバレる。


「しかも、コイツ……簡単な問題を空欄で出して超難問を解いて点数を合わせてやがる! ハッハッハッ! なんだコイツ! おもしれぇ。今度いじってやろー」


 変なところで目をつけられたリオン。


 入学してからも先が思いやられる。


◇◆◇


 戦闘の試験官はその頃。


 有り得ねぇ。

 なんだよあの動き!

 人をものともせず流れるようにかわして壇上まで上がってきやがった。


 しかも、一撃入れたら合格だとは言ったけどよぉ。

 オレは入れさせるつもりなかったっつうの!


 実際、一撃くらったのアイツだけだし!

 なんなんだ! あの黒襟は!

 あんな怪しいヤツ入れたくねぇっつうの。


 あの格好はなんなんだ?

 あれは何かを隠しているのか?

 だとしたら馬鹿なのか?


 めちゃくちゃ目立ってるっつうの!

 なんなんだアイツ!


 受験番号から名前と顔写真を確認する。

 その為にわざわざ職員室まで戻ってきたんだからな。


 今日は試験終わったら帰っていい日だったのに、ヤツの存在が気になりすぎて仕方ねぇからなぁ。


 アイツのせいでオレはサービス残業だよ。クソッタレ。


 職員室に入ると同僚の女がいた。そいつも受験生の資料を見ている。


「受験生の資料みて何してやがる? オレも調べてぇヤツがいる。寄越せ」


「珍しいわね? 誰かに興味もったの?」


「うるせぇ。俺に一撃入れやがった奴がいるんだよ。気に入らねぇ。一発入れて合格でいいですか? って聞いて帰りやがった。クソッ!」


 女は驚いて目を見開いている。


「あなたに触れる人なんて受験生でいるのね?」


「普通いねぇんだよ! オレが試験官になって始めてだ。しかもあれは本気の一撃じゃなかった。遊びのような一撃だと思う。だが、魔人族のオレがだぞ? 背中を打撲の怪我だとよ」


「あらぁ。それはそれは。私も驚いた子がいて、不思議だったんだけど、この資料を見て納得していた所よ」


 差し出された資料を見る。

 受験番号10502だ。

 名前は『リオン・ドラゴニル』。

 そういう事かよ。


「クックックックッ! おいおい! 竜人族がコソコソ試験受けてんじゃねぇよ! もっと目立てよ! 最強種なんだからよぉ!」


「私の試験では魔法すら使っていなかったわ。恐らく、拳の衝撃波で的を壊していたと……思う。あの的頑丈なんだけどねぇ。でも、何となくだけど竜魔法を使いたくなかったんじゃないかしら?」


「なんでだよ?」


「目立ちたくない……とか?」


「もう遅くねぇか? アイツ受験生の間で怪しい黒襟って有名だぞ?」


「あの服はないわよね。うん。髪も目を隠しているんでしょうけど……」


「なるほどなぁ。目立ちたくねぇってかぁ? どうやって目立たせてやろうかなぁ?」


 リオンに目立ってしまう危機が迫っていた。

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