もやもや
鮫川さん達から、距離を取りながら、歩いていた。
一緒に帰っている訳ではない。
でも、声は聞こえてしまう。
聞きたくもないのに、特に嫌な言葉は、よく聞こえてくる気がする。
「なにそれー、マジきもいんだけど」
鮫川さんの声だ。
カバンの紐をまたギュッと握った。
前の話の脈略は、よく聞こえなかった。
でも、あんな一部始終を見た後なだけに、晴風ちゃんのことを言ってるのかな、なんて想像してしまう。
それだけで、なんだか悲しい気持ちになった。
美優は、今日は、早く帰りたかった。
早歩きをすれば、もっと早く帰れたけど、鮫川さん達を抜かす時に、声を掛けられるんじゃないか、とか考えると、早歩きもできず、後ろから、彼女達のペースに合わせて、歩いている。
鮫川さんとは、中学校に上がってから、同じ学校になった。
美優の通っている中学校は、この辺では、マンモス校と呼ばれるほど、人数も多く、4つの小学校から集まって来ていた。
美優と鮫川さんは、小学校は違う学校の出身で、
鮫川さんは、1番人数の多い小学校からきていた。
美優は、3番目の大きさの小学校からだったので、一つのクラスに5人ほどしか、同じ小学校出身の子はいなかった。
「えー、マジ?あり得ないんだけど」
また鮫川さんの声だ。
今度は、私のことなんじゃないか、って思い始めると、何だか嫌な想像ばかりが、グルグル、頭の中を回り始めた。
(あーダメだ。
このままじゃ、早く帰れないし、嫌な事ばかり、考えちゃう。)
そう思った美優は、いつもは通らない道で、帰ることにした。