裏切り者
次の日から、ホームルームが中心の、授業が始まった。
まだ、新しいクラスに、なったばかりで、皆んな、どこかよそよそしい空気が、流れている。
朝、教室に入ると、近くの席の子に挨拶をして、何となく世間話が始まる。
晴風は、鞄はあるけれど、教室にはいない。
予鈴のなる頃に、晴風は、教室に戻ってきた。
なんとなく目が合い、軽く笑った。
晴風も、軽く笑い返してくれた。
そんな、アイコンタクトのやり取りは、1日のうち、何回か行われた。
今日も授業が終わり、同じクラスになった子と、下駄箱で靴を履き替えていると、鮫川さん達に声を掛けられた。
「美優、ちょっと聞きたい事あるんだけど。」
「なに?」
首を傾げて、聞いた。
「ここでは、ちょっと。」
「?うん、わかった。」
それから、一緒にいた同じクラスの子に
「ごめん、先に帰ってて。」
「うん、わかったよ。美優ちゃん、また明日ね。」
「また明日。バイバイ。」
「バイバイ。」
と、言って、鮫川さん達に着いて行った。
人があまり来ない、体育館の近くに、連れて行かれた。
「琴乃ちゃん、どうしたの?」
「ねぇ。美優って、アイツと仲良かったの?」
「えっ?」
一瞬、何を言っているのか、分からなかった。
でも、少し考えたら、すぐに分かる。
アイツ=晴風だ。
「昨日から、目合わせては、笑い合ってたよね。」
「・・・・。」
何て返して良いのか、分からない。
「今日も、アイコンタクトで何回も笑い合ってたよねー。」
一緒に来ていた、鮫川さんの取り巻き3人が、それを聞いて、
「何、それ。キモーい。」
と、言って、クスクス笑っている。
美優は、何も言えず、ただ立ち尽くしていた。
『違う』と否定もしたくなかった。
でも、『そうだよ』と、肯定の言葉も出てこなかった。
どうしたら良いから、分からず、黙っていると、
鮫川さんは、畳み掛けるように、言った。
「前、アイツの話したら、うんって、聞いてたのにね。
ごめんねー。友達のこと、悪く言って。」
美優は、俯いてしまった。
言葉が見つからないと言うより、怖くて声が出なかった。
何も言わない美優を見て、
「もう、いいや。みんな行こ。」
「じゃあね、裏切者。」
と、鮫川さん達が帰って行った。
美優は、しばらく、動けなくなっていた。
(どうしよう、どうしよう。)
頭の中で、ずっとグルグル回っている。
(裏切ったつもりもない。何がいけなかったの。)
気が付いたら、いつもの神社に、走り出していた。




