末社
狐は、赤い鳥居をくぐり、小さな社に、入って行った。
この神社にある、2つの末社の1つ。
大きさは、美優が少し屈めば、入れる位で、半畳分位の広さ。
漆喰の壁に、瓦屋根の立派な建物だ。
木製の扉には、がっちりした、古めかしい南京錠が付いていた。
建物の前には、大、中、小の、3本の赤い鳥居が、構えてある。
小さいけれど、厳かな雰囲気のある、ちゃんとした、神社だ。
木製の扉には、賽銭を入れる、穴が空いていて、
狐は、そこから末社に、飛び込むようにして、入って行った。
美優は、末社の鳥居を、急いでくぐり、社の前で、立ち止まった。
鍵が、かかっている。
どこか、ガッカリした気持ちで、南京錠に触れてみる。
当たり前だが、引っ張っても、開かない。
悔しい気持ちで、末社を見ていると、賽銭の穴の奥に、キラッと光ものを、見つけた。
手を伸ばして、奥の方探ると、そのキラッとした物に、手が届いた。
(何だろう?)
掴んで、穴から出してみると、それは、真新しい鍵だった。
この扉に付いている、南京錠のものだろうか。
でもどう見ても、綺麗すぎる。
美優は、迷いながらも、扉の鍵と合わせてみると、
ガチャっと、音を立てて空いた。
(えーーー!!空いちゃったー!!)
驚きながらも、心を落ちたかせて、ゆっくり扉を開いてみる。
狐は、いない。
そこには、いつも祭事の時や、初詣で見るような、祭壇は無く、下に降りる、階段が伸びていた。
階段の下は、暗く、何も見えない。
扉をそっと締め、美優は唾を飲んだ。
暗くて、怖い。
でも、好奇心を止めることは、出来なかった。
きっと、狐は、この階段を、降りたところに、いる。
美優はゆっくり、階段に、足を掛け、降りて行った。