平穏
それから、美優と晴風には、穏やかな、学校生活が、流れていた。
少し変わったことと言えば、毎日のように、通っていた、秘密基地に、最近は、あまり行かなくなった。
お互いに、中学3年生。受験生である。
晴風はもともと、塾に行っていたけれど、美優も、塾に行き始めた。
とは言っても、同じ塾なので、結局、一緒にいるのだけれど。
休みの日も、今まで、出来なかった、ショッピングセンターにお出掛けしたり、お互いの家に行って、お菓子作りをしたり、時には、お泊り会をしたりもした。
人目を気にし過ぎて、出来なかったことを、思う存分、楽しんでいた。
その度に、「こういう事、したかったんだ。」って、目をキラキラさせて話す晴風が、とても可愛かった。
お揃いの物も増えていった。
ある日の朝、この日は、通学中に、晴風に会って、一緒に学校に来た。
2人で話しながら、下駄箱で、靴を履き替えていると、そこに、鮫川さんが、通学して来た。
2人に気付くと、気まずそうに、俯き、そそくさと、靴を履き替えている。
その時、晴風が、鮫川さんの方を向き、
「鮫川さん、おはよう。」
と、穏やかな、でいて、しっかりとした声で言った。
晴風の目は、真っ直ぐ鮫川さんを、見ていた。
鮫川さんは、驚いて、目を見開いて、晴風の顔を見た。でも、一瞬で顔を逸らし、俯いて、消え入りそうな声で、
「おはよう。」
と、返した。
美優は、何も言えずに、その一部始終を、見ているだけだった。
鮫川さんが、立ち去って、2人の間に、しばし沈黙が流れた。
その時、
「あー、緊張した。声、変じゃなかった?」
そう、切り出してくれたのは、晴風だった。
「えっ、、あっ、全然、変じゃなかったよ。」
「そう?なら、良かった。」
「でも…何で急に挨拶なんて…。」
「何でだろうね。朝、たまたま下駄箱であったから…かな。
でも、、、なんか、無視したくなかった。
無視してたら、結局、私も同じだから。」
その言葉が、ズキンっと、美優の心に刺さった。
そして、何も返せなくなっていた。
「行こっか。」
そう言うと、晴風は歩き出した。
「うん。」
美優は、小声で言うと、晴風に着いていった。
季節はジメジメしら梅雨から、本格的な暑さに変わり、夏休みが目の前に迫っていた。




