2.ストーリークラッシャー
「うわああああ!!!」
金縛りから解かれたように、飛び起きた。
耳元で不気味な女が囁いた。女の息が自分の耳をくすぐったのをまだ生々しく感じる。
頭から転倒し身動きが出来ない程の重症を負ったと思ったのに、どうしてか自由に動く事が出来た。手をグーパーとしてみると、見覚えのない太くて長い傷だらけの手が目に飛び込んだ。
「あれ?」
思わず声を出すが、その声も聞き覚えのない男の声だった。
周りを見渡すと、そこは西洋風な豪華な寝室だった。ベット横にあったサイドテーブルが倒れ、ガラスの水差しとグラスが粉々に割れていた。床は水浸しで先ほどまでそこに寝転んでいたのか、前髪からぽたぽたと水滴が落ちる。
「陛下?どうなさいましたか? 入ります!ご無事ですか?!」
自分の叫び声に反応したのか、美奈子が遊んでいたファンタジーゲームに出来そうな騎士達が部屋に流れ込んで来た。
祐司の頭は理解が追いつかない。
騎士達は自分を「クラウス陛下」と呼ぶのだ。『クラウス』は献血中に読んでいた漫画の登場人物の名前。
もう、幻想と現実の区別がつかない位に自分は壊れてしまったのかと混乱した。
残念な事に、兄の祐司はよくある転生もの、なろう系を知らなかった。妹の美奈子のように適応出来なかったのか、自分を心配する騎士達の前で盛大に嘔吐した。
「大変だ!医師を呼べっ!!」
「毒を盛られたかもしれないぞ!早く医師を!」
鎧を纏う騎士達がより一層慌しくなる。
何回吐いたのだろう、最後にもう一回吐き終えて、祐司はやっと顔を上げた。
すると、目に入ったのは少し困った顔をした1人の騎士だった。彼を見た時、頭の中で水差しに毒を盛る映像が流れた。ただの想像だと思っていたが、無意識にその男に指を差し、自分の意思では無い言葉が口から出た。
「お前、なぜ毒を盛った?」
その一言に騎士は顔を真っ青にさせた。直ぐに他の騎士たちに取り押さえられた。
「申し訳ございません!陛下、どうか許して!家族が人質にされているんです!クラウス様お願いですっ!」
叫び出した男を仲間の騎士達が殴り黙らせた。一瞬で顔がぼこぼこにされ、自力では歩けなくなってしまった。その男は部屋から強制退出させられると、代わりに医者が入ってきた。
クラウスの容態を診るため医者は彼に触れた。その瞬間、毒を盛った騎士と同じように脳裏に映像が流れた。
それは、皇后呼ばれる女との密談。『隙を見つけて殺せ』との命令に頷く医者のやり取り。
「うぅ、お前もかよ? こ、この医者も仲間だ。」
祐司は医者の手を振り払うと、直ぐに騎士達に拘束された。
「す、すみません、もう大丈夫なんで… 少し1人にさせて下さい」
祐司は部屋の浴室へと逃げるように入り、扉に鍵を掛けた。
騎士達はいつもと違う口調と態度に少し驚いたが、言われた通り部屋を片付けた後は廊下で待機した。
祐司は青ざめながら浴室の鏡で自分の姿を見た。
金色の輝く髪に、綺麗な青い瞳。顔の良いハリウッド俳優かと思う位に整った顔。更には鍛えられた身体。
「美奈子が読んでた漫画のキャラ。…クラウスだ。この国の唯一の王子で、えと…絶対に殺される運命の王子様だ。そうだ、さっきの水を飲んでクラウスは死んだ…」
自分の言葉にゾッとした。そして、走馬灯の様にクラウスの運命が脳裏に駆け巡る。彼のこれまでの経験もそうだが、生い立ちがあまりにも惨すぎた。また吐きそうなのを抑える。クラウスの壮絶な経験は祐司自身が体験したかのように感じた。
どっと疲れが押し寄せる。祐司はまた座り込み、身体を震わせて身を小さくした。
「…なんで、俺、こいつの過去と未来が見れるんだよ。」
クラウスは何度も何度も死を繰り返し、その度に子供に戻され生きていた。終わりのない物語でこの呪いから解放される道は無いのだ。
祐司はクラウスの誕生の瞬間から降りかかる呪いの理由、彼の物語の最終地点までも神の視点から全てを把握した。
ただ、祐司には未来予知と他者の記憶が読み取る特別な能力を持っている事を本人は自覚していなかった。
何をやっても、この先訪れるのは『死』のみ。恐怖に潰される祐司は、空の浴槽に入りまた身を縮めて震える。
「駄目だ。俺はホラー映画を観るのは好きだが、実際に体験するのは駄目だ駄目だ駄目だ…」
逞しい身体の男が、浴槽で小さく体育座りしポロポロと涙を流している。
惨めな姿だが、人から何て言われようが関係ない。先ほどから、祐司の視線の先に誰かの気配を感じる。
薄暗い浴室の物陰を凝視してみると、確かに誰かがいる。
恐ろしさで吐きそうだが、もう全てを吐いてしまい腹は空っぽだ。
怖いが目をそらしたら、何者かが襲いかかって来るのではと怯えながらも凝視した。
すると、暗闇から感じる気配は人の形になったのだ。瞬きも出来ないほどの恐怖で身体が動かない。
闇の中から現れた人の形は、病院の階段で見た赤い瞳を持つ金髪の女だった。不気味なほど美しい女がゆっくりと近寄り、祐司の目の前に立つ。女は無表情のまま彼を見下ろした。
<…ねぇ あなた、私が見えるの?>
「ひぃ…すみません、ごめんなさい。無理です、ほんと無理無理無理無理…」
<ちょっと、怖がらないで。初めてこの世界で話せたのはあなただけよ。>
その女は言葉を発している訳ではなく、祐司の頭に直接伝えている感覚だった。
喋らずに自分を見下ろすだけの女が余計に怖かったが、勇気を持って応えた。
「き、聞こえます。…あの、なんで、…何であなたは俺をここに連れて来たんですか?」
見下ろした女の表情が少し笑みを持った気がした。
<あなたにこの世界を壊して欲しいの。>
「無理です!何をしてもこの世界の結末は決まっている。そう言う物語なんだっ。」
<あなた、この世界が本当に物語だと思っているの?クラウス、私たちは呪われているけどこれは現実よ。筋書きの決まった物語では無いはずよ。>
「うう、俺はクラウスなんかじゃない。主人公は死んで中身はただの中年のおっさんで、本当に普通の一般人なんですよ。何もできましぇん…うう…。」
祐司は泣きじゃくりながら訴えたが、女はただ無表情のまま見下ろしている…。
<まだクラウスは生きているわ。魂があなたの方とクラウスの方で行ったり来たりしている感じね。因みにクラウスは今のあなたの醜態にとても怒っているわよ>
その言葉に、祐司は納得が出来た。どうも頭の中に何者かがいるのだ。この違和感な存在はクラウスだった。
クラウスと意思疎通は出来ないが、確かに祐司に嫌悪感を抱いているのは伝わる。
<祐司さん、美奈子さんもこの世界にいるの。彼女はこんな世界でも死ぬことを恐れないで戦っているわよ。そろそろ私は、あの子の元に行かないと…>
「あんた!!あんたが美奈子を連れて行ったのか?!」
妹の名前を出された瞬間、祐司を襲う恐怖が一瞬にして消えた。代わりに怒りが込み上げる。
女を問い詰めようと身体に触れようとした。すると、目の前の女はまるで残像のようで触れることが出来なかった。
「…赤い瞳。お前は一体誰なんだ?!」
<この世界を掌握出来るあなたなら、私が誰かわかるでしょ?>
「ああ、見当はついてるけど。言えよ!名を名乗れ!お前は誰なんだ?!」
祐司は今、クラウスと意思が一つになった気がした。
目の前にいる美しい女は、金色に輝く長い髪に宝石のような赤い瞳の持ち主。
これは祐司だけが知っている。この世界にもう1人同じような女がいるが、それは彼女では無い気がした。
<そう、ストーリーテラーは別にいる。あなたはこの世界の破壊者よ。 お願い、全てを壊して。>
女は闇に姿を消そうとするが、祐司はずっと女の名を問い詰めている。身体は薄れゆき、女は泣き出しそうな顔をする。でもそれは、辛いのか嬉しいのかどんな心情なのか読み取れないが、祐司とクラウスに自分の名を詰まらせながら答えた。
< わたしは、…アリア………アリア・ガーランド >
祐司には、彼女が誰かを想い、愛しさを込めて自分の名を言ったのがわかった。それと同時に彼女の絶望の物語と、彼女の犯してきた罪を知ってしまう。
誰もいない浴室で、祐司の怒りは消えていた。恐怖で怯え出た涙は、悲しみの涙に変わった。
暫く何かを考えていたようで、ようやく祐司は決心がついた。
涙を拭き、鏡の前で簡単に身だしなみを整える。
部屋にある必要最低限の持ち物を備えた。祐司もとい、クラウスはベランダに出た。まるで、パルクール選手のように西棟を難なく降りる。
クラウスの身体能力は桁違いだった。誰にも見つからずに、城を移動した。
クラウスの記憶を頼りに、祐司の向かう先は東の塔にいる皇后の部屋だった。
頭の中のクラウスが祐司を必死に止めようとするのがわかった。祐司の思考がクラウスにどこまで知られているかはわからない。
「うるさい!俺を止めるな!人肉食った変態野郎っ!! 俺は、俺はっ!皇后さまに会うんだよ!畜生が、やってやるよ!もう、こんな世界はどうだって良いんだよっ!!」
身体の持ち主であるクラウスは、祐司のこれから始める暴走に酷く絶望した。
(あの女の中身は祐司の妹だったのかよ。兄妹揃って汚れてやがる!!)
ベランダから皇后の部屋に入るのはとても簡単だった。持っているナイフで簡単に鍵を壊して音も立てずに忍び込む。一連の動作が身体に染み込んでいる。桁違いの経験値を持っているクラウスは最強だ。どうして無敵な彼は、この世界では生き残れないのだろうと不思議だった。
祐司は寝ている皇后のベットに入った。
危険を察知してか、皇后はすぐに起きて叫ぼうとするが素早く口を押さえ込む。
持っているナイフ見せると彼女は抵抗を止めた。
そうだ、このままこの女を殺してしまえばハッピーエンドで元の世界に戻れないか?想像するが、やはり自分の見える未来は死の文字だけだ。
それに、祐司には人を殺すなど到底出来ない。
変わらない未来なら、もうどうでもいい。
「もう、やっぱりどうだっていいんだ!皇后さま、お願いです!僕を殺さないで下さいっ!」
クラウスから命乞いの言葉が出る。そして、ポロポロと涙を皇后の顔に落とした。皇后は状況の理解に追いつかずに混乱している。
祐司はハッと何かを感じ取った後、冷静さを取り戻した。
「すみません、騒いだら傷つけてしまうので、僕の言うことを聞いて下さい。」
持って来た紐で、泣きながら皇后の手を縛り上げた。叫ばないように口にも紐を咥えさせて結ぶ。彼女が小刻みに身体震えてるいるのがわかる。
落ち着かせようと、目の前で持っていたナイフを放り投げた。
「皇后さま、お願いです。僕は必ず貴女の前で死にますので。ちゃんと死ぬので、どうか、どうか、僕の願いを叶えて下さいっ。その代わりに僕も貴女の願いを叶えます!」
クラウスは皇后の細い首に口付けた。優しく愛撫するように上から下まで全身をキスして行くのでは無いだろうか。
皇后は震えた。この男に今から犯されるかと思うと、今すぐにでも殺してやりたかった。
だが、クラウスは女の身体を熟知しているかのように扱いが上手かった。感じてはいけないと頭ではわかっていたが身体が反応してしまう。
「皇后さま、俺は誰からにも愛された事がありません。みんな、俺を愛しているのだと思ったのに、ただ利用されて捨てられた。誰も、俺なんか愛してくれないんだ…。メンヘラのあゆみちゃんは淋しいからって深夜3時の呼び出しもすぐに行って愛してるっていっぱい言ったのに!リスカが癖なさくらちゃんは単位落としてまでずっと側にいたのに!皆んな男が出来たら俺を捨てた…!俺はただの‘’繋ぎの男”でしかなかったんだ!」
ペラペラとクラウスは何かを言っている。何となくだが、利用され捨てられた、自分も愛された事がないとほざいている。
この男に私の何がわかるのだ?そんな目で皇后はクラウスを睨んだ。
彼は皇后の着ている寝巻きを破り、裸にさせた。自分も着ているシャツを脱ぎ、上半身裸になる。クラウスの鍛えた身体と艶やハリのある肌が若さを感じた。
久しぶりに見る男の身体。皇后が最後に抱かれた時の王の身体は今でも思い出せる。腹の出ただらしのない身体で、まるでトドのような汚い男だった。
急に、老いた自分の身体を見られて恥ずかしくなる。この男はこうして私を恥ずかしめ、侮辱するのだろう。
「すみません、皇后さま。これが終えたら僕は貴女の前でちゃんと死にますので。なので、どうか、どうか、この僕に性の喜びを教えて下さいっ!!!」
「んーーー!!」
皇后は何かを叫んでいる。クラウスは彼女の全身を舐めまわした。
「あの、大丈夫です。レイプとか無理なんで安心して下さい。俺は皇后さまの許可なく入れたりしないので…。でもこの男は一度も女の身体を知りません。こいつにも最後に性の喜びを知って死んで欲しいんです。童貞のまま死ぬなんて可哀想すぎる…ううう。」
タガが外れた祐司はもう誰にも止められなかった。
クラウスはまた訳のわからない事を皇后の女性器を舐めながら言った。
口の中で固くなっている箇所を舌でつついたり、強く吸ってみる。
「ガチガチに勃起してんのエロすぎるでしょ…1時間は余裕で舐められるよこれ…やっば…。」
時折り目でも確認して、祐司の興奮は増した。
皇后は足を広げられ、ガクガクと太ももが痙攣している。やめろと身を捩るがクラウスの力は強くて、ぴくりとも動けない。
彼女の豊満な胸も味わうが、より入念に彼女の固く腫れ上がった女性器を口だけで愛撫し続けた。
「うう、素晴らしいだろ。これが女性の身体なんだ、見ているかクラウス?お前はまだ性の喜びを知らないから平気で女や子供を殺せるんだ。なんて可哀想な奴なんだ、うあわあああん…。」
祐司がクラウスに呼びかけるが、彼の気配は何も感じなかった。
そして長時間、女性の核とも言える大事な場所を責め続けてしまい、皇后はビックんと身体が跳ねる。
「わっ…。」
顔に水でもかけられたかと思った。或いは漏らしてしまったのかと思ったら、嫌な匂いはしない。もしや、コレは?と理解すると祐司はたまらなく興奮した。
「皇后さま、あの、もし、…許してくれるのなら。貴女の中に入っても良いでしょうか?ちょっとだけとか…あ、ダメならいいんです!俺、まだまだ舐めたいので」
苦しそうにしていた口のひも解いてやる。皇后は白目を剥きそうなほど快感で意識が飛びそうになっていた。「あうあう」と何か言っている。聞き取れなくて、口元に耳を近づける。
「もうやめて、…お願い。や…めて。何でも許すから、…もうこれ以上は、そこばかり舐めないで…」
まさか、皇后からの許しを得た。ゴクリと喉がなる。死ぬ前にこんな魅力的な女性を抱けるなんて、もう悔いは無いなと思った。
クラウスは皇后を傷つけないように、彼女の身体をいたわり、ゆっくりと自分の身体を沈めた。
皇后にとっては長い長い夜だった。祐司にとっては一瞬の夜だった。
皇后は快楽に負け、憎きクラウスの侵入を許した。彼の懇願を全て許してしまった。憎しみや嫌悪、彼に抱いた殺意すら、クラウスの身体でかき消されてしまった。
まだ足りなそうにしながらも彼は、自分で汚した皇后の身体を綺麗に拭き取った。
「すみません、全然足りなくて死にきれないんですが…えと、でも約束通り死ぬんで!皇后さまはまだ動けないようなので、また夜来ますね。約束の続きお願いしますね。」
そう言って彼は早朝にベランダから姿を消した。
(また来るですって?ふざけるな、絶対に殺してやる。)
本当に今日の夜、クラウスは来るのだろうか。約束通り、目の前で死んでくれるのだろうか。疲労でもう動けない。やっと寝れると思ったのに、クラウスの言葉に期待して身体がまた濡れているのに気がついた。
その日の晩、皇后はベランダの扉を開け、毒入りのワインを枕元に置く。護身用のナイフを枕の下に隠して待っていた。流石の馬鹿でも自ら死にに来るだろうか?
2度目は無いだろうと思っていたが、クラウスは皇后の期待を裏切らなかった。
「こんばんは、皇后さま。月明かりでもやっぱり美しいですね。お身体は大丈夫ですか?昨日は無理をさせてしまい、すみません。」
クラウスはベランダから登場した。親子ほどの歳が離れているのに、どうしてこの男はペラペラと生娘を口説くかのように接するのだろうか?
皇后はクラウスの中身が熟女好きのおじさんだとは知らない。
「あなた、あんな事してよくまた来れたわね。護衛が隠れてて殺されるとか思わないの?」
「大丈夫ですよ。今日は貴女は俺を殺さないって、何となくわかるから。」
クラウスは微笑んだ。普段は笑うなどしない男だが、美形な彼の笑顔は皇后の何かをくすぐった。
「今日は、少し会話を楽しみますか?それとも、…。」
「そんなものはいらないわ。約束でしょ?その願い叶えてあげるから、早く私の前で死んでちょうだい。」
皇后はクラウスの言葉を遮った。
ギラつくクラウスの眼差しが少し怖い。彼は距離を詰めて迫ってくる。
「じゃあ、昨日の続きをしましょう。実は全然足りなくて、俺が満足するまで付き合って下さいね。」
「え?」と皇后が驚く暇もなく、クラウスは皇后をベットに運ぶ。
手早く両手を後ろにして縛り上げた。今度はご丁寧にシルクの布を持ってきていた。
恐れ多いですが、と祐司は思い切って皇后の唇にキスをした。すぐに彼女の舌を味わうかのように吸い上げる。激しいキスに、皇后がもじもじと足を動かすのに気がついた。
太ももを撫でて、優しく彼女の股に手を伸ばす。期待で濡れていた。昨日、入念に舐めてしまった女性器はぷくりと腫れている。指でコリコリと優しく撫でた。
「すみません、ここ腫れてますね。痛くないですか?」
祐司は親切心で聞いたのだが、皇后は煽られていると勘違いしていた。
「は、早く、終わらせなさい!」
祐司は急かされたと思い、言う通りに昨日とまったく同じように全身を舐めわした。
また硬く腫れ上がった所を執拗に責めた。快楽に負けた皇后は挿入を許可するが、祐司は彼女の身体を労り断った。変わりに一晩中、女性器を夢中で舐め続ける。
その快楽は拷問に近いのを祐司は理解しておらず、皇后は何度も白目を剥いて失神していた。もう抵抗しないだろうと、拘束を解く。
両足を痙攣させカエルのように広げて、放尿までしている。絶頂を迎え惚けた顔がたまらなく愛おしかった。
「うおおおお!!皇后さまっ!エロすぎる!!!!」
それでも止まない彼の異常な執念とも言える責めに、たまらず皇后は意識を取り戻した。もう止めてと自ら彼に跨ったがった。
こんな秘め事が4日目となると、流石に皇后の女性器は腫れて痛み出した。
「すみません、この身体はちょっとアレが規格外だし。絶倫だし……、俺は皇后様に夢中になっちゃってすぐ我を忘れてしまって」
「ふん、ここまでしたなら満足でしょ?早く私の前で死になさい。」
「えーー!俺まだ満足出来てません、…まだやってない事したいんですけど…。」
「なっ、これ以上の事、まだあるわけ?!」
2人はベットで寝そべり、その日は会話を楽しんだ。祐司は皇后の過去を知っていたが、頑なに彼女は自分の話をしなかった。
もう少しで夜が空ける。「じゃあ、また来ます」とクラウスが帰ろうとした時だった。
皇后は空のワイングラスを渡した。
「帰る前に、一杯飲みなさい。」
その手に持つワインボトルには毒が入っているのを祐司は知っていた。
ああ、ついにこの日が来たんだと悲しくなった。
「皇后様、有り難く頂きます。」
クラウスは膝をつき、注がれる赤い血のような酒を眺めた。
「俺の願いだけを受け入れてくれて、ありがとうございます。あなたの願いを叶えられなくてすみません。でも、俺はあなたの事が好きになっていて。この先があったなら、俺はあなたを愛していると毎日囁くんです。だからあなたを想い死んでも良いでしょうか?」
クラウスはまた〝許可〟を求めている。
皇后はワイングラスを手で叩き落とす。クラウスの手から離れ、ガシャンと音を立ててグラスが割れた。床が赤く汚れてしまった。驚いたクラウスの胸ぐらを掴み、ベットに戻す。
「毎晩、私を好き勝手していたけど、今日は私がお前を好き勝手にさせてもらうわ。」
皇后はやり返しのように、彼の身体中にキスをして舐め回した。
「あ、あの、そこは無理しなくて良いですよ。」
「お前は黙って私にされるがままでいなさい。」
「あ、じゃあ、お言葉に甘えて。あの、皇后様は跨って俺の顔にお尻向けて下さい。」
皇后が自ら進んで口淫してくれるのだ。こんなチャンスは無いと、あれこれと指示を出す。皇后はクラウスの言葉に従った。
2人の関係は誰にも知られる事なく、ほぼ毎日密会を交わした。
彼女もまた、いけない事だとわかっていたが、与えられた快楽に抗えなかった。
祐司は既に皇后を愛おしく想い、夢中になっていた。彼が知るストーリーが崩壊している事に気づきもしないで。




