うずくまってた子
人の気配に、先に、気が付いたのは、うずくまっていた子だった。
こちらの顔を、確認する前に、金切り声で叫んだ。
「来ないで!!」
そこに、出口の様な、光が見えていたことにも、気付いていなかったようで、その子は、顔を上げて、光を見つけると、そちらに、一目散に、走って行った。
叫びながら、美優と晴風から、逃げるように、この悪口のトンネルから、逃げるように…。
2人は、突然、誰かも分からない子から、叫ばれ、拒絶され、何が何だか分からず、呆然と、立ち止まった。
白い光の奥に、走って行った子が、今度は、また違った声を上げた。
「ギャッ」
美優と晴風は、顔を見合わせると、頷き合い、そちらに走って行った。
光の先には…、
大きな森が現れた。
2人で冒険した時に見つけた、厳かな雰囲気の森。
狐に、ここから先は、入ってはいけないと、言われた場所だ。
さっきの子は、この森を見て、腰を抜かした様に、へたり込んでいた。
ポニーテールの似合う、活発な女の子。
「琴乃ちゃん…。」
美優が、鮫川さんを見て、驚くでも、慌てるでも無く、落ち着いた声で、言った。
晴風はその名前に、一瞬、ピクッとなったけれど、顔を上げて、鮫川さんを確認して、ジッと見ていた。
鮫川さんは、名前を呼ばれて、驚いたのか、2人の顔を見た。
「美優、木崎さん。何でここに…。」
怯えたような、驚いたような声で、言った。
そして、美優が近付いて、答えようとするのを、遮るように、
「来ないで。来ないで。」
と、叫んで、森の方に、走って行った。
「待って!そこは、入っちゃダメだよ。」
美優が、咄嗟に、止める言葉を言った。
でも、鮫川さんの耳には、届いていないようで、2人から逃げるように、森の方に走って行く。
「ダメ!琴乃ちゃん!!待って!!」
美優も、必死に、鮫川さんを止めるように、走って行った。
森と、こちらとの間にある、鳥居としめ飾りまで、もう手が届きそうな、寸前の所で、美優の伸ばした手が、鮫川さんの手首を掴んだ。
「離して!ほっといて!!」
鮫川さんは、泣いていた。
怒っている訳ではなく、何かを放棄するような、心の叫びにも、聞こえるような、そんな声だった。
「でも、この先は、行ったらダメなんだよ。
前に、狐に、言われたの。私たちが、入っていい場所じゃないって…。」
「そんなこと…、、、」
鮫川さんが言いかけた、その時、
「いかにも。」
そう言いながら、白い狐が、森の鳥居の奥に、現れた。




