校内と校外
探検の後も、2人は、毎日のように、放課後を、秘密基地で、過ごしていた。
その後の、夜のラインも、毎日、寝るまで、続いていた。
それでも、学校では、一言も話さなかった。
美優は、話し掛ける勇気がなく、気にはなるものの、今まで通り、杏奈ちゃんと香織ちゃんと、過ごしていた。
晴風も、特に、美優に、話しかけるでもなく、1人でいた。
相変わらず、鮫川さんからの虐めは、続いてようだ。
それを見る度に、美優は、嫌悪していた。
そして、それに対して、何も出来ない自分に、心底、ガッカリしていた。
(はるちゃんと、毎日一緒にいるのに、話し掛けないなんて、私、最低だな…)
そんなことを、思いながら、今日も、神社に向かった。
「みーちゃん、いらっしゃい。」
笑顔の晴風が、美優が入ってくるのを見て、続けた。
「いらっしゃい、は変か。
私の家じゃないもんね。」
暗い気持ちの美優も、そんな晴風の会話で、緊張が、一気に解けるのを感じた。
「はるちゃん、おじゃましまーす。」
少し戯けたように答えた。
「でも、ホント帰って来た気分だよね。」
そう言って、晴風の横に座った。
「本当にね。最近、家よりも、落ち着くもん。」
「分かるー!私にとって、この時間、すごく大事だもん。」
美優のその言葉を聞いて、晴風が嬉しそうに笑った。
「私も、この時間、大事。
この時間が、楽しいから、頑張れる。」
晴風の言葉を聞いた美優も、嬉しくて、はにかんだ。
「宿題、やってたの?」
晴風の手には、教科書があった。
「うん。今日、宿題多くてさ。」
「あー…うちのクラスも多かったんだ…。」
項垂れるように、美優が言う。
それを見た晴風が、
「今日は、宿題やろっか。」
と言った。
美優は、頭の中で、今日の宿題を思い出して
「・・・・そうだね。
話したりしたかったけど、今日は宿題やらなきゃ、ヤバそう。」
そう言って、宿題の教科書などを取り出した。
2人で、静かに、問題を、解き始めて、数分…
「あ"ーー、分からないーーー」
と、美優が、頭を掻きむしった。
その声に、晴風が驚いて、美優を見て、笑った。
「あはは。ビックリした〜。」
「ごめん。急に大きな声出して…。」
「大丈夫だよ。ビックリし過ぎて、涙出てきた。」
晴風が、笑い過ぎて、泣いている。
それを見て、美優も、笑いが止まらなくなった。
一頻り笑った後、
「どこが、分からなかったの?」
晴風が、美優に、聞いていた。
「えっと…ココなんだけど。
って言うより、数学全般、分からない。」
苦笑いしながら、美優が答えた。
「見せて。
あ〜ここね。難しいよね。
ここをこうすると…分かりやすいよ。」
晴風の説明は、とても分かりやすかった。
「なるほど〜。うん、これは分かった!」
2人で宿題をやりながら、ふと、美優は晴風に話し掛けていた。
「はるちゃん、いつもごめんね。」
「えっ?何で謝るの?」
「学校で…何も話しかけられなくて。」
「あー…いいよ、そんなの。クラス違うし、仕方ないじゃん。」
「なんか、何もできない自分が、嫌になるよ。」
「そんなこと、言わないの。」
「はるちゃんは、強いね。強くて、かっこいい。」
少しの沈黙の後、晴風はこう言った。
「全然、強くなんかないよ。
なんか…なす術もない感じだもん。
前は、何で虐められてるのか、色々考えたけど、良く分からなくて。
そんなに、鮫川さんと、話したことがある訳でもないし。
でね、色々本読んで、思ったの。
きっと、今のターゲットが、私なだけなんだって。」
「ターゲット…?」
恐る恐る、美優が聞いた。
「そう。
で、何かのタイミングで、ターゲットが変わって、私は解放されるの。
その日が来るのを、ただひたすら、待ってる。」
そう晴風がいい終わると、秘密基地の中に、静寂が広がった。
美優も、何て答えて良いのか分からず、黙ってしまった。
ただ、晴風のその言葉が、美優の頭の中に残っていた。




