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転生悪役令嬢は全オスを攻略対象にする。そこの雄犬、お前もだっ!!  作者: 村井田ユージ
第一章

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15.この世界を導く者たち


 ダンテが公爵を連れて戻って来た。

 侍女のマリからクロエがジョンの部屋に入ってしまったと聞き、公爵より先に慌てて屋敷に入る。

 クロエの部屋にもジョンの部屋にも2人はいなかった。物音のする方へ向かうと1階の浴室に人の気配がする。


「お嬢大丈夫かっ?!」

 

 ダンテは荒々しく浴室の扉を開き、クロエの安否を確かめる。

 だが、目の前にはバスローブ姿のジョン・フランドルが優雅に寛ぎ、クロエは奴の濡れた髪をタオルで拭いている…。


「お嬢、何やってんの? つか、あんた髪…良いのかよ?」


 目の前の状況に理解が難いが、クロエが安全なのは良かった。だが、ダンテは少し青ざめながらジョンの髪の色を気にした。


「おい ダンテ、飼い主がクロエになった途端に昔に戻ったみてーな態度はやめろ」


 鬱陶しそうにジョンは睨むと、ダンテは怯んだ。


「だってさ 今、公爵が…」


「クロエ、ジョン。  問題は無なさそうだな。」


 ダンテの後ろには公爵はいた。


「あ、お義父さま。 あの、…」


 クロエは公爵の顔を見るのも気不味い。静寂を好む男だと知っているので、今回の騒動を謝罪したい気持ちがあった。


「クロエ、こっちへ来なさい。2人で話そう」


「はい、お義父さま。」


 クロエはジョンとダンテを浴室に残し、公爵と廊下に出た。


「…その髪、問題無いみたいですね」


「チッ、うるせー。 ダンテ、お前が続きやれ。」


 ジョンはダンテに濡れた髪を拭かせた。



 一方でクロエと公爵は玄関先まで来ていた。

 話そうと言いながら何も喋らない公爵はこのまま帰ってしまうのだろうか?クロエは勇気を振り絞って、彼の背中に話しかけた。


「お義父さま、また言いつけを守らずに申し訳ございません。お義兄様とはもう和解が出来ました。それと、」

 

 公爵はクロエの話を遮った。


「あの時は、錯乱していたように見えたが、もう大丈夫なのか?」


 公爵の言うあの時とはきっと、ジョンの血を両手に付けて見せた時のことだ…。

 美奈子の意思では無い言葉と行動をした事を、なんて公爵に伝えたら良いのだろう。


「申し訳ございません、あの時の事は私にも良く覚えていなくて、…」


 困って俯くクロエに公爵は近づき、自然な仕草で彼女の顎に触れて顔を上げさせる。

 公爵は無言でクロエの目を見つめた。


「大丈夫そうなら問題ない。 だが、暫くはこの屋敷に居なさい。来月の舞踏会はジョンもクロエも行かせない。」


「え、でも そんな…」


「クロエ・フランドルとして長男を正しい道に導いて欲しい。それが私との約束を破った罰にしよう。すまないが、暫くジョンの面倒を見てやってくれ。」


 ジャック・フランドルが、愛しい人を想うような切ない表情をしていた気がした。

 クロエは自分に触れた公爵の手を頬に移動させた。頬を撫でられているようで、…彼の冷たい手が気持ちよかった。


「わかりました、大丈夫です。私が必ずジョンを次期当主として、相応しい人に導きます。」


 クロエの頬に触れる公爵の冷たい手が温まるのを感じた。

 でも直ぐに彼はクロエから逃げるように離れ、無言で屋敷を出て行った。


(ふぁー、イケおじからの顎クイはヤバかった〜。まだ心臓バクバクだわ。

 でもさ、生娘じゃなくて中身は30の大人女子なんだわ。ちょっとやり返してしまったけど…大丈夫だったかな。)


 美奈子は先程の公爵の行動が気になった。自分からクロエに触れる事は今まで無かった。


「まさか、ジョンの世話してた所を見て嫉妬したとか?」


 口に出してみたが、まさかある訳が無いだろうとこの考えを止めた。

 もしかしたら公爵は、クロエを通して母アリアを思い出しているのだろうか?公爵と母アリアとの関係は一体どんなものなのだろう…。


 ジョン達がいる部屋に戻りながら、これからの事を考える。

 とりあえずは、『死ぬ事を恐れない』を試し、結果は死を回避出来た。この体を張った実験は成功にしておこう。

 後は、この世界は自分の知識と仮説、()()()間違えている気がした。


 クロエはジョンの元に戻り訊ねる。


「ねぇ、ジョン この国の王は誰?」


「お前、教養が無いのか?だいぶ前にウィリアム王は死んで、この国は王は不在だ。今はメラニー王妃が実権を握ってるだろーが。」


「え、そんなに長く王が不在なの?それならメラニー王妃が女王なんじゃ?」


「まあ、女のお前には王家の政治事情なんて理解出来ないよな。 血生臭い話しは省略して、王は自分の子供が成人したら王にすると遺言があった。だから王妃は女王にはなれない。」


「…そうか、だからみんなメラニー王妃の娘、マリー()()と結婚したがるのね」

 

 クロエはジョンの言う血生臭い話しも気になるが、ジョン・フランドルとクロエの兄アンドレア・ガーランドが花婿候補で未来の王になる事を改めて認識した。


 ジョンは沈黙し、何かを思いついたような顔で口を開いた。


「俺はもうマリー王女の花婿候補から降りる。」


「あー、やっぱり。うん、うん、わかるよ。クリスタ好きだもんねー」


「ちげーよ!クリスタなんてどうでもいい。あの女に触られると頭痛がするし気持ち悪くなるからもう近寄りたくない」


 美奈子は驚いた。クリスタを溺愛しているキャラクターの1人が信じられない事を言っている。

 まさか、自分が殴り何らかの力からジョンを目を覚させたのか…。

 確かに気がつけばジョンのキャラ変ぶりは尋常じゃない。

 それなら、レオナルドも一発ぶん殴らないといけない気がした。


「やっぱり拳で…解決ね…」


 思わずクロエの訳のわからない心の声が出てしまう。

 ジョンは無視して話を戻すように、クロエに本題を伝える。


「レオナルドと別れて 俺と結婚しろよクロエ。」


「「はぁ?」」


 クロエと側にいたダンテの声がはもる。


「俺は次の当主だ。北部の統治者になる。お前の兄貴が婿入りしたら南部はお前が統治者となれ。北部と南部の統治者が結ばれたら俺たち最強じゃん。もう王都の連中の操り人形にはなりたくねーんだよ。」


「ジョン、やっぱり打ちどころ悪かった?兄が婿入りした所で私の父がいるのよ。なんで私が南部を統治出来るって言うのよ…」


 美奈子は知っている。自分が読んだ話も、過去のクロエ達の記憶にも、必ずガーランド家はクーデターを起こし、正義のヒーローのようにフランドル家に阻止され、彼らは処刑される。よくある令嬢モノの()()()()()お決まりのパターン。その中にはクロエも居て、どんなに死を回避しても最後は必ず死ぬ運命。

 クロエは背筋が凍るのを感じながらも訊ねた。


「ねえ、ジョンはマリオ・ガーランドがクーデターを起こす事を知っているの?」


「クロエ、やっぱりお前は流石だな。話が早いじゃねーか」


「…じゃあ、私も処刑される運命なの?」


「お前は大丈夫だ。今はクロエ・フランドルだろ?

 俺の親父(おやじ)はお前がアリアの娘だから、助けるためにレオナルドと無理やり結婚させたんだ。花婿候補の数減らしを理由にしてもガーランドは疑わないだろ?」

 

 ジョンのその言葉に涙が出そうになった。ジャック・フランドルはクロエを守ろうとしていた。


 改めてクロエ達の記憶を振りかえる。処刑を回避出来なかったパターンを除けば、公爵は一度もクロエを殺すような事はしていない。彼は常に無関心に見えたが、口数が少ないだけで本当はクロエを想っていた。


「ごめん、ちょっと理解が追いつかない。なんで私が『アリアの娘だから』公爵は助けるの?」


「…あの糞親父は、ずっとアリアを愛していたからだよ。 そのせいで俺たちは、… 」


 ジョンは何かを思い出したように、言葉を詰まらせた。


 美奈子は決闘の時に見た断片的な記憶は全て意味があり、まだピースが足りないがいつかは謎が全て解ける気がした。

 血に染まる手のひらと、「私が王を殺したの」と言う言葉はアリアの記憶…。この言葉を投げかけた相手は、…ジャック・フランドルに間違いない。


 美奈子は決闘時に公爵に突き飛ばされた衝撃からか、忘れていたガーランド家の秘密を思い出す。

 だが今はまだ、フランドル家には言えない…。


 美奈子は少しの間考え、決意する。


「いいわよ、ジョン。私が南部の統治者になったら結婚しましょう。 そのためにはあなたは北部の統治者になるのは前提として、私の父マリオ・ガーランドを殺すのよ。じゃないと、私は南部を手に入れる事が出来ないの。」


「ああ、いいぜ 最高にノリが良いなクロエ。どうせマリオ・ガーランドは自滅するが、お前が望むのなら俺が殺してやる。」


「頼もしいわね、ジョン。私もあなたと同じく力が欲しいの。王都にいる連中から干渉をされない力。利害は一致したわね。」


 ジョンは軽々しくクロエの父を殺すと言うが、そう簡単には行かない。マリオ・ガーランドは既に南部の統治者で国として独立出来る富と戦力を持っていた。最悪は戦争に発展し、多くの命が失われる。その前にクーデターとしてマリオを処刑台に上げないと。ここだけは今までのストーリー通りになるのを願った。

 そして問題はその次で、なんとしても、目の前にいるイカれた男(ジョン)()()()になってもらわないと、美奈子の次なる計画が上手くいかないのだ。



 クロエの提案に思わずダンテは話に割り込む。


「お嬢、何言っているんだよ。こいつはお前の事を何度も殺そうと、」


 クロエは人差し指でダンテの口に触れた。もう、それ以上は話さなくていいと言うように…。


「さあ、ダンテ。ジョンを一階の部屋に運んでちょうだい。私は彼の世話を命じられてるから隣の部屋で寝ることにするわ。」


 ダンテはクロエの命令に渋々従った。

 ジョンを部屋に運び終えると、クロエはダンテとマリを呼びそれぞれに紙を手渡した。


「ダンテもマリも明日からは忙しくなるわよ。あなた達にやって欲しい事があるの、リスト化したから目を通してね。」


「クロエお嬢様、あの…ごめんなさい。私は文字が読めなくて…」 


 マリは悲しそうな顔をした。

 クロエは慌ててフォローをし、わかりやい言葉を選びながらマリにお使いを頼んだ。


 ダンテは横で渡された紙の内容を見て、この女はまた突拍子もない事を企んでいたのかとゾッとした。

 否、それでこそ忠誠を誓った我が主人だ…何処までもついて行きたい……でも、やはり、何度見ても解せない事が記載されている。

 

 震える声でクロエに訊ねた。


「お、お嬢… ここのさ、『女装する』って何?」



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