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1話 心のひび

どうも宏吉です〜

今回の話から結構重くなって行くので注意してください〜

是非最後まで読んでいただけると幸いです!

それでは本編をお楽しみください!

したしたと雨が降り続く。

静かに意識が遠のく中、僕はすべてを失った。

秋頃に病院で1人の男の子が生まれた。

「元気に生まれてきてくれてありがとう…」

母は安心した声でそう呟いた。

「はぁ…はぁ…佳代子!大丈夫か?」

父の尚斗は髪も服もぐちゃぐちゃで、母の居る病室へ走って来た。

「あなた!」

「あ、あぁ!良かった…ごめんな…出産立ち会えなくて…」

父は後悔しているようだった。

「この子の名前どうする?」

「そうだな…いざと言うと迷うものだな…」父は眉間にシワを寄せ考え込んだ。

「渉はどうかしら?」

母は微笑みながら言う。

「どうして渉なんだ?」

父は不思議そうに母に聞いた。

「どんな苦難や壁があっても小さな川を渉ように乗り越えて欲しいという意味を込めたのだけれど、そのまますぎるかしら?」

母はクスクスと笑っていた。

「そんな事はないぞ?とても素敵な名前だ!」

「なら、渉に決まりね!」

そうして渉はすくすく育ち7年が経った。

そして渉は家の近くの小学校に入学することになる。

最初は初めての環境で母は渉のことが少し心配だった。

僕はあまり周りに馴染めず、学校が楽しくなかった。

ある日教室の隅で本を読んでいると1人の穏やかな性格の男の子が喋りかけてくれた。

「ねぇねぇ!なんの本呼んでるの?」

「え…?絵本読んでるんだ…」

「絵本っていいよね〜」

「あ、あの!僕と友達になって欲しい…ダメかな?」

渉は俯いて言った。

「いいよ!俺は楓真!よろしくね!」

「うん!僕は渉!よろしく!」

それからはずっと本についてよく語り合い、よく遊び親友と呼べる友達になった。

それからしばらく経ち小5の冬がやって来る。

「痛いよ!やめて…」

同級生の男の子が僕を殴ったり蹴ったりしてきた。

僕は小4の時クラスのみんなから気持ち悪いと貶されるようになり、小5になってからもずっと虐められるばかりだった。

それでも唯一ずっと友達でいてくれたのは楓真だった。

楓真はいつも虐めから守ってくれた。

「渉を虐めるな!」

「楓真も渉のこと気持ち悪いって思わないのか?」

「小1からの友達だ!気持ち悪いなんて思わない!」

楓真は拳を握りしめ言い放った。

「もう飽きたし行こうぜ〜」

いじめっ子達はそそくさと帰って行った。「楓真は家大変なのになんで…僕なんか助けてくれるの?」

「確かに家も大変だけど、親友だから助けるのが当然だろ?」

楓真はニコッと笑う。

そんな楓真が心配だった。

楓真の父はリストラされ職を失い母は家出してしまい、毎晩酒に酔った父に虐待を受けていた。

「楓真?頬の痣また増えて…本当に大丈夫なの…?心配だよ…」

「え?あ、あぁ…大丈夫だよ…」

何があっても楓真は絶対に泣かない。

そして2日後楓真は学校に来なくなった。「先生…楓真は大丈夫なんですか?」

「楓真君の親御さんに電話をかけてるのだけれど、電話が繋がらないの…それで今日の夕方に楓真君の家に訪問しようと思ってるわ」「分かりました…」

そして次の日楓真の机には花が添えられていた。

僕は花の意味は分からずだったが、察してしまった。

楓真はお父さんの虐待に耐えられなくなって自殺したのだった。

そして楓真の父は近所からの証言で虐待が明らかになり逮捕された。

「なんで、楓真が…?楓真…あの時にもっと早く気づいてあげられてれば…僕のせいだ…僕が悪いんだ…」

それからは楽しい事や悲しい事があっても何も感じなくなり1年が経過した。

虐めていた同級生も引くぐらい影は薄く無口になっていた。

楽しくなくなった学校に行きそして帰って風呂に入って、ご飯を食べて寝るだけの日々ばかりで、生きることに飽きを感じていた。

「……」

僕は無言で階段をギシギシといわせて下る。

「朝食は食べないの〜?」

「ごめん…今日もいらない…」

「そうなの?忘れ物はない?気をつけて行くのよ?行ってらっしゃい〜!」

母の慌ただしい声が家に響く。

「あの子、楓真君の事ずっと立ち直れないでいるのかしら…心配だわ…」

「そんな心配しなくても大丈夫だよ。時間が経てばまた明るくなってくれる。きっと大丈夫」

父は母の肩に手を置きそう言っていた。

今日も何も無い一日が始まる。

「渉君…大丈夫?先生に相談出来ることならなんでも相談してね?」

先生は心配そうな顔をしていた。

「はい…」

僕は小さく呟くように言った。

下校時間になり僕は帰る準備をし、ボロくなったランドセルを背負って下校する。

「……」

「大丈夫…?」

母は今まで聞いた事のないような心配そうな声で聞いたが、気づけば家族の顔も見れなくなっていた。

「大丈夫だよ…」

僕はお風呂に入る準備をし始めた。

「渉の為に何か出来ることは無いかしら…」「佳代子、俺達は渉の前では常に笑顔で居なきゃダメだぞ?俺達まで暗くなってどうする?今日は渉の好きな唐揚げを作ってやろう」

「そうね。私達まで暗くなったら渉に心配かけちゃうものね」

母達はリビングで何か話しているのが聞こえた。

水の滴る音が少し心を落ち着かせる。

「そろそろ上がろうかな…」

僕は風呂から上がり体を拭いて髪をドライヤーで乾かしていた。

「渉〜?今日は渉の好きな唐揚げよ!」「う、うん…ありがとう…。」

「出来上がるまで時間かかるからそれまで少し待っててね〜」

「うん…」

渉はいつまでも同じ返事をするだけだった。

どんなに楽しい事があっても無表情で何処か悲しげな顔で俯いている。

「渉〜?出来たわよ〜!」

いつもの声が聞こえる。

暗くなった階段をゆっくり踏みしめリビングへ向かった。

「いただきます…」

渉は感想も言わずただひたすらに無言で食事をしていた。

父と母は美味しそうに唐揚げを食べてニコニコしていた。

「渉?最近学校はどうなの?」

「学校…?あぁ、学校はた、楽しいよ…」

渉は母に心配をかけまいと下手な嘘をついた。

母はずっと僕に喋りかけてくれる。

「ごめん…僕そろそろ寝るね…ご馳走様。それとおやすみ…」

「おやすみなさい!ゆっくり体休めてね?」「うん…」

僕は自室に戻り布団に横になった。

僕は母のあの笑顔が気になって眠れなかった。

眠れない僕は窓の縁に座って夜空を見上げた。

「なんでこんなに胸が痛いんだろう…今ここで飛び降りればきっと会えるのかな…?それは出来ないな…お母さんはずっと笑顔なのに僕はずっと……楓真…もうどうしたらいいか分からないよ…戻って来てよ…」

今まで心にしまっていた感情が溢れ出し、僕は初めて心の雨を降らした。

泣き疲れた僕は知らないうちに眠りについていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

少年の心はどうなっていってしまうのか。

次の話も見ていただけると幸いです!

2話は3月27日の夜に投稿しますのでしばらく待っていてください!m(_ _)m


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