神社で
風の音と共に、辺りが、静まり返った。
さっきまで、聞こえていた、子ども達の声も、聞こえない。
葉っぱの擦れる音もしない。
それはほんの一瞬で、また音は戻ったけれど、
さっきのような、ザワザワした感じではない。
音は同じなのに、何だか穏やかな、そんな感じだ。
美優は、とても不思議な、感覚になっていた。
ゆっくり歩いていると、美優の前を、胴長の動物が、横切った。
「あっ…イタチ」
こんな時間に珍しい、と美優は思った。
何度か、見たことはあったけれど、だいたい見かけるのは、塾帰りの夜とか、人の少ない時だった。
イタチを、驚いた目で追いながら、再び歩き出した。
すると、横から、カサカサ、と音が聞こえた。
音のする方を見ると、そこには1メートル近いヘビが動いていた。
「ヒッ!」
目を見開き、体が飛び上がった。
ここは、木の沢山生えた、森の中のような神社、とは言え、辺りは住宅街だ。
この辺でヘビを見たのは初めてだった。
「こんなところにヘビなんているんだ。ビックリした。」
そんな独り言を、言いながら、まだ心臓は、ドキドキと、鼓動している。
視線を森の方に向けて、美優は、はっとした。
木々の間から木漏れ日が差し、光の筋が無数に伸びている。
辺りはキラキラと輝いていて、まるで、美優の知らない場所のようにさえ思えた。
(ここって、こんなにキレイだったっけ…)
たくさんの鳥のさえずりが聞こえる。
(こんなに沢山、動物が居たなんて、知らなかったな)
そんなことを考えてながら、体を家の方に向けて、歩き出そうとした時、後ろを何かが通る気配がした。