疑問
美優と晴風は、鮫川さんの話を、静かに最後まで聞いていた。
時折、辛いことを思い出して、涙を流し、鼻を捩りながら、鮫川さんは、話した。
「そうだったんだね。辛かったよね。」
美優は、さっきの暗いトンネルのような、秘密基地を体験していたのもあってか、胸が締め付けられるように、痛んだ。
「…うん。」
溢れる涙を止めることが出来ず、小声で、鮫川さんが答えた。
「一つ、気になったんだけど…」
そう話し始めたのは、晴風だった。
「なんで、私だったの?」
ずっと気になっていた、晴風の疑問。
「私、鮫川さんと、ロクに話したこともなかったはずなのに…。」
少しの沈黙の後、鮫川さんが、深呼吸をして、話し出した。
「私に似ていたの。」
「えっ?どこが??」
「黒髪に、肩までの髪、眼鏡。本が好き。昔の私を見てるみたいだった。
引っ越してきて、別人みたいにイメチェンした。
だから、その前の私を、見てるみたいだった。」
「それで、どうして、私になるの?」
「なんか…同じなのに、楽しそうに笑ったり、友達と一緒にいたり。悔しかった。
こんなにイメチェンしても、どこかでまた、虐められないか不安で、友達の顔色伺ったり。
それなのに、木崎さんは、ありのままを受け入れられて。
見てたら、前の自分と重なったり。
なんか、上手く言えないんだけど、モヤモヤして…。
一番、虐められた辛さを、知ってるはずなのに。
また自分が、虐められない為にも、木崎さんに意地悪した。
ごめんなさい。」
「似てたから…か。鮫川さん、どんな本が好きなの?」
「サスペンスとかミステリーとか…。」
「なーんだ。そこまで一緒なんた。なら、そのままで、仲良くなれたのかも知れないね。」
「…うん。なんでそうしなかったのかな…。残念すぎるよ。。。」
そう言って、鮫川さんは、顔を覆って泣いた。
鮫川さんが落ち着くのを待って、美優と晴風は彼女を、家まで送って行った。
家までの道は、なぜか、誰も喋らずに歩いていた。
鮫川さんの家に着くと、美優が言った。
「琴乃ちゃん、大丈夫?」
「うん。送ってくれて、ありがとう。」
「それじゃあ、帰るね。バイバイ。」
「うん。バイバイ。」
鮫川さんの家からは、二人だったが、何を話していいか分からず、二人とも黙って帰った。
明日は9月1日。何事もなく、学校が始まることを願った。




