2学期の最終日から1日前
結局、その後も、鮫川さんが学校に来ることはなく、季節は流れ、夏から秋、秋から冬へ、移り変わっていた。
2学期も、明日で終わると言う12月の日、帰りのホームルームで、先生が、突然、鮫川さんの話をした。
「鮫川だけどなぁ、転校することになったそうだ。
先生も、直接、聞いた訳ではないから、詳しくは分からんのだが。
会えずに、お別れになったのは、残念だったな。
じゃ、今日は以上!
明日で最後だからな〜。気をつけて帰れよ〜。」
美優は、ホームルームが終わっても、席から動けずにいた。
え?そーなの?そーだったの?
余りにも、あっさりとした、急な先生の話に、頭が着いて行かない。
お別れなのに、転校になった、よく分からない、残念だ、それだけで、同じクラスだった子の、別れの報告なのか。
だからと言って、何かを聞くことはできない。
先生も分からないのだろう。
実際、何度か、先生に、鮫川さんのことを、尋ねたことがあった。
その度に、いつも「よく分からんのだ。」と、言われるだけだった。
先生も、気になってか、先生の仕事の一貫なのか、鮫川さんの家に行き、話をしに行ったりはしていたらしい。
でも、鮫川さんに会えたことは、一度もなかったようだ。だから、2学期、休み始めてから、一度も会話できていなかったようで、逆に「お前ら、鮫川と連絡とってないのか?」と、聞き返されるくらいだった。
美優は、連絡先は知っていたし、LINEで「元気?」って、他愛のないことを送ってみたこともあったけど、結局、返信はなかった。
既読も着かず、きっと、学校関係の人との連絡は、一切取ってなかったんだと思う。
何となく、やるせ無い気持ちのまま、家に帰ると、ポストの中に、手紙が入っていた。
可愛らしいピンクの封筒には、住所は書かれず、切手も貼ってない、真ん中に、自分の名前が書かれ、裏返すと、「鮫川 琴乃」と、差出人の名前が書かれていた。
その名前を見た美優は、ポストの前で、封筒破り、中を確認すると、そこには、封筒と同じ柄の便箋に、綺麗な字で、手紙がしたためられていた。
挨拶もせず、旅立つことを許して欲しい、
8月31日の出来事の後、親に話して、学校に行くのを止めていたこと、
休む勇気をくれた事、話を聞いてくれた事、感謝していると、
今は、元の自分に戻るようにリハビリをしている事、
これからは、やってしまったことと、自分の負った傷を、背負って生きていくこと、
今度は、タイに引っ越すことなどが、書かれていた。
そして、同封されていた、「木崎 晴風」宛の手紙を渡して欲しいと、丁寧に書かれていた。
美優は、鮫川さんからの手紙を胸に抱き、ホッとした気持ちと、この手紙から少しだけ、前を向いている彼女を想像して、笑みが溢れた。
居ても立っても居られず、自転車にまたがり、晴風の家まで、猛スピードで漕いで行った。




