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階段を降りると

真っ暗だと思った階段は、足元だけ、何かで照らされている。

その明かりを頼りに、踏み外さないように、階段を降っていった。

暗く、少し冷やっとした空気が、美優を包む。

どれくらい、降っただろう。

そんなに長くは、歩いてないのに、時間だけは長く感じた。

少しすると、出口なのか、明かりが見えた。

少しの安堵感と、そこにあるものへの期待と、不安を抱いて、明かりの所まで、駆け降りた。

その明かり先に広がる光景に、美優は圧倒された。


そこにあったのは…


まるでおとぎ話の世界。


広い庭が広がり、花々が咲き乱れている。

緑の芝生は、フカフカで、

木々も綺麗に剪定されていて、ハートやダイヤの形をしている。

庭の一画では、大きなテーブルに、沢山の椅子が、並んでいた。

その上には、無数のティーポットと、カップ、かわいいお菓子が、並べられ、今まで、お茶会が開かれていたようだ。

大きな木の上には、変わった色の猫が、美優のことを、見下ろしている。

そして、何よりも、目を引くのは、遠くに建っているお城だ。

白い壁に、赤い屋根、屋根の上には、赤い三角の旗が、風に靡いている。

ハートが沢山付いていて、とてもかわいい。

美優は、どこかのテーマパークにいるかのような、楽しそうな、この場所に、引き込まれて行った。


入り口の斜め前には、さっきの狐がいた。

ちょこん、と座り、フサフサの尻尾を、柔らかく、上下に揺らして、美優の方を見ている。

特に、何かを、言うでもなく、ただ、こちらを見ているだけだ。

美優は、狐に、話しかけた。

「ここって…狐さんの世界なの?」

狐は、喋らない。

「さっき、喋ってたじゃない?」

それでも、狐は、座って、美優のことを、見ているだけだった。

その目は、何かを、見透かしているように、じっと、美優を見ていた。

「ここ、とってもきれい。ステキね。」

そう言うと、美優は、そっと、この世界に、足を踏み入れた。

芝生の絨毯を進んでいくと、何処からか、かわいい歌声が、聞こえた。

花壇の方に、目をやると、色とりどりの花が咲いている。

よく見ると、その花たちが、優しく、歌っていたのだ。

どこかで、聞いたことが、あるような、ないような…そんな歌を歌っていた。

美優は、驚いたけれど、

こんな、おとぎ話の世界だから、有り得るな、

と思いながら、優しい笑みを浮かべ、

また歩いて行く。

どこを目指しているでもなく、芝生の上を歩いた。

ふと、後ろを振り返ると、狐は、目で追うように、美優のことを、見ている。

辺りをぐるっと見渡し、美優は、ハッ、と現実的なことを、考えた。

(このまま歩いていて、出られなくなったら、どうなるんだろう?)

そうしたら、急に、怖くなってきた。

さっきまでの、胸の高鳴りではない、ドキドキがして、呼吸が、浅くなるのを、感じた。

踵を返し、一目散に、狐のいる出口に、走った。

そして、一気に、階段を、駆け上がり、

末社の出口から、外に出た。

さっきまで、遊んでいた、子どもたちの声は、無く、

辺りは、薄暗くなっていた。

美優は、末社の鍵をかけ、元の位置に戻すと、急いで家に帰った。

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