吹雪
走って、走って、神社に来た。
いつもなら、お参りをしてから、末社に入っていたが、今日は、一目散に、秘密基地を目指した。
鍵を開けて、一刻も早く、中に入りたいのに、手がモタモタして、思うように、開けられない。
(どうしよう、どうしよう…)
そればかりが、頭の中を、グルグル回っている。
(はるちゃん、居るかな。でも居ても、何て話すの?
はるちゃんに、気を遣わせるだけじゃないの?
どうしよう、どうしよう。)
そんなことを、考えながら、やっとのことで、鍵を開けて、階段を、駆け降りた。
穏やかで、暖かい、草原で、少し心を落ち着かせたい。
晴風と話して、安心したかった。
そんな気持ちで、基地の中に飛び込んだ。
それなのに…
今日の基地は、冬の嵐のような景色、だった。
どんよりとした雲に、強い風が吹き、雪が吹き荒れていた。
昔、おばあちゃんの家で見た、ホワイトアウトのように、どこに自分がいるのか、分からない。
一瞬、出口から目を離したら、ここがどこなのか、どっちを向いているのか、分からないほどの、猛吹雪だった。
「なんで…。」
美優は、そう呟くと、涙が溢れてきた。
「はるちゃーん!」
大きな声で呼んだけれど、返事はない。
「はるちゃーん!いないの?」
何度呼んでも、晴風はいなかった。
とても寒く、強い風で、立っているのも辛い。
膝を着いて、美優は、声を上げて、泣いた。
今日は、狐もいない。
一頻り、泣くと、唇を噛み締め、涙を拭って、出口から、階段を登って、外に出た。
思いっきり、泣いたせいで、疲れている。
トボトボ歩いていると、強い風が吹きて、美優の周りを、白い花弁が舞った。
曇った空に、桜の花びら、春なのに、まるで、さっきの吹雪のような景色に、焦燥感が募った。
帰り道を歩きながら、前に、晴風が言っていた言葉を思い出していた。
『きっと、今のターゲットが私なだけ。』
『何かのタイミングで、ターゲットが変わって、私は解放される。』
『その日が来るのを、ただひたすら、待ってる。』
そして、もう一つ、鮫川さん達の言葉を、思い出していた。
『裏切者』
(次のターゲットは、私なんだ。)
そう思ったら、血の気が、引いていくのを、感じた。
さっきの、秘密基地が寒かったせいか、
緊張のせいか、分からないけれど、手足が冷たく、冷えている。
冷えた手を、ポケットに突っ込んで、足早に家を目指した。




