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狐の末社  作者: 坪原 衣音


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42/54

誰か

辺りは暗く、禍々しい色の渦の壁、強く冷たい風が吹き荒れる。

足元も泥濘んでいるようで、気を抜くと、足を取られ、転びそうになる。

外は、あんなに暑くて、太陽の光が、降り注いでいたのに、ここに居ると、そのことを、すっかり忘れてしまいそうである。

美優は、さっきよりも、冷静になっていた。

背中に、晴風の体温を感じ、安心感があるからか、

それとも、晴風が泣いているから、自分がしっかりしないと、と言う責任感からなのか…。

さっきから聞こえる悪口が、どうやら、晴風に向けられていたものとは、少し違うように感じた。

声が少し高いような、それに男の子の声も混ざっている。

晴風に向けられていた悪口は、鮫川さん御一行のものだけで、男子は"我関せず"と言ったように、見て見ぬふりだった。

他の女子も、傍観者だった。

男子に女子に、沢山の人の声が、悪口になっているように、聞こえる。

「誰のお弁当〜?ゴミ箱に捨ててあるよー。」

「うわ、きったねー。ゴミ箱漁ってやんの。」

(バシャ!)

「あ、ごめーん。手が滑って、雑巾洗ったバケツ、ひっくり返しちゃった。」

「れいちゃん、大丈夫?」

「私は大丈夫。それより…」

「あー、アイツは大丈夫でしょ、魚類だし。」

「れいちゃん、優しいね。あんな奴のことまで心配してあげるなんで。」

「ギャハハハ…」

この世のものとは思えぬような、罵詈雑言が飛び交っている。

色んなところから、飛んできては、体に当たる。

痛い、痛い。

そう感じるのは、美優だけではないようで、晴風も時々、泣きながら「痛い」と言った。

「はるちゃん、大丈夫だよ。」

美優は、そう励ましながら、前に進んだ。

どの位、歩いただろう。

それ程、歩いてないはずなのに、すごく長いこと歩いていたような、そんな感覚すらある。

悪口を浴び続けたせいか、疲労感が凄い。

それでも、一歩ずつ、足元を確認しながら、歩いていくと、薄っすら、遠くに、白い出口のようなものが、見えて来た。

「はるちゃん、出口!光が見えてるよ!!」

「えっ…。」

弱々しい声で、晴風が呟いたら。

鼻をすすり、美優の背中に、張り付いていた晴風が、顔を上げて、前を見た。

「もうすぐだよ。頑張ろう。」

美優はそう言うと、晴風の手を、もう一度、しっかり握った。

一刻も早く、この悪口のトンネルから、抜け出したい、その一心で、さっきよりも、早足になっていた。

光の方に、光の方に。

もうすぐ出口、と言う所に、誰かが、うずくまっていた。

「えっ…。誰か、いる。」

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