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狐の末社  作者: 坪原 衣音


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16/54

そこには

そこに居たのは、晴風だった。

美優を見た晴風は、目をまん丸にして、こちらを見ていた。

きっと美優も、同じ顔をしていたことだろう。

二人とも驚いて、言葉が出なかった。

何かを話さなきゃ、と思って、美優は言葉を探した。

「はるちゃん。」

久しぶりに話しかけるせいか、言葉が見つからない。

「みーちゃん…。」

小学生の頃のような、笑顔ではないけれど、名前を呼んでくれた。

少しの沈黙の後、話しかけてくれたのは、晴風だった。

「みーちゃんも、ここのこと、知ってたんだね。」

「あ、うん。秋の…紅葉がキレイな頃だったかな。」

「なら、私の方が少し先かな。まだ紅葉、青かったから。」

「そうなんだ。私が来る前からあったんだね。」

話し出すと、普通に話せた。

久しぶりに話す晴風は、前と何も変わらず、穏やかで、優しい雰囲気だ。

少し歩いて、座れそうな切り株に、腰掛けて話を続けた。

「はるちゃん、よく来てるの?」

「うん。毎日のように来てるよ。」

そう言うと、晴風の顔に、照れたような、笑顔が浮かんだ。

「私もしょっちゅう来てたのに、会うの初めてだよね。ビックリしちゃった。」

「私もビックリしたよー‼︎私以外、知ってる人、いないと思ってた。」

「ここ、何だろうね。狐追いかけて来たら、こんな場所に、着いちゃったんだもん。」

「あっ!私も狐追いかけて来たよ。今日も入り口にいたよね。」

「そうそう!しゃべる狐。」

初めてここのことを、話せる子がいたので、どんどん話が出てくる。

さっき、言葉が見つからなかったのが、嘘のように。


ひとりしり話終わると、美優は、今朝のことを話し出した。

「あの…、今日の朝のこと、、、ごめんね。」

「えっ?」

「あの、鮫川さんと話してた時の…。」

「あー…うん、いいよ。気にしてくれてたんだね。ありがとう。」

「あと、いつも何もしてあげられなくて、ごめんね。」

「うん。仕方ないよ。誰も逆らえないもん。」

伏目がちになりながら、晴風が答えた。

美優も、何て言っていいのか分からず、俯いてしまう。

晴風が、カバンから、スマートフォンを取り出して、時間を確認して、言った。

「もう4時半だから、そろそろ行こっか。」

「うん。」

そう言って、出口に向かって、二人は歩き出した。

出口付近で、美優は、一旦止まり、振り返った。

神社の地下の秘密基地、今日は枝ばかりの森を見渡してから、晴風に言った。

「ここのこと、二人だけの秘密にしよう。」

その言葉に、晴風は、また目を見開いて、パチパチ瞬きをした。

そして一瞬遅れて、

「うん。二人の秘密にしよう。」

その顔には、小学生の頃に見ていた、優しい笑顔が、浮かんでいた。

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