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【贖罪ノワール1】救世主症候群・事件編  作者: 秋犬
執行編 第2話 代表者会議
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代表者会議

 フォンティーアの到着で、代表者会議は始まろうとしていた。


「代表は全員いるみたいだけど、発起人ライラはまだ来ていないのかしら?」


 場に集まった全員がライラの姿を探していた。その中でシェールは全身を針でつつかれているような気分になっていた。


 まさか本人が後はよろしくと丸投げしていったことを他の代表者は知らない。ライラの欠席を告げなければならないが、それで自分に注目が集まるのが非常に嫌だった。セラスも後ろから「義兄様が言わないと進みませんよ」と小声で圧力をかけ始めたため、意を決してシェールは口を開いた。


「実は……発起人ライラからこの会議を欠席したいという旨をもらっている。会の進行はシャイア殿に任せたいとのことだ」


 念のためにライラに一筆書かせた書状をシェールは掲げた。


「欠席……? 聞いていないぞ」

「こちらも出発直前に言い出したことだ。何でも他に大事な用事があるらしい」


 一人の男が進み出て、シェールからライラの書状を受け取った。


「……確かに、ライラ本人の筆跡だ。時間も無いから、始めさせてもらおう。初めて顔を合わせる者ばかりだろうから、自己紹介からしよう。リィア打倒戦線のシャイア・ミグアだ。エディアで災禍にあって、それからずっとリィアを追っている」


 シャイアは次にこの中で一番年長であると思われる大柄な男性に目で合図をした。


「シャイア殿以外とは初めて顔を合わせるな。ビスキ復興同盟のリク・ティクタだ。元々はビスキの公爵家の復興を目標としていたが、今はダイア・ラコスの体制を倒すことを優先している」


 リクは対面の代表者に自己紹介を促した。


「お初にお目にかかります、オルド解放連合のロドン・エオゾストです。オルドで反リィアを目標に、出来ればリクさんのように王家の復興も目指しています」


 そう言うと、ロドンはじっとシェールに視線を送った。代表者の中でも一番若いシェールは何とか自己紹介の言葉を並べ上げた。


「……反リィア共同体のシェール・オルド・アルフェッカです。クライオで反リィアやってました」


 全員の自己紹介が済んだところで、フォンティーアが話し始めた。


「リィア解放同盟のフォンティーア・クルサよ。今日は皆に会えて嬉しいわ。まずは今日私がここに来れたことのお礼を言わなくちゃね」


 フォンティーアはラコス家の政敵クルサ家の当主ということで、長らくリィア軍から監視対象として軟禁状態にあった。この日のためにフォンティーアは仕立屋で新しい服を作ると言い、監視の上級騎士の目を替え玉で誤魔化して店の裏からここまでやってきていた。そのためあまり長居することも出来ず、この会議にはほぼ顔見せのような形でやってきていた。


「いや、こちらこそフォンティーア殿の勇気ある行動に感謝したい」


 仕立屋はシャイアの手配であり、この連携はリィア側は把握していないようだった。


「それに、ここまで私たちの作戦が無事水面下で行えたのもビスキとオルドの連携のおかげね」


 発起人ライラで繋がった反リィア組織の連携がリィアに気付かれなかった要因のひとつに、それぞれがビスキとオルドで小規模な反乱やわかりやすい反リィア運動を展開していたからだった。更に発起人ライラ本人がクライオに留まっていたり反リィア組織側からも行方を眩ませていたりと複雑な動きを見せたため、この連携をリィア側はなかなか把握しきれていないようだった。


「しかも、わざわざクライオまで反リィアに立ち上がってくれるとは思わなかった」


 一切の連携にあまり携わっていなかったシェールだったが、クライオから反リィア思想を持つ者たちを少しでも引き込めたことと、発起人ライラの隠れ場所になっていたことが一連の反乱の中で大きな役目となっていた。


「義兄様は何もしてませんけどね」

「黙ってろ」


 小声で囁くセラスをよそに、会議は進行していった。


***


 一通り当日の流れを確認したり反乱後の役割などについての話し合いなどをしたりして、会議は午後遅くまで続いた。解散となり、シェールとセラスが立ち上がろうとすると、ロドン・エオゾストが声をかけてきた。


「やあ、君がラクス陛下のご子息か。本当に実在したのだな……しかし、本当にお父上にそっくりだ」


 その名前を聞いて、それまで借りてきた猫のように大人しかったシェールから敵意があふれ出した。


「だから何だって言うんですか? 処刑されそこねた死に損ないだって言うんですか?」


 思いの外棘のある返答に、ロドンは面食らったようだった。


「義兄様、またそうやって喧嘩を売るようなことを……」


 セラスが諫めるが、シェールは自己紹介のときからロドンを敵視していた。


「反リィアなのは勿論そうなんだろうが、どうせお前の目的は俺なんだろう?」

「それは無事にリィアを倒してから、の話だ。まずは仲良くしようじゃないか」


 握手を求めるロドンに、シェールはますます敵意を強くしていた。



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