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転生悪役令嬢は全オスを攻略対象にする。そこの雄犬、お前もだっ!!  作者: 村井田ユージ
第一章

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2.何度目かの転生、刻まれる記憶と薄れ行く私たちの記憶

もうあなたは思い出さなくて良いのよ。



 泣いている女の人がいる…

 全てに絶望しているような、彼女の苦しみや悲しみが含んだ悲しい泣き声。

 掠れ出た声はまるで悲鳴にも聞こえる。



「わたしには無理よ…」


「え?」


 美奈子は驚いた。

 その女性はまるで美奈子を待っていたかのように、目を合わせ呟いた。


「もう楽になりたい、わたしにはこれ以上何も出来ない。貴方はこの地獄から抜け出せる?」


 この台詞…聞き覚えがある。いや、これは全部見覚えがある…

 長いまつ毛に伝う涙、泣いていてもわかる。

 妖艶な雰囲気と艶やかな赤い髪、見つめられたら誰だってドキッとしてしまう…美しい顔立ち。


「クロエ?」


 そう、あなたは私が愛読している『悪役令嬢は死ぬ事を恐れない』の悪役令嬢役クロエだ!

 泣き崩れる彼女に駆け寄った。ほんの少し彼女の肩に触れただけなのに、

 クロエは塵の様に消えていった。

 そして、美奈子の身体に流れ込む。

 まるで走馬灯に似た押し寄せる波のような記憶達。

 これは何人のクロエ達の記憶だろう。

 無意識に流れる涙…。私に上書きするかの様な記憶は全て悲惨なものだ。


 一体、私たちは何処までも苦しまないといけないの?


 怒りと憎しみしか沸かない…それでも冷静を保とうと息を整える。

 美奈子は全てを理解した。次は私の番なのだと。

 これから始まるストーリーで、私はクロエになりこの世界で幸せになるんだ。

 今までのクロエ達の分まで幸せにならないといけない。

 ──これは私の使命だ。





 コンコンとドアのノックの音で目を覚ます。


「お嬢様、起きましたか?早くフランドル家に向かう準備を整えて下さい。それから朝食を差し上げます。」


 侍女が冷たく言い放ち、ドアの前から去って行く気配を感じた。


「あーーあ、やっぱり夢じゃないか…」


 現代では見る事の無い天蓋付きベットの天井を見上げて、自分は異世界に転生してきた事を静かに受け入れた。


 我が家でも虐げられる悪役令嬢な設定って、作者はクロエが大嫌いみたいね。

 なんか、幼稚って言う位ネチネチ攻撃してくるのよね〜。

 そんで早速…、フランドルって…『政略結婚』イベントじゃん!

 いきなりここからか…。

 怯んでる暇は無い美奈子!いや私はクロエ!!完璧に備えるしかない。


「やーってやんよ!身体は二十歳、中身は三十路!令嬢モノ読み漁った知恵とヲタ経験で乗り越えたる!!」


 目を見開いた。自分に言い聞かせ熱い決意を誓う。

 この勢いよ、私はもう誰にも止めらない。

 なんだろう、若い身体に美しい顔ってだけで最強になった気がする。

 美奈子は入念に計画を立てるためにベットから飛び起きた。



 ※


「お嬢様、もうお昼ですよ。お支度は整いましたか?」


 声を掛けてから、いつもと違う雰囲気に気づく侍女。


「ええ、完璧でございますわ。いつでも出陣できますわよっ!!」


 そこには、ひときわ美しい令嬢クロエの姿。

 この物語では、彼女はヒロインの引き立て役、悪役、──そして無惨に殺される運命の女。

 そんな定めを塗り替える程の生命力に満ち溢れたオーラを放つ。

 まるで彼女が主人公だと言うかのように…。


 だが、彼女の後ろに嫁ぐための大荷物がある事を、まだ誰も気づかない。



退屈な日々、もう飽きたこの世界に誰か刺激を頂戴。

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