次のターゲット
美優も晴風も、平和な日常を、過ごしていた。
少なくとも2人は、3年生のクラスにも馴染んで、他の友達も出来て、楽しい学校生活を、送っていた。
なので、特に、何かが起こっていることに、気付かずにいた。
出来るだけ、触らずに、過ごしていたから…。
5月もゴールデンウィークが終わり、梅雨に差し掛かった頃、鮫川さんが、一人でいる事が多いことに、気が付いた。
(あんなに周りを従えていたのに…。)
最初は、その程度で、特に気に留めることもなかった。
正直、あんなことがあったから、関わり合いに、なりたくなかった。
でも、気になり出すと、気になる。
ちょこちょこ見ていても、やっぱり一人でいる。
誰かと、話している所を、見ない。
ずっと、鮫川さんの周りにいた子達も、いない。
(あれ?)
それからも、遠目で、鮫川さんを、見ていたけれど、やっぱり、何かおかしい。
きっと、何かが、起こっている。
その答えは、すぐに、分かった。
鮫川さんの取り巻きだった子達の近くを、偶然通り掛かった時、たまたま聞いてしまった。
「あいつ、マジで、性格悪くない?」
「そーそー。誰か、虐めることしか、考えてなさそう。」
「でもさ、知ってる?」
「何?何?」
「あいつ、美優に切り替えようとした時、木崎誘ったら、断られてやんの。」
「マジ?ダサー」
そう言って、取り巻きの子達は、ケラケラ笑っている。
美優は、胸がズキンッと痛んだ。
あの時の事だ。
笑い事では、ない。
その話を聞いて、あの時のことが、鮮明に思い出される。
上手く、息ができない。
苦しい。
急いで、その場から、離れて、教室に入った。
美優を見つけた晴風は、美優の側に来た。
「みーちゃん、どーしたの?顔色悪いよ?」
心配そうに、覗き込んでいる。
「大丈夫。ちょっと…気持ち悪くなっただけ。」
胸元を押さえ、息を整えた。
「そう?保健室、行かなくても平気?」
そう言うと、そっと、椅子を引いてくれた。
その晴風の優しさに、ホッとした。
「平気、平気。お茶飲んで、ちょっと休んだら、大丈夫だよ。」
そう言って、美優は、ゆっくり席に座った。
晴風も、空いていた、隣の席の椅子に座り、まだ心配そうな目を、こちらに向けていた。
美優は、黙ったまま、さっきの会話を、思い出していた。
思い出したくなんかない。
でも、整理しなければ。
あの子達は、明らかに、鮫川さんの悪口を、言っていた。
そして、鮫川さんの近くには、もう居ない。
きっと、今、虐めのターゲットになっているのは、
鮫川さんだ。




