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狐の末社  作者: 坪原 衣音


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最後の秘密基地

「取り込み中、悪いのだが…。」

狐が話し出した。

「私の本当の姿を見られてしまった以上、ここはもう封鎖せねばならぬ。」

「えっ…。ここ、無くなっちゃうの?」

美優は、突然の狐の話に、驚いて聞いた。

「うむ。ここは神の領域。人が見ても、知っても、触れてもいけない場所なのだ。」

「ずっと気になってたんだけど、ここは何の目的できたの?」

晴風が聞いた。

「人、と言うものを、知りたかったのだ。」

狐は続ける。

「私はまだ、神の使いになりたてでな。

人、と言うものが、よく分からなかったのだ。」

「何で、私たちだったの?」

美優も、気になっていた。

「お前、祈ってたではないか。」

狐は、晴風の方を見て、言った。

「神社に来ては、熱心に、虐めが終わりますように。親友と思える人が、出来ますように、と。」

晴風は、恥ずかしそうに、俯いた。

「虐めが何か、親友が何か、よく分からなかったのだ。」

「神様には、聞こえてたんだね。で、叶えてくれた。」

「でも、私は?お願い事なんて…特にしてない。」

「お前は、たまたまだ。」

「へっ?」

美優は、意表を突かれたような、声が出てしまった。

「たまたま、見られてしまったからな。

でも、結果的に、お前に見つかって、良かったと思っている。

良いものを、見せてもらったのだと、思う。」

「そっか…。良かった。」

「これで、狐さんに会うのも、最後なんだね。」

美優も、晴風も、しんみりした顔をしていた。

一時は、毎日のように、顔を合わせていたせいか、狐に会えるのが、当たり前のように、なっていた。

「お前たちには、感謝している。」

表情が変わらない狐からは、どう思っているのか、分からなかったが、満足そうな顔に見えた。

「こちらこそ、ありがとう。願いを叶えてくれて。」

「私は、願いを叶えた訳ではない。

ここで、お前たちが、願いを叶えるために、何かをしただけのことだ。

私は、それを、見届けられた。」

「それでも、ここに来れたこと、誘ってくれて、ありがとう。私も親友が出来た。」

美優も、晴風の手を取り、狐に話しかけた。

「では、これで失礼する。」

狐は、美優と晴風と鮫川さんを見てから、くるりと振り返り、森の中に、悠々と歩いて行った。

その風格は、油揚げのような狐とは、全く別物で、堂々としていた。

「さようなら、狐さん。」

2人がそう言うと、辺りは、虹の中にでも入ったかの様な、色彩に包まれた。

暖かな強い風が吹いて、目を閉じた。

そして、次に目を開けた時には、いつもと変わらない、神社の景色が広がっていた。

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