帰り
二人で階段を上がり、末社の中に、戻ってきた時、美優はある事を、思い出した。
帰りの下駄箱での出来事。
そして、晴風に話しかけた。
「はるちゃん、今日、ここに来る前にね」
「ん?」
晴風が後ろを振り返って、美優を見る。
「鮫川さん達が、はるちゃんの下駄箱に、手紙入れてるの、見ちゃった。」
「・・・・そうなんだ。」
晴風の声が、少し暗くなるのを、感じた。
「中は見てないから、内容は分からないんだけど…
朝のこともあったから、ロクな内容じゃないと思って。」
「そうだよね…ロクな内容じゃないと思う。」
一層、重苦しい声になっていく。
「ごめんね、捨てるとか、なんも出来なくて。」
美優は、謝るので、精一杯だった。
「いいよ、いいよ。謝らないで。
教えてくれて、ありがとう。
明日、早目に学校行って、鮫川さん達に会う前に、捨てる事も出来るから。」
「・・・うん。」
俯いてる美優に、晴風は精一杯の明るさで、言ってくれたんだと思うと、余計、申し訳ない気持ちになった。
末社を出て、鍵を閉めてから、
「それじゃあ、またね。」
と、晴風が控え目な笑顔で、手を小さく振ってくれた。
「うん、またね。バイバイ。」
美優も、気持ちを切り替えて、ぎこちなく笑い、手を振った。
末社を出てからは、お互い、別の方向なので、ここで別れて、それぞれ帰った。
帰り道、美優は、晴風の「それじゃあ、またね。」を思い出していた。
また会えるんだ、ここで一緒に話せるんだ、そう思うと、美優は、なんだかとっても嬉しかった。
ずっと話したかったのに、なかなか話せず、久しぶりに話せたからなのか、
朝のこと、今までのことを、謝まれたからなのか、
理由は分からないけれど、気持ちが軽くなり、
あんなに、嫌なことが、沢山あった今日が、とても素敵な、キラキラした一日になった気がした。
今日の、2人の秘密基地でのことを、思い出していると、自然と口元が綻んだ。
すれ違った人に、少し不思議そうな顔で、見られたので、
(いかん、いかん。一人で笑ってて、気持ち悪がられたかも。)
と思い、口元をマフラーで隠して、家まで急足で帰った。




